■受注システムの透明さに切り込んだトヨタ
今回トヨタが切り込んだのは、透明性のある受注システムである。内容を聞いて驚いた。トヨタは車種だけでなくパワーユニットやグレード、さらにメーカーオプションまで含む生産計画台数をリアルタイムでわかるようにしてきた。
ディーラーは端末でお客さんの欲しい車種&仕様を検索すれば、かなり正確な納期を提示できる(3カ月先までは10日単位。それ以上だと1カ月単位)。
参考までに書いておくと、半導体不足と新型コロナによる生産不足を受け、最初に納期の目安を出してきたのはトヨタ。それすら難しいことである。日産なんか「トヨタやホンダは納期目安を公表しているに、なぜアンタのところだけ出さない!」とクレームが出ても、数カ月も知らんぷりを決め込んだ。納期の透明性を出そうとすると、さまざまな抵抗が出る。だから30年間できなかった。
今回も抵抗はあったようだ。特にトヨタでいえばメーカー直販店がほとんどなく、販社は地場企業。それでもシステムを作り上げられたのは、
1)ディーラー自身、多くの納期トラブルを抱えて対応に苦慮していた。
2)豊田会長にシンパシーを持つディーラー経営者が多かった。
3)友山さんは65歳で出世欲がなく怖い者なしだった(同じ歳なので気持ちは100%理解できる)、という点にあると思う。
このシステムの凄さは、怖い者なしになった友山さんが大暴れした部分にある。項目のなかに「名義変更」とあった。何かと聞いたら、オーダーした人の名前と、登録した人の名前の違いを追いかけているそうな。
つまり、転売目的で見込みオーダーを入れ、登録する時は違う人というケースを追いかけようというもの。数字に出てしまう! 見つけたらトヨタから詳細な調査依頼を出す。
■納期が可視化され、ユーザーとディーラーの信頼関係も取り戻せる?
このシステムが本格的に立ち上がり、上手に使いこなせるようになれば、ユーザーとディーラーの信頼関係を修復できることだろう。多くのメディアは今回の『J-SLIM』というシステムを「トヨタの効率主義のひとつ」と紹介するだろうが、根っ子にあるのは顧客第一主義にある。
ほかのメーカーには豊田章男も友山茂樹もいないため、頭からフトンを被って長納期状態をやり過ごすしかできまい。
興味深かったのは2023年10月13日時点でバックオーダーが75万台もあること! 半年前で95万台だった! 今の調子だと2024年10月は55万台。トヨタの年間販売台数は2022年で125万台だったため、それでも平均的な納期は6カ月ということ。
車種ごとの納期も可視化されており、ノア/ヴォクシーのハイブリッドだと11カ月とな! 可視化することでさまざまな課題も見えてくると思う。
【画像ギャラリー】トヨタが導入する「J-SLIM」は何がどう画期的なのか?(14枚)画像ギャラリー
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