こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】「クルマ社会の次の100年」の扉を開いた小さな先駆車三菱i-MiEV

■航続距離は自宅付近の移動を想定した160km

 外観はiと変わらず、曲線を多用した斬新なデザインを踏襲。もともと未来的で上質なスタイルだっただけに、先進的なEVであることを表現するにはうってつけだった。軽自動車としてはもちろん、三菱としても初めて採用したLEDヘッドライト、リヤコンビランプもLEDとしたこともi-MiEVの先進性をアピールする要素だ。

 車内は基本的な造形はiと同様だが、メーターは電力消費およびエネルギー回生の状況を視覚的に表示するパワーメーターと、駆動用バッテリーの残量を表示する駆動用バッテリー残量計、直近の平均電力消費量からおおよその残り航続可能距離を算出して表示する航続可能距離表示を設けるなど、EVならではの機能が付加された。

 EVはエコの象徴でもあることから、内装材にはグリーンプラスチックが用いられていた。竹繊維とPBS(ポリブチレンサクシネート)を組み合わせた内装材をテールゲート内側のトリムに使用することで、従来のPP(ポリプロピレン)製と比べて、原料採取から廃棄でのCO2排出量を約10%削減したという。

 EVならではの静粛性がもたらす快適性は、当時の軽自動車クラスにおいてはトップレベル。そのうえ応答性に優れ、低速領域から高いトルクを発生する電気モーターの特性を生かし、ドライバーの操作に対する反応のよさと力強い加速フィールは、iのターボエンジン搭載車を上まわる能力を実現した。

 爽快な走りが味わえるだけでなく、エネルギーを効率よく使うこともEVにとっては重要な要素である。そこでi-MiEVは、EVコンポーネント情報を集約して高度に統合制御するMiEV OS(MiEV Operating System)が搭載された。

 バッテリー状態の常時モニタリングや回生ブレーキ機能によるエネルギー回収、滑らかで力強い発進制御などを行うことで、省エネルギーを実現しながら快適で安全・安心な走りを可能にしていた。また、高電圧システムはボディ骨格の内側に搭載するとともに、駆動用バッテリーを井桁フレームによって保護することで、全方位からの衝突によるダメージに備えるなど、万が一の備えも万全だった。

メーターには電力消費およびエネルギー回生の状況を視覚的に表示するパワーメーターや、駆動用バッテリーの残量を表示する駆動用バッテリー残量計、直近の平均電力消費量からおおよその残り航続可能距離を算出して表示する航続可能距離表示を設定
メーターには電力消費およびエネルギー回生の状況を視覚的に表示するパワーメーターや、駆動用バッテリーの残量を表示する駆動用バッテリー残量計、直近の平均電力消費量からおおよその残り航続可能距離を算出して表示する航続可能距離表示を設定

 一充電走行距離は160km(10・15モード)とし、自宅周辺などの近距離移動に対応できるが、ガソリンエンジンを搭載する軽自動車に比べればかなり短い。駆動用バッテリーを搭載するには軽自動車の小さなボディでは限界があったことは否めない。

 しかし、一般的なユーザーが走る1日の平均走行距離が、平日では約90%のユーザーが40km未満、休日では約80%のユーザーが60km未満という三菱が独自に行ったアンケート調査の結果もあって、三菱としては、160kmという距離をネガティブな要素とは考えていなかったようだ。

 2022年に登場したeKクロスEVが、WLTCモードとはいえ180kmの航続距離としていながら、多くのユーザーから支持を得られたことを鑑みると、160kmでも日常使いには大きな問題ではなかったと言えるだろう。

 とはいえ、実際にドライブしてみると、気象状況や渋滞、急発進したりエアコンを使っていたりするとカタログに記載された能力は発揮されず、しかも走行中に電池残量がみるみる減っていく様子は、EVに慣れていないドライバーに不安を与えたものだ。

 充電システムは、自宅はもちろん外出先でも充電できる3WAY方式を採用。急速充電にも対応していたが、当時は急速充電器の数が少なく、200Vの普通充電なんて現在のように充実していなかったこともドライバーの不安要素だった。

 ちなみに現在は、高速道度のPA/SAにはもれなく充電施設があり、一般道でも自動車ディーラーやショッピングモール、コンビニにも充電施設が設けられており、その数は全国で2万拠点を超え、ガソリンスタンドに肩を並べている。

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