ハイブリッド専用コンパクトカーとして2011年12月に登場したトヨタアクアがデビューから9年目を迎えた。
2020年2月、ヴィッツの後継車としてヤリスが登場した。ヤリスには新開発の直列3気筒1.5Lエンジンを組み合わせた新世代THSの設定もあり、ますますアクアの存在意義が危うくなってきた。
アクアの売れ行きは、以前に比べて大幅に下がった。2020年度上半期(2020年4~9月)の登録台数は、1ヵ月平均で4028台だ。
コロナ禍の影響を受けたなかではプリウス、シエンタ、RAV4などと同等だが、以前に比べると大幅に少ない。2020年度上半期の対前年比は47.2%だから、50%を超える減少になった。
一方、2020年2月に登場した新型ヤリスの販売は絶好調だ。4月には初の新車販売台数1位を獲得し、その後も5月、7~10月(8月以降は2020年8月31日発売のヤリスクロス含む)に1位を獲得している。
ヤリス販売絶好調の裏で、アクアは今後どうなるのか? 今わかっているすべての情報をお届けしていこう。
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部 トヨタ
CGイラスト/ベストカー編集部
【画像ギャラリー】激変? 現行アクアと新型アクアはどう違うのか 写真でチェック!
デビューから9年、なぜフルモデルチェンジしないのか?
アクアの登場は2011年12月。2012年と2013年には、1ヵ月平均で2万2000台前後を登録した。現在の5倍以上の売れ行きで、2013年には軽自動車を含めた国内販売の総合1位になっている。
この後、2014年と2015年も小型/普通車の登録台数では1位になった。2016~2019年も上位を維持したが、2020年に入ると減少が目立つ。
2019年までの対前年比は、マイナスが目立った年でも20%程度だが、2020年には半減した。
コロナ禍の影響もあるが、2020年度上半期の国内市場全体の売れ行きはマイナス22.6%だ。アクアの50%を超える減少は大きい。
そこでアクアの2020年の登録台数を月別の対前年比で見ると、1月と2月は約25%の減少に収まったが、3月は46.5%減っている。
3月には国内市場全体でも9.3%減ったが、アクアはこれを超える落ち込みだ。4~9月もアクアは40%から50%を超える減少であった。
以上のようにアクアの登録台数を対前年比で見ると、2020年3月以降に目立って減っている。
なぜアクアの売れ行きが急落したのか。トヨタの販売店に尋ねると、以下のような返答だった。
「2020年2月にヤリスが登場したのを受けて、アクアの売れ行きが下がりました。ヤリスは新しいハイブリッドシステムを搭載して、アクアに比べると燃費が優れています。
安全装備も充実しており、価格にはあまり差がないので、多くのお客様が新しいヤリスを選ばれます。アクアの前期型を購入されたお客様が、ヤリスに乗り替えるパターンもあります」。
アクアGのJC08モード燃費は27.2km/L、ヤリスハイブリッドGは、実用燃費に近いWLTCモード燃費で35.8km/Lを達成している。
安全装備も異なる。ヤリスの衝突被害軽減ブレーキは自車が右左折する時に直進してくる対向車、横断歩道上の歩行者も検知できる。自転車の対応も可能だ。これらの機能がアクアには採用されない。
さらにヤリスでは、アクアと違って運転支援機能も備わる。車間距離を自動調節しながら先行車に追従走行したり、車線の中央を走れるようにパワーステアリングを制御することも可能だ。
これらの先進機能がヤリスには採用され、アクアに非設定であれば、ユーザーがヤリスを選ぶのは当然だろう。
価格はアクアGが212万6300円、ヤリスハイブリッドGは213万円だ。一部の装備はアクアGが充実するが、全般的に見ればヤリスが上まわり、機能と価格のバランスでも買い得感が強い。
以上のような理由から、2020年2月にヤリスが登場したのを受けて、3月以降のアクアはユーザーを奪われた。売れ行きも急落させている。
コメント
コメントの使い方