輸入車専門店ガレージカレントに取材!
で、実際のところはどうなのか? 空冷モデルから水冷モデルまでの歴代ポルシェ911を数多く取り扱っている横浜市の輸入車専門店「ガレージカレント」の栗田佳祐店長に、“正味のところ”を聞いた。
――一部の996前期カレラは車両価格170万円ぐらいから探せるわけですが、ああいうのって買っちゃっても大丈夫なんでしょうか?
栗田店長 う~ん……。人様の買い物に口出しをしたいわけではないのですが、私、個人的にはお薦めしていませんし、当社としても、その価格帯の前期996は取り扱っていませんね。
――それは例のインタミ問題があって、996前期はポルシェジャパンがやっている「サービスキャンペーン」の対象外だからですか?
(※編注:インタミ問題というのは、タイプ996とタイプ997前期のエンジンで使われていた「インターミディエイトシャフト」のボルトとベアリングが走行中に破損し、エンジンが壊れてしまうという問題。タイプ996後期型以降の正規輸入車は、ポルシェジャパンのサービスキャンペーンによる無償の点検を受けることができ、場合に応じて対策修理やエンジンの交換などが行われている)
栗田店長 いや、必ずしもそうではありません。996前期がサービスキャンペーンの対象外であることは事実ですが、私がこれまで販売させていただいた数多くの996前期、つまり「整備履歴と現状のコンディションを見極めたうえで仕入れ、そしてしっかり整備をしてご納車した前期996」では、お陰さまで今まで1台もインターミディエイトシャフトの破損を起こしていないんですよ。1台も、です。
――そうなんですか? なら、996前期を買っちゃってもいいような気もしますが?
栗田店長 しかしですね……具体的な価格を言うことはできませんが、オークション会場でかなり安いプライスで出品されている996前期は……、まぁちょっと大変ですよ。
エンジンからものすごいうなり音が発生していたりしますから。あれは仕入れられませんね。ウチでは無理です。
――やっぱそうなんですか……。
栗田店長 クルマに限らず何でもそうだと思いますが、安いモノには「安い理由」があるんですよ。
「状態のいいモノをたまたま安く仕入れることができた」という可能性もゼロではないでしょうが、もしも本当に状態がいいのであれば、わざわざ安くしないで普通のプライスで売りますよね? そうすれば、販売店としては儲かるわけですから。
―― “うまい話”はないってことですね……。サービスキャンペーンの対象となっている996後期(2001年5月~)の、100万円台とか200万円ちょいの中古車はどうでしょう?
栗田店長 これもインタミ問題の以前に、かなり安い個体はメンテナンス状況が最低であることが多いため、当社ではお取り扱いできない場合が大半です。
先日も、996後期の買い取り依頼でいらっしゃったお客様がいたのですが、正直申し上げてメンテナンス状況は大変よろしくなく、エンジンはぜんぜんフケませんし、例のうなり音もすごい……ということで、申し訳ないのですがお断りしました。
そういった個体は、例の「6番シリンダー問題」が今後発生するか、もしくはすでに発生している可能性も大ですし。
――「6番シリンダー問題」というのは、996と997前期のエンジンでしばしば発生するという、右バンクの6番シリンダーに傷が入ってエンジンがブローしてしまうという問題ですね?
栗田店長 今「しばしば発生する」とおっしゃいましたが、実際はそんなこともありません。私がこれまで販売させていただいた996後期や997前期は、1台も「6番シリンダー問題」が発生していません。
まぁ正確な原因が100%は特定されていないため断言はできないのですが、結局はこれも「メンテナンス次第」なのだと私は思っています。
冷却水やオイルなどがしっかり管理されてきた個体であれば、そう簡単に起こる問題ではないんですよ。
――しかし爆安な個体の場合は?
栗田店長 これまた断言はできませんが、爆安な個体はメンテナンスがイマイチだった場合が大半であるため、シリンダーに傷が入ってしまうこともあるでしょうね。
その場合、ポルシェジャパンはこの問題をサービスキャンペーンの対象外としているため、自費での修理となります。数百万円レベルの修理代がかかることもありますよ。
――996後期あるいは997前期を購入する際に、「6番シリンダー問題」を回避するコツのようなものはあるんでしょうか?
栗田店長 まずは「あまりにも安い中古車には手を出さない」というのが重要となります。先ほど申し上げたとおり、安いモノには安いだけの理由が必ずありますからね。あとは「前兆」を見極めることでしょうか。
――前兆というと?
栗田店長 経験上、エンジンの右バンクに問題が生じる996後期/997前期はたいていの場合、以下のような前兆が認められます。
●右側のマフラーにだけカーボンが付着している
●エンジン始動時、水蒸気ではなく、オイルが燃えた「白煙」が上がる
●アイドリング中、エンジンから「タンタンタンッ」という打音のような音が聞こえる
こういった個体は、避けたほうがいいでしょう。
――なるほど……。「安いモノには安いだけの理由が必ずある」というのはわかりましたが、具体的には「いくらぐらい」を目安とすれば、比較的安価であっても安心して乗れる中古の水冷911が探せるのでしょうか?
栗田店長 中古車のコンディションは個体によって千差万別ですので、一概に「いくら」とは言いにくいのですが……。あくまでも目安としては、以下のニュアンスになるかとは思います。
●996前期AT:車両価格200万~300万円くらい
●996前期MT:車両価格250万~400万円くらい
●996後期AT:車両価格250万~370万円くらい
●996後期MT:車両価格300万~450万円くらい
●997前期AT:車両価格380万円~
●997前期MT:車両価格450万円~
――う~む、やはり「100万円台の予算でポルシェ911を買う!」というのはちょっと無理があったようですね……。
栗田店長 そのあたりは考え方次第ではないでしょうか? と言いますのも、コンディションや装備レベルが良好なポルシェ911は、世代を問わず「リセール相場」がかなり高いですから、安めの難アリ物件を買って二束三文で手放すより、ちょっといいやつを買って数年後に高く売るほうが、結局はおトクなんですよね。
――そんなもんですか?
栗田店長 そんなもんですよ。例えばこちらのオレンジレッドパールの996カレラは、前期型ですがコンディションも整備履歴も上々で、この希少色もハマる人にはハマりますから、例えば2年後も、けっこういい値段をお付けできるはずです。
――ほほう……。
栗田店長 そして997のカレラであれば、例えばこちらの物件のような紺系の外装色(アトラスグレー)+タンレザー(テラコッタ)内装」だったり、また例えばこちらのように純正カップエアロが付いていたりすると、将来的にもかなり高く買い取らせていただくことが可能です。
さらに「スポーツクロノパッケージ」や「スポーツエキゾースト」などといった超人気オプション装備も、付いている個体のほうがリセール価格は圧倒的に上ですよね。
つまりポルシェ911は「最初の安さ」だけを考えるのではなく、所有期間中の満足度や売却価格まで含めた「総合的なコストパフォマンス」を重視していただくのが、結局は正解なんです。
――なるほど……。「安物買いの銭失い」になりがちな自分をいさめるためにも、ちょっと冷静に考え直してみることにします!
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