1999年1月から2002年8月まで生産された、日産最後のFRのスペシャルティクーペ、S15シルビアの中古車相場が依然高騰を続けている。
走行距離が少ないMT車であれば300万円オーバーとなるのはザラで、なかには500万円近いプライスとなっているクルマもある。
「新車のときは一番高いスペックRエアロでも260万円ぐらいで買えたのに、何だよそれ!」と叫びたくなる相場ではある。
だが中古車の相場というのは、新車時価格ではなく「現時点での需要と供給」で決まるため、叫んだところで意味はない。
2020年の今となってはほぼ絶滅危惧種ともいえる「コンパクトなFRクーペ」のなかではもっとも新しい世代であるS15が人気となり、その結果として相場が高騰するというのは、ある意味「仕方ない話」なのである。
そこで、S15シルビアの中古事情と、購入の際のチェックポイント、そして維持していくためのメンテナンス事情について、S15シルビアに詳しい専門店に徹底取材!
文/伊達軍曹
写真/伊達軍曹 日産
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S15シルビアの販売に強い専門店に突撃取材!

100万円であろうが500万円だろうが、S15シルビアが「約20年前のクルマ」であることに変わりはない。そんな約20年前のFRスペシャルティクーペは今、普通に購入し、そして普通に維持できるものなのだろうか?
そのあたりの正味のところをS15シルビアの販売にきわめて強い「GARAGE-R厚木店」営業部の大沼 崇さんに聞いた。
――ということで大沼さん、S15シルビアの中古車相場は相変わらず上がっているように見えますが、実際のところはどうでしょう?
大沼さん そうですねぇ、もちろんモノにもよるのですが「この1年で80万~120万円ぐらい上がってしまった」というのが、私が肌で感じている仕入れ相場です。それに連動して当然、販売価格もほぼそれぐらい上昇していますね。
――ううむ。まぁそのあたりは今さら私がわめいても、どうすることもできませんので、現実的な話に移りましょう。S15シルビアって今、機械としてぶっちゃけどんなコンディションである場合が多いのでしょうか?
大沼さん 基本的には頑丈なクルマではあるのですが、さすがに約20年前のクルマですから「新車とほぼ同様のイメージで維持できる」ということは絶対にありません。
具体的には、まずはパワーウインドウやエアコンなどの快適装備系は、壊れるというか、経年によって部品が寿命を迎えているケースも多いでしょう。
――まぁパワーウインドウのレギュレーターとかだったらまだいいですが、エアコンを直すとなると結構なお金がかかりますので、そこは購入時にしっかり見ておきたいですね。そのほかはどうでしょう?
大沼さん あとは「約20年前のクルマとして一般的な劣化箇所」ですよね。エアフロセンサーやクランク角センサー、O2センサーなどのセンサー類やイグニッションコイルなどの点火系。
あるいはセルモーターあたりが順次寿命を迎えているでしょうし、オドメーターの表示がおかしくなったり、タコメーターが不動になっていたりする個体も散見されます。
――うむう。このぐらいの世代だと、さすがにあちこちの部品がいたちごっこ的に寿命を迎えていきますので、S15シルビアを買って維持するというのは、そう簡単な話でもないのですね……。
大沼さん まぁ「クルマの点検整備はすべてディーラーに任せてきた。機械のことはよくわからない」的なお客様には、正直お薦めできかねます。
――ですよね。
大沼さん しかし、S15シルビアを欲しいとお考えになる方は「自分でいじるのが好き」という人が多いですし、「昔乗っていた」という方も多いものです。
そしてそういった方々にとっては「言うほど大変なクルマではない」とも言えるのが、S15シルビアというクルマです。
S15の部品供給は大丈夫なのか?
――あ、そうか。そういった系の人であれば、「部品を探して注文して、そしてそれを自分で交換して」みたいな一連の作業も“趣味”みたいなものですから、楽しみながらやれるのでしょうね。でも部品供給はまだ大丈夫なんですか?
大沼さん 純正部品については、まだ出るものもありますが、出ないものも多くなってしまいましたね。
――ですよね。やっぱり大変?
大沼さん とはいえS15シルビアの場合は社外パーツが豊富に出回っていますし、ほかの日産車用部品を流用することも可能ですので、これまた、お好きな人にとっては「言うほど大変ではない」というのも事実だと思います。
――あ、そうか。足回りは確か、同世代のスカイライン用とかが流用できるんでしたっけ?
大沼さん そうですね。フロントの足回りはローレルと共通で、リアはスカイラインおよびローレルと共通ですので、何かしらの社外部品がたいてい使えます。
フェンダーなどのパネル類についても、豊富に存在する社外のFRP製ワイドフェンダーなどに変更される方が多いので、基本的には「心配なし」と言うことができます。
――しかし私の個人的な趣味を言わせてもらうと、ワイドフェンダーとかエアロってあまり好きじゃなくて、どうせなら「ほぼ純正のスタイル」で乗りたいのですが?
大沼さん そういった場合には「ノーマル形状のFRP製社外ボディパーツ」もありますので、そちらをお選びいただければOKかと存じます。
――うむむ、なるほど。でも古いクルマ用のエアフロセンサーとかって、今となってはそこそこ高いんじゃないですか?
大沼さん そうですね。S15用のエアフロセンサーは、最近では4万5000円ぐらいになっています。
しかしS15に流用可能なR35GT-R用エアフロセンサーでしたら、1万5000円ほどで済みます。
そしてS15シルビア用は容量が小さく、いつ生産中止になるかわからないというのもあります。
そのため弊社では、精度が高く部品供給の心配もないR35GT-R用へのリフレッシュと併せての交換をお薦めしています。
――なるほど……。
大沼さん またそのほか、O2センサーなどにも手頃な社外品がありますしね。
――となるとS15型日産シルビアの中古車というのは、まぁ相場が高騰してしまったという問題はさておき、維持に関しては「決してラクではないけど、言うほど大変ではない」というのが正味のところであると考えていいわけですね?
大沼さん そのとおりかと存じます。もちろん「素性の良い個体を選ぶ」というのが大前提ですが、しっかりしている個体でさえあれば「いろいろと大変すぎて維持できない!」みたいなことはあまり起こらないないクルマだと言えるでしょう。