「日本カー・オブ・ザ・イヤー」は、自動車関連メディア39媒体が主催する、日本でもっとも権威のある賞典。毎年一定期間(今年は2022年11月1日~2023年10月31日)にデビューした国内外の新型車の中から「今年を代表する1台」を選出する。44回目となる今年度のノミネート車は全34車種で、各メディア(実行委員会)から選出された自動車に造詣の深い選考委員60名により選出する。
今年、最も点数を集めて「イヤーカー」に選出されたのはトヨタのプリウスだった。
本稿では、当社から日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員として推薦した伊藤梓氏に、投票先と投票理由を伺います。
文/伊藤梓、写真/日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員、三菱自動車
【画像ギャラリー】わたしが「今年の一台」に三菱デリカミニを推した理由【日本カー・オブ・ザ・イヤー2023】(13枚)画像ギャラリー■選考基準は「若い世代にも楽しさが伝わるクルマ」
今年(2023年)、ベストカーWebさんから推薦していただき、日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員を初めて務めさせていただいた伊藤梓です。これまで自動車ライター&イラストレーターとしてさまざまなクルマの発信をしてきましたが、選考委員になったことで、さらに責任感を持ってクルマと対峙しないといけないなとしみじみ実感した一年でした。
最初は「投票する時の選考基準をどうしよう」と悩んだのですが、これまで自分がこの仕事をするにあたって目標にしてきた「若い世代の人たちにもクルマの楽しさを伝えたい」ということからブレることなく、日本カー・オブ・ザ・イヤーの得点を付けさせていただくことにしました。
(※選考方法/一次予選で選ばれた「10ベストカー」の中から、「今年の一台」として一番ふさわしいと思うクルマに10点、二番手に4点、三番手に2点を振り分けてゆく(選考委員60名の合計点で最高得点を「イヤーカー(大賞)」とする。また、この10台の中から「最も優れたデザイン」を1台、「最も優れた技術」を1台選んで投票し、それぞれ最も得票を集めたクルマに「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」、「テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー」を贈る)
■わたしが選んだ「今年の一台」1位 三菱・デリカミニ…10点
1位にデリカミニを選んだのは、とにかくその商品力の高さです。元々はeKクロススペースとして販売されていたスーパーハイトワゴンを、デリカミニに作り替えたことには驚きましたが、実際に触ってみて、ここまで作り込んだことにはもっと驚きました。
まず、秀逸なのはデザインです。ちょっとやんちゃそうに見えるヘッドライトや、歴代のデリカのモチーフをうまく踏襲したタフなフロントマスクは、パッと見ただけで誰でも「可愛い」「かっこいい」と思えるデザインになっています。SUVらしくホイールアーチやサイドまわりがブラックになっていますが、これを塗装だけで表現していることにも驚きました。
立体パーツをつけてしまうと、軽自動車の仕様には合わなくなるらしいのですが、それでも難しい塗装にチャレンジしてディテールをこだわったところも開発者や生産者の心意気を感じました。
デリカといえば、悪路をバリバリに走れる4WDというイメージがあったので、最初は「デリカミニと名乗るなら、スズキのジムニーと肩を並べるような本格4WDにしてもいいのでは」と思っていました。
しかし、三菱としてはしっかり市場を調査した結果、「広くて使いやすい、そしてその中でもしっかり安心して使えるモデルが必要」ということで、デリカミニをスーパーハイトワゴンの規格で作ることを決めたそうです。確かに、デリカミニのためにラダーフレームの骨格を作り、そのプラットフォームをデリカミニだけが使うことになれば、高額なモデルになってしまいますし、ユーザーも限定されてしまいます。
この出来上がったデリカミニに乗ってみると、乗り心地が良くて運転しやすく、一般道から高速道路はもちろん、キャンプ場へと入っていくようなちょっとした砂利道も得意で、日常のシーンから少し冒険してアウトドアに行ってみようというところまで、しっかりカバーされているモデルだと実感しました。
軽自動車としての価格としては約180〜207万円と安くはありませんが、デザインや使い勝手を考えれば、所有した時の満足度は非常に高いモデルになるだろうと思います。
コメント
コメントの使い方良い御判断だったのではないかと思います。ただ、コンセプトをさらに追及すれば、たとえばタウンボックスが今でも三菱にあれば、そっちをベースに作ったろう、とは思うんですよね。そのあたり、独自に軽ラインナップを揃えられなくなってきた三菱のしんどさが垣間見えるようです。
550アトレーで楽しませてもらった自分としては、専用縦置きCVTまで作ったダイハツにこそ、こういったチャレンジをしてほしい。