マシンがよくなりハミルトンが台頭し、ラッセルはプレッシャーを感じている
今回のラッセルは若さゆえの荒さによるネガティブと、ベテラン的狡猾さというポジティブな両面が目立っていた。ラッセルは若手ではあるが既に4シーズン目の経験を持つ中堅、その才能は昨年までのウィリアムズ時代に十分に発揮されてきた。今シーズンからメルセデス・ワークスに移籍すると、走らないW13ながら開幕戦からポイントを取り続け、予選でも絶対的エースのハミルトンをアウトクオリファイする程の活躍だった。しかし、マシンが改善してくると徐々にハミルトンに遅れるようになっている。
それでも安定して成績は良く、今回もレッドブルのペレスとの素晴らしいバトルを展開。このバトル中ペレスを追い上げミストラルシケインで仕掛けたが、アウト側のペレスに閉められ接触寸前、ペレスはそのままインカットしてラッセルの前でコース復帰。ラッセルはこれに怒り、無線で大仰にアピールも、これはレーシングアクシデント的なインカット。それを造り出したのはラッセルと判断され、双方おとがめなし。しかしラッセルはその不平を無線で繰り返し、ついにはボスのトト・ウルフから「運転に集中しろっ!」と怒られてしまった。
ハミルトンといえばスタートダッシュでペレスをかわして3番手をキープ、ルクレールのクラッシュで順位を上げ、ドラマを作らず粛々とレースをこなし、全くミスの無い2位表彰台だった。それも暑い気候の中でドリンクボトルが働かず、ノードリンクでの完走2位はまさに王者の貫録。できる範囲の最大限を絞り出す、戦い方を心得た、目立たずも、見事なレースクラフトだ。ライバルに遅れをとっているメルセデスのマシンながらその最高値を引き出す技量と精神力はまさに王者の風格なのかもしれない。このチャンピオンの圧力はポイントで前をゆくラッセルにはかなりのプレッシャーになっているはず。ラッセルのメンタルが今シーズンどこまでこの圧力に耐え、立ち向かってゆくか、まだまだ楽しみは続きそうだ。
【画像ギャラリー】予選で好調だった角田裕毅もまさかのリタイア。もう少し順位を上げられたはずのサインツも残念だった。(5枚)画像ギャラリー津川哲夫
1949年生まれ、東京都出身。1976年に日本初開催となった富士スピードウェイでのF1を観戦。そして、F1メカニックを志し、単身渡英。
1978年にはサーティスのメカニックとなり、以後数々のチームを渡り歩いた。ベネトン在籍時代の1990年をもってF1メカニックを引退。日本人F1メカニックのパイオニアとして道を切り開いた。
F1メカニック引退後は、F1ジャーナリストに転身。各種メディアを通じてF1の魅力を発信している。ブログ「哲じいの車輪くらぶ」、 YouTubeチャンネル「津川哲夫のF1グランプリボーイズ」などがある。
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