ついにF1“解禁”、2020年開幕戦がオーストリアで開催された。バーチャルではなく現実のF1サウンドがアルプスの山々に響き渡る様子は、F1ファンにとって胸躍る瞬間だ。
F1開幕戦オーストリアグランプリは、2020年7月5日に決勝を迎え、ようやくスタートを切った。ホンダは今季もレッドブルとアルファタウリの2チーム、4台にパワーユニットを供給。レッドブルにとってはホームレースでもあり優勝への期待も高まっていた。
しかし、レッドブル・ホンダのエース、マックス・フェルスタッペンは、2位でスタートしながら、レース序盤にリタイア(マシントラブル)。チームメートのアレクサンダー・アルボンは波乱の展開でレース終盤、優勝も視野に入れ、王者ルイス・ハミルトンを追ったが接触、13位完走扱いでレースを終えた。
異例のF1シーズンは、2週連続で早くも今週末7月12日に第2戦の決勝を迎える。果たしてホンダF1は飛躍できるのか? 開幕戦で見えた期待と課題を、津川哲夫氏が解説する。
文:津川哲夫
写真:Getty Images / Red Bull Content Pool、HONDA
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ホンダが開幕戦に投入したパワーユニットの実力と意味
開幕戦の舞台レッドブルリンクでは、その名の通りレッドブルのマックス・フェルスタッペンが、2018年そして2019年と連勝、実に相性の良いサーキットだ。
昨年はホンダパワーユニット(PU)搭載初年度での見事な力勝ち、これはホンダF1にとっても13年ぶり、ホンダF1プログラムが現行のフェーズに入ってのまさに初優勝。
レッドブルリンクは海抜700mを超える高所。通常よりも希薄な空気は、エンジンマネージメントとエアロに大きな影響を及ぼす。
さらに昨年は気温が異様に上昇。これはあらゆる冷却を苦しくさせ、最強のライバル・メルセデスAMGは、オーバーヒートのトラブルを抱えていた。しかし、冷却を含めエアロ(=空力)巧者のレッドブルとホンダの絶妙なコラボは、この難題を征し優勝を決めた。
メルセデスは、これを教訓に開発を進め信頼性の向上を狙い、この開幕レースにはさらにステップアップした開発PUを搭載。もちろん、信頼性ばかりでなくパフォーマンスの向上も加えて。
ホンダも同じくステップアップしたPUを投入。しかし本来ならフランスグランプリ(GP)辺りでの搭載予定であったハイスペック型ではなく、信頼性向上と予定よりは若干低めのパフォーマンス向上での“中間的ステップアップPU”を搭載した。
「パフォーマンスも上がってはいるが信頼性重視」
ホンダの田辺TD(テクニカルディレクター)も「パフォーマンスも上がってはいるが信頼性重視」とこの開発PUを語る。
これもレッドブルリンクでの確実なリザルト……もちろん優勝……を狙っての判断だったはずだ。
今シーズン型マシンの「RB16」は、昨年のRB15に比べてホンダPUに特化した開発がなされ、昨年からより向上したホンダPUとともにエアロ、メカニカルでも走行性能の向上が徹底されている。これらの向上は昨年の神経質さを緩め、小気味よいフットワークを得た。
残念ながらプラクティス(練習走行)ではセッティングが決まらず、僅かとは言えまだ若干の神経質さが顔を覗かせていたが、この裏にはホンダPUのパフォーマンスアップが、田辺TDの語る控え目な向上ではなく、現実にはしっかりとしたパフォーマンスアップを果たしているからのように思える。
実際、ホンダ搭載ドライバーの4人全員がホンダPUのパフォーマンス向上に満足感を見せている。
このオーストリアの開幕戦は、PUもエアロもアップデート版を持ち込むも、実走行テストのないぶっつけ本番、コースや気候へのマッチングは極めて難しい。
それでもフェルスタッペンは、予選で2台のメルセデスの背後に並ぶポジション、充分な戦闘力を証明。特にノックアウト方式の予選2回目「Q2」を、唯一ミディアムタイヤで通過している。
これは他のトップチームが皆ソフトタイヤを選択したなかでのこと、レッドブル・ホンダとフェルスタッペンの潜在能力の高さを垣間見た予選であった。
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