人気車もビッグマイチェンの時代
そこでクローズアップされるのがマイナーチェンジだ。モデルチェンジサイクルが長くなっても魅力を保つために、以前にも増してマイナーチェンジの重要性が上がっている。
今も昔もマイチェンはクルマをリフレッシュさせる重要な『儀式』であることには変わりないが、最近ではビッグマイチェンと呼ばれる大幅変更も頻発している。
デザインがガラリと変わるだけでなく、ハイブリッドの追加、新エンジンの搭載&追加、派生モデルの登場といったことも当たり前になってきている。
かつてエクステリアデザインなどを大幅に変更するビッグマイナーチェンジというのは、デビュー時に失敗したクルマのテコ入れとして、イメージ刷新を狙ったケースが多かったが、現在は安定した人気をもつモデルにも展開されている。
最近では三菱がデリカD:5、RVRのマイナーチェンジでダイナミックシールドを採用し、新型車かと思えるような激変ぶりを見せているし、人気ミニバンの日産セレナもお色直しというには大胆なフロントマスクに変更された。
昔は売れているクルマのデザインは変えない、が定説だったのとは決定的に違う。
マツダ、スバルのクルマ作りに近づいた!?
4年に1回のモデルチェンジの先鞭を切ったのはトヨタで、日産を筆頭にそのほかのメーカーが追従するかたちとなったわけだが、古くからマイチェンを重視しているメーカーと言えばマツダとスバルの両メーカーだ。
マツダはかつての量販車種ファミリアなどは4年に1回というサイクルをとりながらも、RX-7などのスポーツカーについては数度のマイチェンや追加モデルにより長いサイクルで作ってきた。
現在はマイチェンに限らずクルマを改良することに注力し、年次改良というかたちで毎年何らかの改良を施している。一時日本車もイヤーモデル制を導入しようとしたが、イマイチ定着していなかったがマツダは徹底している。
スバルはほかのメーカーが頻繁にモデルチェンジを繰り返していた頃も、モデルチェンジサイクルが長い傾向にあり、1台のクルマを長いスパンでシックリと熟成するというイメージが定着している。
マツダ、スバルに共通するのは、車種ラインナップ数が少ないこと。ラインナップを増やしたくても増やせない事情はあるが、そのぶん開発原資を注力しマイチェンをはじめとする改良に力を入れてクルマを進化させ商品価値を高めている。
元々のアプローチは違うが、日本の自動車メーカーのクルマ作りが、軽自動車を除き、マツダ、スバルが実践してきたマイチェンでクルマを熟成させるというクルマ作りに近づいているといっても過言ではない。
変わったのは日本メーカーだけではない
実はこのマイナーチェンジを重視したクルマ作りは日本メーカーだけでなく、21世紀になってからのメルセデスベンツが得意とするところでもある。
メルセデスベンツはかつてから考えられないほどの膨大なラインナップを誇っているが、昔からの主力であるCクラス、Eクラスについては、マイナーチェンジでモデルチェンジに近いレベルの改良を施している。
デザインだけでなく、機能パーツなども数千点に及ぶ改良を施すことで、マイチェン前とマイチェン後ではまったく違うクルマとなっている。しかもメルセデスの場合、次期モデルに搭載する予定のエンジンをマイチェンモデルに搭載することも珍しくない。
この傾向はBMW、アウディも同じで、ビッグマイチェンは世界的なトレンドにもなっている。
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マイチェンや改良を重視したクルマ作りは、クルマが頻繁に刷新される、熟成が進むという点はユーザーにとってメリットであると言える。1980年代と違ってすぐに旧型とならないのもメリットだ。
いっぽう、すでに購入している既存のユーザーにとっては、同じクルマなのに方や刷新されるというつらい現実もある。クルマがパソコンなどと同じようになっただけ、という意見もあるが、割り切るにはクルマは高すぎる。
さらに頻繁に改良しているとユーザーはいつ買っていいのかわからなくなるのはデメリットだろう。
ユーザーのクルマの買い方が変わったと述べたが、「すぐ改良モデルが登場するだろう」、ユーザーの買い控えに拍車をかけることにもなっているように、新車効果が短くなっている、のもメーカー自身にも責任の一端はある。
フルモデルチェンジサイクルの長期化は、メリットもデメリットもあるが、ユーザーのメリットよりもメーカーのメリットのほうが大きいように思う。
だからメーカーが自らの首を絞めることにもなりかねない危険性もある。
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