新井大輝選手とヘイキ選手の一騎打ちの結末は?  メカニックたちの成長にも涙した久万高原ラリーの痺れる1日

新井大輝選手とヘイキ選手の一騎打ちの結末は?  メカニックたちの成長にも涙した久万高原ラリーの痺れる1日

 山の天気に翻弄された久万高原。賭けに勝ったSS5で雄叫びかと思いきた、仕掛けられたSS6で奈落寸前。壊れたマシンを短時間で蘇らせた仲間、しかし、6秒届かぬ2位。けれど、その悔しさが最終決戦の燃料だ!!

文・写真:新井大輝

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アドレナリン全開で2日目も目が離せない展開が続く

1日目にヘイキ・コバライネン選手とバチバチに競い合った新井大輝選手
1日目にヘイキ・コバライネン選手とバチバチに競い合った新井大輝選手

 一進一退のバトルが1日目で繰り広げられ、肉体的にも精神的にも路面と天候に振り回された影響で疲れがピークに達していました。ですが久しぶりにアドレナリンが出ているので2日目の方が元気いっぱいでした。眠さのピークを過ぎると冴え渡ってしまう状況によく似ているのかな。

 2日目の日曜も天候と路面コンディションに大きく影響されることがわかっていたので、1日目が終わってから夜通し天気予報の雨雲レーダーと睨めっこ、予報が会社によって全く違ったりするので最後はほぼ諦めていました(笑)。

 あまり気を張り過ぎていても疲れてしまうので、もう当日の天気を見て楽観的に行こうと心に決めました。

 結果的には土曜日の夜から朝にかけて雨が局所的に降っているエリアがあったり、なかったりと山の天気は何もアテにならないので当日のサービス付近の路面を見て判断しました。

 またしてもヘイキ選手とタイヤ選択が分かれる結果に。ヘイキ選手は昨日の感触からドライを選択、私は昨日より雨が多く降っていた“気がした”のでウェットを選択しました。

 2日目も完全にタイヤ選択のギャンブルとなってしまいましたが、こういった戦略性に富んだラリーも楽しいですよね。同じコンディションでリードをコントロールしながら優勝するよりは、常にお互いアタックして雌雄を決する方が個人的に好きです。バトルのキリキリする感じが最高です。(変態)

 この日は私のギャンブルがあたり、SS5は8秒差をつける渾身のベスト、一気にヘイキ選手を抜き総合首位に躍り出ます。ここまではタイヤ戦略も含めて全てが順調にいっていました。続くSS6でとんでもないトラップを仕掛けられているとも知らずに。

SS6で痛恨のコースオフ、マシンにダメージを負う大ピンチ

滑りやすくなった路面に足を取られコースオフ。マシンにもダメージ
滑りやすくなった路面に足を取られコースオフ。マシンにもダメージ

 運命を分けたSS6は土曜日に横転していた車両がオイルを撒き、加えてそこに大量の石灰が撒かれて一層滑りやすくなった路面で見事にコースオフ。復帰に10秒以上費やしここで一気に2番手に後退してしまいます。完全い想定外でした。

 スタート直前にスタッフから「石灰を撒いてあるところはオイルの処理した後なので大丈夫ですが、気をつけてください」と言われ、最大限注意して走行していたのですが、その石灰コーナーがブラインドということもあり、石灰を目視で確認してからブレーキを踏みはじめたのですが、すでに遅かったです。

 幸い山側のコーナーだったので、ステージに復帰できましたが、そのコーナーが谷側だったら四国の深い深い谷底にそのまま落ちてTHE ENDでした。これに関しては運が良かった。

メカニックの成長を感じた30分のサービス時間

30分しかないサービス時間ながらメカニックたちは懸命に作業を行いショコダ丸は復活を遂げた
30分しかないサービス時間ながらメカニックたちは懸命に作業を行いショコダ丸は復活を遂げた

 案の定、後続のマシンはそのまま同じところでクラッシュしていたので、一歩間違えれば私が餌食になっていたと考えると恐ろしいステージでした。プライベーターで戦っていると、こういう些細なダメージでも予算的にかなり厳しいので最大限避けたいところではあります。

 ダメージはフロントバンパー(25万)+アンダーガート(15万)+ブレーキのクーリングダクト(3万)+送料という手痛い出費、じゃない、マシンダメージ。

 同時に今までチームとしてクラッシュの修理経験をメカニックにつませていなかった(ぶつかってない)ので、30分のサービスで直しきれるかという不安が急に襲ってきました。基本的なメカニックの動きやメンテナンスは問題ないのは分かっていました。

 しかし今回のダメージリペアは初めての経験になるので時間内にしっかり修理が終わるか。最後の最後まで自信が持てませんでした。

 ところが、私の考えていたことは杞憂に終わり、矢作産業のメカニックたちは私が想定していたよりも、カムイの後からたくましく育っていました。

 30分あるサービス時間でも余裕を持って10分残しで修理を終わらせてくれたので、今回一番嬉しかったのは図らずしもメカニック達の成長を実感したことでした。

次ページは : 結果以上に大きな収穫があった久万高原ラリー

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