生産終了、フルモデルチェンジがすでに明らかになっているクルマの扱い
新型へのモデルチェンジが近づいているモデルは、現状として販売されているので「ほったらかし状態」車種の対象とした。
自動車メーカーは明確にはしたがらず、販売(生産)終了というとマーケットの印象は良くないだろうが、マーケットや対象車種のオーナーに対する“礼儀”としての意味はあると思う。
年内で生産・販売終了が報じられているモデルやフルモデルチェンジが近づいている車種を「ほったらかし状態」の順位の評価に含めるかは微妙だった。
生産終了が報じられているのは、トヨタのマークX(2019年12月)とエスティマ(2019年10月)、三菱のパジェロ(2019年8月)、日産キューブ(2019年12月末)。
フルモデルチェンジが近いトヨタカローラフィールダー/アクシオ(2019年9月17日デビュー予定)、ホンダフィット(2019年11月デビュー予定)、日産ジューク(2019年9月3日発表、日本仕様は2020年4月以降デビュー予定)、スズキハスラー(2019年12月デビュー予定)などは選びにくくなった。
ダイハツやスズキといった軽自動車メーカーでは、常に厳しい競争に晒され、新鮮さを保つために継続的なリニューアルの実行を求められることがモデルチェンジのインターバルの短さに表われている。
そのほか、商用車ベースのトヨタのハイエースワゴンとダイハツのアトレーワゴンは長期のライフスパンを前提に作られるので、単純にほかのモデルと同様に評価するわけにはいかなかった。
ほったらかし車TOP10
番外編/ダントツ1位 商用車マツダボンゴバン:20年2ヵ月17日
はじめから申し訳ないが、商用車を対象から除外したとはいえ、デビューから20年2ヵ月17日でダントツの長寿1位となったボンゴは外せないと判断し、番外編の1位とした。この時代にあって登場から20年2カ月も経つのに、ほぼデビュー当時の姿を残しているのが貴重だからだ。
1999年6月17日に登場したマツダボンゴ。衝突安全対応のため車体の前半分のみ新設計したSKプラットフォームを採用した。
現行のボンゴでは乗用登録のワゴンは未設定であるが、自家用車として兼用する中小自営業者の需要にも応えるため、過去には外観や装備を充実させたワゴン風の上級グレード、GLスーパー(ハイルーフ・4ドア)が設定されていた。
残念ながら現行4代目ボンゴは、2020年までに生産終了といわれている。現時点ではマツダから公式に発表されていないが、次期型のボンゴは、インドネシアで生産されているタウンエースのOEMになる可能性が高い。
1位:日産GT-R:11年9ヵ月5日
この“スーパースポーツ”をトップに選んだのは、我々が“過大であること”を承知しつつも、GT-Rに求め続けている期待に応えてくれているかどうかが、どうしても評価のテーマになってしまうからだ。
誕生から12年弱の間に、GT-Rがイヤーモデル(YM)としての変更を明確にしたのは2010年のマイナーチェンジから。
2013年のマイナーチェンジ(2014YM)では、GTレース仕様から得た部品を装備した「ニスモ」仕様も立ち上げた。
その後も、エンジンの性能向上やシャシーの改良、外装などの小変更をYMとして実施、2017YMでは外装を中心にリフレッシュを続けてきた。
ただし、日産が2015YMを“スキップ”したあたりから改良は縮小傾向にあり、どれだけのマーケットへのインパクトや効果を保ち続けているのかは微妙になってきた。
2007年の登場時から進化と熟成を重ねられてきたとはいえ、やはりハイブリッドやEVなどの電動化が進む世界のスポーツカーの趨勢をみると、遅れていると言わざるを得ない状況になってきたのではないか。
このあたりで、新たな時代を見据えた新型GT-Rがスポーツカーとしての新たな地平を見せることで、“技術の日産”の象徴として輝き続けてもらいたい。
2位:フェアレディZ:10年9ヵ月
GT-Rに約1年続くかたちで2位に挙げた、11年弱も手つかずのままのZ34型フェアレディZは、2012年7月以降マイナーチェンジが実施されていない。
最近では「50周年記念車」を期間限定で発売したが、基本的に標準仕様に専用のボディカラーやシート表皮などを加えたぐらいで、仕立てに手間をかけている印象は薄い。
まずは区切りの年として、噂されている2019年10月の東京モーターショーでのコンセプトカーの発表が実現するどうかを見極めたいところだ。
3位:日産マーチ:9年2ヵ月12日
マーチはタイで生産されている世界戦略車として2010年7月にデビューしたが、2013年6月のNISMO追加を含むマイナーチェンジ以降、一度もマイナーチェンジが行われていない。
先代が登場した2002年には月平均で1万台超を販売していたが、現在は月販1000台を割る月も珍しくなく、ユーザー離れが進んでいる。何も対策をしないまま、放置しているという印象が強い。
欧州ではマイクラという、日本のマーチとは別のモデルが販売されており、この欧州製マーチを日本市場でマーチとして販売する手も考えられるのだが……。
4位:三菱ミラージュ:7年1ヵ月
ミラージュは2012年8月にタイ工場で生産され日本市場で復活した。2015年12月のマイナーチェンジで、ボンネットフードにボリュームを持たせ、アッパーグリルとロワーグリルにクロームメッキ加飾を施し、フロントバンパーは下部にエアダム形状を配したフロントフェイスに刷新したが、これ以外の目立った改良は行われておらず、ほったらかし状態といっていい。
日本市場での存在感の薄さに関してあえて極論すれば、東南アジアで生産・輸出されること自体に問題があるのではなく、日本の市場で細部の創意工夫が豊かな軽自動車に対して、「これで充分」という(コストなどの)の割り切りが見え隠れる仕立ての小型車に、顧客が目を向けるのかということだ。
5位:トヨタプレミオ/アリオン:12年3ヵ月3日
5ナンバーセダンは日常の足として一定のニーズはあるのだろうが、2007年6月のフルモデルチェンジから行われたマイナーチェンジは2010年4月、2016年6月のフロントグリルの大型化などの実施にとどまっている。
安全装備の充実などは実用的な改良はきっちり実施されているが、年配者の日常の足“以上”の価値観を加えることは可能だろう。
高齢になるとスタイリングに斬新さを求めないなんてことはなく、手頃な価格をキープしつつ、個性溢れるデザインを施すことはトヨタなら実行できるはずだ。
6位:日産フーガ:9年10ヵ月18日
日産が後輪駆動モデルに使い続けている“FR-Lプラットフォーム”は、これまでエンジン搭載位置の変更などを受けているとはいえ、新世代のプラットフォームが待たれる。
フーガは2015年2月のマイナーチェンジでインフィニティ「Q70」のグリル、ガーニッシュを与えて、イメージを高める努力をされてはいるものの、根本的に“旧い”イメージを払拭するには無理がある。
どれだけ社用車などの需要があるのか想像できないが、それこそフーガとシーマが「ほったらかし状態」に思われるぐらいなら、いっそ「車種統一」したほうが賢明のように思える。
第7位:日産ティアナ:5年7ヵ月4日
2014年2月にモデルチェンジした現行ティアナは、世界第2位の市場である中国をメインターゲットとするような気配があり、日本市場ではフルモデルチェンジから6年未満であっても、もはや存在感は薄い(ハイブリッド仕様の導入は見送られたようだ)。
外観などで細部の変化があったにしても、個性を強調すべきセダンとしてのフォルムが凡庸に映るようになっては活路を見出すことはできない。
車両の格(大きさ)が重要な中国では問題ないかもしれないが、日産には日本市場でのミドルクラスセダンを盛り上げるような気概をもってほしい。
8位:日産エルグランド:9年1ヵ月3日
アルファード/ヴェルファイアに対してもはやお手上げの状態なのだろうか。それにしても9年以上もフルモデルチェンジしないというのは日産のやる気のなさが表われているのではないか。
ミニバンの凋落傾向は続いているとはいえ、すべてのモデルが落ち込んでいるわけではない。
オーテック仕様車やマイナーチェンジによる内外装の見た目の変化だけで実質的な改良が見当たらなければ、顧客が簡単に触手を伸ばすことはないはず。
アルファード/ヴェルファイアの商品力で敵わない状況のなかで、日産が“電動化”(e-POWER)など、際だった改良の一手を打つ姿勢をみせなければ、いずれフェイドアウトの憂き目に遭うのは必然だろう。
9位:レクサスCT:8年8ヵ月11日
高級コンパクトカーが「日本市場」で成立するのかという問いかけに、レクサスブランドとしてハイブリッドで挑戦したCTだが、成績は芳しくない。
2011年1月12日に発売した後、2014年1月のマイナーチェンジでスピンドルグリルを変更、2017年の8月のマイナーチェンジでフェイスリフトを含む大掛かりなマイナーチェンジが施されたとはいえ、8年8カ月もフルモデルチェンジから遠ざかっている。
なにより377万から477万円という価格の設定は、なかなかマーケット全体として受け入れられにくいようだ。VWゴルフやマツダ3など世界の欧州Cセグメント車と比べると、 レクサスでのプレミアムコンパクトカーとしての立場は脆弱といえる。
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