学生時代も社会人になってからも、夏休み明け(お盆の連休明け)はブルーな気持ちになるものだ。休みが明ければ、厳しい現実が待っている、学校でも仕事でも。F1も例外ではない。夏休み明けのベルギーGPからオランダそしてイタリアのモンツァと休み無しの3連戦、この厳しい3連戦は魔のロード呼ばれている。その魔のロードとはどういうものなのか、元F1メカニックの津川哲夫氏が解説する。
文/津川哲夫
写真/Redbull,Mercedes,Ferrari
3週連続でグランプリレーシングをこなしてゆく過酷な連戦とは
連戦の中で、唯一ラッキーな事はこの3レース3国はヨーロッパ内でも近接したサーキットであるということだ。特にスパとザンドボールトはクルマでわずかな時間で移動が可能だし、ミラノ近郊にあるモンツァも元気ならクルマを使って1日でたどり着く。言ってみれば一時代前のF1サーカス式のロジスティックというわけだ。昔と違うのはレースとレースの間が1週間しかないことで、これはチームにとって結構なチャレンジになる。
ベルギーのレースを終え、レース後のパルクフェルメが終了すればマシンはピットガレージに運ばれ、ここでレース後のセットアップ・チェックが行われ、レース終了時のマシンセッティングが確認される。その後に次回のオランダ用に修理・メンテナンス・交換パーツ等、用意されているパーツを可能な限りのアッセンブリーが行われる。これをその日のうちにトランスポーターに乗せて、その日のうちにサーキットを後にする。この出発時間によっては近くの宿に泊まり、翌月曜日の朝からザンドボールトに向かう。オランダ国境までは1時間、ザンドボールトは国境から2〜3時間で到着。
この2レース、メカニック等の現場スタッフもクルマで移動する。ベルギーで調達したレンタカー等をそのままオランダまで運転してゆくのだ。この移動日が基本的にレース後のお休み日。火曜日にはザンドボールトのピットガレージでオランダ仕様のマシンへと仕上げて行く。水曜日中にほとんどの仕事は済んでいるはずだが、プログラムによっては日曜日のスパのレース後、エンジニアなどが自国のファクトリーに修理の必要なパーツやモディファイの必要なパーツ等を持って帰り、ザンドボールト用の新たなパーツ等をもって、水曜日には現地に到着する。ここでそのパーツ類の装着と最終的なセッティング等でオランダGPレース・ウィークへの準備が済まされるのだ。
もちろん遅れて木曜日にもつれ込むこともよくある。実際ベルギーでもオランダでも木曜日の夜に残業をしてしまい、――年間の残業回数が規定されているのだが、この持ち札を使ってしまったチームも複数あった。
特に前レースでクラッシュ等をしてしまったチームにこれらのカーフュー(残業時間規定違反)を使ってしまうチームが多いのは当然だが、慌てて造った新開発パーツなどの到着が遅れ、その装着とセッティングに手間取ってのカーフューなども多々あることだ。
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