名車中の名車 P10プリメーラ「生証言」と中古車事情 まだ買えるのか? ちゃんと走るか??

P10プリメーラに50万km以上乗り続けるオーナーの生証言

 「まぁ数は少ないとしても、走行6万kmぐらいの個体が車両50万円前後で狙えるなら、割りと狙い目なんじゃない? 1台買ってみようかな?」

 そんなことを考えるP10プリメーラファンもいるかもしれないが、1990年代ではなく2020年における初代P10プリメーラは、普通にメンテナンスしながら維持できるものなのだろうか?

 またその乗り味は、1990年代前半に感動を覚えたことは確かだが、2020年の今乗っても感動できるのだろうか?

 そのあたりのことを、P10プリメーラを運転したことはあるが、購入した経験はない筆者が机上で考えても意味はない。

 そのため、「バリバリの経験者」であり「P10プリメーラの現役オーナー」でもある人物に詳しい話を伺うことにした。

 1995年に初代日産プリメーラ2.0 Tm Sセレクションを新車で購入し、以来25年の時間と50万km上の距離をP10と共にしているレースフォトグラファー、田村弥さんである。

――ということで田村さん、まずは「P10プリメーラというクルマの乗り味」みたいな部分を改めて教えてくれませんか?

田村さん 私の話でよければ、もちろん了解です。ご存じのとおりP10プリメーラの乗り味は硬めで、道が悪いと、いわゆるタウンスピードでは突き上げ感も強めです。

 ただ高速域では逆に比較的フラットになりますので、高速道路を使っての長距離移動は得意分野だといえるでしょう。

――やはりタウンスピードだと、かなり硬い感じなんですね?

田村さん しかしそんな硬めの乗り心地も、ショックアブソーバーを社外品に交換して、ちゃんとリセッティングしてあげれば、持ち前のキビキビしたハンドリングを失うことなく、相当マイルドになりますよ。

――なるほど。いわゆるコーナリング時のフィーリングはどんな感じなんですか?

田村さん フロントサスはマルチリンクなのでロール剛性が高く、限界も高いのですが、それに比べてリアはストラットなので限界がやや低く、突然ブレイクする危うさもあります。

 ボディは、この年式の国産車にしてはしっかりしてると思いますが、ボディの剛性も「リアが弱め」というバランスです。リアが突然ブレイクするのは、この影響もあるのではないかと思っています。

――うむう……。

田村さん 例えば高速ワインディングなどで、フロントの舵が効いているうちは「ハンドルを切ったら切っただけ曲がっていく」という感じなのですが、ある時アンダー傾向が出ます。

 で、そこでビビってアクセルを戻すと突然リアがブレイクしてスピンモードに入り、かなり激しいタックインを起こして痛い目にあいます。実は私も痛い目にあったひとりです(笑)。

――昔の話ですが、田村さんもやっちゃったんですね(笑)。

田村さん 恐縮です(笑)。まぁそんなわけで、当時のインプレッションによく書かれていた「ハンドルを切ったら切っただけギュンギュン曲がる」というのは、大変失礼ながら「ちょっと違うなぁ……」と思いながら読んでいました。

 ただ、その特性をわかったうえで乗ると、アンダーステアからオーバーステアの境目を使って「小気味よい運転」ができるんですよ。

 P10プリメーラが人気なのは、このドライブフィールが好きな人が多いからなのかもしれませんね。

1995年9月にデビューした2代目プリメーラ(P11)。セダンのボディサイズは全長4430×全幅1695×全高1400mm
1995年9月にデビューした2代目プリメーラ(P11)。セダンのボディサイズは全長4430×全幅1695×全高1400mm

――そういえば、2代目プリメーラ(P11)では「リアの安定感を増すために」ということで、リアサスペンションがマルチリンク式トーションビームに変更されましたね?

田村さん そうでしたね。あれについては当時、「リアが落ち着きすぎて面白くない」という意見をたくさん聞きましたが、もちろん私もそう考える一人です(笑)。

 P10のリアの特性は、ちゃんとわかってさえいれば非常に好ましいものだと私は思っています。

 そしてサスペンションやアライメント、ブレーキバランスなどを「リア安定方向」にチューニングしていけば、かなり穏やかな特性にすることもできますしね。

150ps/19.0kgmを発生するSR20DE型2L、直4エンジン
150ps/19.0kgmを発生するSR20DE型2L、直4エンジン

――エンジンについてはどうですか?

田村さん 私の場合は2LのSR20DE型エンジンですが、パワーとトルク、フィーリングともに「可もなく不可もなく」といったニュアンスでしょうか。

 特に過不足はないんですが、法規内で行えるチューニングパーツも豊富ですので、自分好みのフィーリングに仕上げる楽しみもあるエンジンです。

 車重も今のクルマに比べればかなり軽いですし、特にMT車であれば、ギアをちゃんと選択して走れば、ノーマルエンジンでもまったく問題ないと思いますよ。

――P10プリメーラで「不足に感じる部分」は特にない、と?

田村さん うーん、でもブレーキは若干もの足りないかな? もう少し性能に余裕のあるものだったら良いと思いますし、理想を言えば、もう少し容量の大きいブレーキシステムが欲しいですね。

――メンテナンスに関する部分はぶっちゃけ、どんな感じなんですか?

田村さん ウチの個体は50万kmも走ってきましたので、もちろん距離なりに壊れる細かいモノは多々ありました。

 しかし弱点らしい弱点はなかったように思います。「P10だから」というわけではなく、走行距離や経過年数に応じて当たり前に壊れる部分が壊れる感じでしょうか。ですので、それはその都度修理してきましたね。

――エンジン本体もけっこう丈夫だと聞きますが?

田村さん そうですね。私の現在のエンジンは2機目で、交換以来30万km乗っています。各部のオイルシールやパッキンなどのヘタリで軽いオイル漏れは発生しましたが、その都度、パッキン交換などの軽い補修で解決しています。

――なるほど。

田村さん 1機目のエンジンでは20万km走りまして、現在のエンジンに換装する際にバラして各部の状態を確認したのですが、それなりのヘタリは生じていたものの、あのまま使っていても特に問題ないレベルでしたね。

――走行中にトラブったことはないのですか?

田村さん 仙台のSUGOでのレース撮影の帰り道にウォーターポンプのベルトが切れ、オーバーヒートを起こして立ち往生したのが最大のトラブルでしたね。

 あのときはさすがに「エンジン、オシャカかな……」とも思いましたが、修理後の現在も元気に走ってくれています。

1991年10月、英国のサンダーランド工場で生産される5ドアハッチバック、eGTの輸入販売を開始。トランスミッションは4速ATのみの設定
1991年10月、英国のサンダーランド工場で生産される5ドアハッチバック、eGTの輸入販売を開始。トランスミッションは4速ATのみの設定
5ドアハッチバックのボディサイズは全長4400×全幅1695×全高1385mm
5ドアハッチバックのボディサイズは全長4400×全幅1695×全高1385mm

――古いクルマであるP10プリメーラを田村さんの愛車みたいに元気に保つための秘訣は何だと思いますか?

田村さん P10プリメーラの生命線は足回りだと思っています。それゆえ、そんなに頻繁にではなくてもいいので何年かに一度、要所要所でブッシュやマウント、ショックアブソーバーなどをリフレッシュしてあげると、新車の頃のフィーリングに近づけることができるでしょう。

 メンテナンスは、エンジンやトランスミッション(FFなのディファレンシャルギアも内蔵)は、オイル交換を普通にやっているだけで、僕の場合は特に問題ない感じです。

――ひとつ心配なのは「部品供給」ですが、なんとかなるものですかね?

田村さん 私もそれについては心配していますが、幸いにも今のところ、「部品が出ないためどうにもならない」という事態には陥っていません。

 アフターパーツメーカーのモノや中古品、リンク品で対処できています。ただ今後は「致命的な部品がなくて修理不能」となってしまうのが一番心配ですね……。

――なるほど。きちんとケアしてあげれば普通に走ってくれる頑丈なクルマだが、さすがに今後はパーツ供給がちょっと心配である……と

田村さん そうですね。あとはまぁ超基本的なこととして、「調子が悪いかな?」と思った時は、なじみの信頼できるショップさんに早めに様子を見てもらい対処するということ。おそらくはそれが、自分がP10プリメーラに長く乗れている最大の秘訣かもしれません。

――基本に忠実に、ですね。押忍、了解であります。本日は貴重な生の情報、誠にありがとうございました!

田村さん いえいえ、どういたしまして!

初代P10プリメーラの中古車情報はこちら!

【画像ギャラリー】なぜ名車と呼ばれたのか? 初代P10プリメーラの新車当時の写真をチェック!

1994年の全日本GT選手権(JTCC)のエントリーを記念して1994年1月に発売されたプリメーラオーテックバージョン。30psアップした180psのSR20DEチューンドエンジンをはじめ、専用サスペンション、専用グリルやスポイラー、205/50Rタイヤを装着
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