いよいよ26年以降の新PU規則の概要が承認された。これで次世代F1が本格的に始動する。一般的には“まだ3年もある”と考えがちだが、新しい規則にのっとって、ライバル達を蹴落とす高性能PUを開発するのに3年は十分な時間とはいえない。現実には26年以降もF1へPU供給を考えているマニファクチャーは、既に開発プロジェクトの基本はスタートしているはずで、今回FIAの評議会での承認を受け、開発計画の本格的始動にGOサインがでたはずだ。さて、そのPUの新レギュレーションの中身とはどういうものなのか、元F1メカの津川哲夫氏が解説する。
文/津川哲夫
写真/Redbull,Mercedes,Ferrari
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新PUのレギュレーションを解説していこう
新レギュレーションでは、2014年から全PUマニファクチャーが苦しみ抜いて開発してきたMGU-Hといわれるターボを使ったエナジー回生システムの廃棄が決まった。これは4大メーカーが8年がかりでやっと完成域に入ったMGU-Hを新規参入メーカーが新たに開発するには、時間もコストもかかり過ぎるため。また、PU開発のコスト制限もあるので、これでは新参が限りなく不利になってしまう。さらにMGU-Hは一般車への利用価値が少なく、膨大な開発コストを技術利用での利益に還元できない……等々が理由で、いわば新参チームを誘うための規則変更に近い。
26年以降の新規則では燃料を完全に石油燃料から脱皮させ、食品廃棄物等を利用した人工燃料が義務付けられる。いわゆるバイオ・フューエルによって燃焼によるCO2排出を限りなく削減し、カーボンニュートラルを実現するのだ。これに伴いPUのICE(内燃機関エンジン)の下半分、つまりシリンダーブロック以下は今まで以上に厳しく規制するが、逆にシリンダーヘッド、動弁関係などの開発には自由度を広げている。もちろん新バイオ燃料対策を進めるためだ。
それでも多くのパーツ類がFIAの規定品へと移行され、開発の自由度は大きく削られている。
またMHU-Hの廃棄と、バイオ燃料の使用でパフォーマンスの低下を招いてしまうため、F1のパフォーマンスの低下は免れないし、これではF1のステイタスを維持するのは難しい。そこで低下分のパフォーマンスをMGU-Kの出力を大幅にアップさせて補うというのだ。これまでの毎周120kw(約163馬力)から実に毎周350kw(約470馬力)とした。そしてV6気筒ターボエンジンは400kw(約536馬力)ぐらいを想定しているという。つまりバイオ燃料とエクゾースト等、多くのパーツ規制で現行のターボエンジンから300馬力近いパフォーマンスを取り上げるわけだ。それでもMGU-Kの出力増加で総合パフォーマンスが現行マシンと同等になるよう想定している。
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