ラリージャパンの激闘を終えた翌日の2024年11月25日、大手新聞の朝刊にトヨタの全面広告が掲載された。それは前日まで激闘を繰り広げたライバルへの「贈る言葉」。モリゾウさんの感謝の言葉に込められた深い意味を紐解いてみよう。
※本稿は2024年12月のものです
文:ベストカー編集部/写真:TOYOTA GAZOO Racing、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2025年1月26日号
激闘の翌日……モリゾウさんからのメッセージ

その全面広告はヒョンデのチョン会長とモリゾウさん、そしてヒョンデとトヨタのチーム関係者が一緒に写る写真にモリゾウさんの感謝の言葉が綴られていた。
ラグビーにはノーサイドという言葉があるが、まさにお互いの健闘をたたえ合い、敵味方がなくなったことを示唆しているようだ。
振り返るとチョン会長は、2024年10月27日に韓国で開催された『Hyundai N x TOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL』において、
「より多くの方々がドライビングの愉しさを味わえるよう、トヨタと共にモータースポーツでも前進し続けます。今年初めに豊田章男会長とお会いした際、私たちはモータースポーツに対する共通の情熱を見出し、その結果としてこのイベントを開催できたことを大変うれしく思います。
豊田会長は自動車業界で私が深く尊敬する方であり、本日ここで一緒にいられることを光栄に思います」
と語り、モリゾウさんも、
「トヨタとHyundaiが一緒に手を取り合って、よりよい社会、そしてモビリティの未来をつくっていきたいと思います」と応じている。
ヒョンデとトヨタは2024年のWRC全13戦を戦い終え、ドライバーズタイトルはヒョンデのヌービル選手、コ・ドライバーズタイトルは同じくヒョンデのヴィーデガ選手がそれぞれ初優勝を飾り、トヨタは4年連続となるマニュファクチャラーズタイトルを獲得した。
WRCラリージャパンの最終SSでヒョンデを逆転し、トヨタがマニュファクチャラーズタイトルを獲ったことは、これから長く語り継がれていくことだろう。しかし、これまで破竹の勢いだったトヨタの前に立ちはだかったヒョンデの頑張りがなければ、このドラマチックな逆転劇も生まれることはなかった。
そして、トップ2人の関係はWRCラリージャパンの熱い戦いを通して、さらに深まったと想像できる。
【画像ギャラリー】強敵であり仲間でもあるライバルに感謝!! 4年連続のマニュファクチャラーズタイトルを獲得したトヨタ(20枚)画像ギャラリー伝えたかった感謝とおもてなしの気持ち
この広告を見てなんて素敵なんだろうと思った方は多いだろう。トヨタ自動車を代表するモリゾウさんが、ヒョンデチームとチョン・ウィソン会長に素直に感謝と祝福を伝えている。シンプルだけど深く心に沁みる、そんなメッセージだ。
しかし、それだけではないだろう。そんな気がして直接モリゾウさんにこの広告に込められた意味を聞いてみた。
「10月27日に韓国でヒョンデさんと一緒にGRフェスティバルを開催しました。イベント自体もたいへんに盛り上がりましたが、驚いたことに翌日の新聞の一面がほとんどイベントの記事でした。チョン会長と私が一緒に写る写真とともにイベントのことを好意的に伝えてもらい、私自身も心を動かされたのです。
ヒョンデとトヨタはライバルであると同時に、仲間でもあるのです。スポーツの世界ではいいライバルが、良き仲間であることは珍しくないことだと思います。
だから私は(同じ)新聞を使って、日本の皆様にヒョンデとトヨタの関係をお伝えするとともに、ヒョンデとチョン・ウィソン会長に感謝の気持ちを伝えるという“おもてなし”をしたかったのです」
この広告の反響は大きく、日本はもちろん韓国でも話題になっている。特にハングルでの祝福は大きなインパクトがあったようだ。
さらに、「キートス!(ありがとう)」と、トヨタチームの本拠地があるフィンランド語が加えられていることも洒落っ気があると好評だ。
多様なモビリティ社会の創生には、競争だけでなく、協調が重要だとチョン会長もモリゾウさんも考えている。ヒョンデとトヨタの間に生まれた共感がアジアに広がり、さらに大きな仲間づくりになることを期待したい。
【画像ギャラリー】強敵であり仲間でもあるライバルに感謝!! 4年連続のマニュファクチャラーズタイトルを獲得したトヨタ(20枚)画像ギャラリー
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