世界3大レースのひとつ「インディ500」の開催は、いよいよ目前! 今週末の5月19日に予選が始まり、27日に決勝を迎える。この伝統あるレースで昨年、佐藤琢磨は日本人初優勝を成し遂げた。101回の歴史を誇るインディ500で、連覇を達成した例はごく僅か。日本人としてだけではなく、世界のモータースポーツ史においても偉業となるインディ500連覇に、“ディフェンディング・チャンピオン”として佐藤琢磨が挑む!
文:天野雅彦/写真:Indy car
過去に5人だけ! インディ500連覇の難しさ
今年が102回目の開催となるインディアナポリス500マイルレース。世界一の歴史を誇る自動車レースで2年連続優勝した者は5人しかおらず、3連覇は未だ達成されていない。
全長2.5マイル(=約4km)のコースは、4本のストレートと4つの左コーナーで構成され、マシンの限界に近いスピードで走り続けることが可能で、コーナーにはバンクがつけられているために大きく減速することもない。
近年のインディカーなら1周の平均速度が時速220マイル=約350km/hにもなる。常にマシンが限界近くに保たれる状況では、路面や気候が走りに大きな影響を及ぼす。
タイヤのラバーがより多く擦り付けらればグリップが高まってコーナリング速度が上がり、路面温度が上昇すると逆に路面は滑り易くなってマシンのコーナリング性能は下がる。
気温が上がると空気の密度が下がり、マシンが作り出すダウンフォース(マシンを路面に押し付ける力)が、減るためにコーナリングは難しくなる。高速での走行は吹く風の強さ、風の向きにも影響される。
これらの変化が刻々と起こるバトルを戦い抜くには、優れたマシンコントロールのテクニックだけでなく、高度な知識や経験の豊富さが必要になる。
そして、最後に、年に1回のビッグイベントで勝利に近づいたと感じた時にドライバーとチームスタッフにのしかかる巨大なプレッシャーがある。
6回以上行なわれるピットストップでクルーが冒す小さなミスで勝利がふいになることもある。
2連覇の偉業となればプレッシャーは更に大きくなる。500マイルの長丁場の戦いだから、ミスを冒しても挽回のチャンスが巡って来ることはある。
しかし多くの場合、勝利の女神が微笑むのは、すべてを完璧にこなしたチームに対してだ。
佐藤琢磨が語るインディ500の舞台
レースの世界を目指した者なら一度は勝ちたいと考えるインディ500は、1回勝つことだけでも非常に難しい。
それを昨年、日本人ドライバーとして初めて達成したのが佐藤琢磨だ。2001、2002年のエリオ・カストロネベス以来となる6人目の連覇を今年の彼は目指す。
2連覇の可能性は決して小さくない。ロードコースで腕を磨いてF1まで駆け上がった琢磨だが、アメリカ特有のオーバルコースにも素早く順応。
9年前のデビュー時からインディアナポリスの高速オーバルコースでの走りには眼を見張るものがあった。
「オーバルの範疇だけれど楕円形ではなく、左に曲がる高速コーナーが4つあるコースようなもの。サイドバイサイドでコーナリングを続けるのではなく、オーバーテイクはロードコースのように行なう」と彼はインディアナポリスモータースピードウェイを捉えている。
3回目の出場だった2012年には最終ラップにトップを走るダリオ・フランキッティにアタック。
ターン1でコーナリングラインを封じられてスピンに陥ったが、その後の4シーズンに所属した小さなチームでもインディ500でコンスタントに上位を走り、2017年、アンドレッティ・オートスポートというビッグチームに抜擢されるや初年度にしてインディ500制覇をやってのけた。
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