マツダが「初代ロードスター(NA)のレストアサービスを開始する」と発表したのは2017年暮れのこと。
そしてその後、発表どおりNAロードスター用の復刻パーツ約170種類が販売されたわけだが、2020年12月18日には「2代目サバンナRX-7(FC3S)および3代目RX-7(FD3S)のサービスパーツも復刻し、再供給する」とのアナウンスがあった。
ここではその両RX-7のなかでも特に人気が高い「FD3S」に絞って、復刻パーツの詳細と、中古車購入時の注意点などを考察してみたい。
文/伊達軍曹、写真/伊達軍曹 マツダ
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■FD3S型RX-7のパーツは61点用意
グローバル市場で販売されたFD3Sは約6万8000台で、日本国内ではそのうち約1万6000台が今なお大切に乗り続けられているとのこと。
そういった「約1万6000台」のため、各地のイベントでユーザーにアンケートを取り、そしてロータリー専門店各位にヒアリングするなどして復刻されたFD3S用サービスパーツの数は、2021年2月8日時点で61点。
そのうち21点の「エミッションコントロール/TUBE、VACUUM(FD3S 10万番台~30万番台)」と、「フューエルシステム/TUBE、VACUUM(FD3S 10万番台~30万番台AT車、FD3S 40万番台~60万番台)」。1点については「2月発売予定」となっているが、残る39点はすでに発売済み。
マツダグループの販売店および部品販売会社を通じて購入可能になっている。
復刻されたパーツの内容は、今のところクランプやダクトパネルのファスナー、ボルト等々のこまごまとしたパーツが中心だが、オイルレベルゲージ(8437円)やリアブレーキのボディ&ピストン(片側6万2260円)、スロットルボデーのセンサー(4万4000円)といったあたりも発売されている。
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FD3S型RX-7の中古車情報(1991年12月~1995年12月 前期型)はこちら!(リンク先)
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FD3S型RX-7の中古車情報(1999年1月~2003年4月 後期型)はこちら!(リンク先)
で、こういったメーカー純正の復刻パーツが発売されはじめたということもあり、いよいよ「FD3Sの中古車が欲しい!」という気分が高まってくるわけだが、相手=FD3Sは人気の名作スポーツとはいえ、最終年式でも17年落ちとなる「半旧車」である。
さらにはロータリーエンジンという、一筋縄ではいかない機構を採用したクルマでもある。

それゆえ、当然ながらさまざまな「購入時や購入後の注意点」は存在しているはずだ。我々は2021年の今になってFD3S型マツダ RX-7を買うとしたら、何に注意しながら、どう選べばよいのだろうか?
そのあたりの「真実」を、RX-7やRX-8といったロータリー車を20年にわたって専門店に取り扱っている埼玉県さいたま市『ガレージR本店』の車谷優樹店長に尋ねた。
――ということで車谷店長、中古のFD3Sを買う場合は、まずは何をどう選べばいいのでしょうか? やっぱり足まわりを入念にチェックしたり、エンジンの圧縮の数値を確認したり……といった作業が重要になるんですよね?
車谷店長 うーん……そうとも言えますが、結局は「ご予算と見た目」で選んでいただくのが一番なのではないかと思います。
――そ、そ、そうなんですか? それって中古車選びにおいては一番「やっちゃいけないこと」のような気もするんですが?
車谷店長 いやウチも専門店ですから、当然ながら「ちゃんとしたもの」しか店頭には並べません。そしてそれをしっかりとメンテナンスして、安心してお乗りいただける状態にしたうえでお客様にお渡ししているつもりです。
――ですよね。
車谷店長 ええ。しかしそれでも、「このRX-7は、ご納車から1年や2年は絶対に壊れません」みたいなことは絶対に言えないんですよ。
――え?
車谷店長 しかもですね、それが仮に売価800万円ぐらいの超バリ物だったとしても、やっぱり乗っておられるうちに壊れるんです。
――……え?
車谷店長 さらに言えばですね、雑誌とかでよく「FD3Sのロータリーエンジンの圧縮は〇kg以上であることを必ず確認しよう」みたいなことが書かれてますよね。
弊社でも当然、販売するFD3Sの圧縮はすべて測定していて、8kg台から7kg台のモノだけを販売しています。まぁごくたまに6kg台に入っているものをご説明のうえお売りすることはありますが、圧縮が5kg台のものをお売りすることは絶対にありません。
――はい。
車谷店長 しかしですね、それでもやっぱりFD3Sのロータリーエンジンは壊れるんですよ。そしてその壊れてしまうタイミングが1年後なのか2年後なのか、はたまた半年後なのかは、誰にもわからないんです。
――えーーっ!!?
車谷店長 加えて言えばですね、走行距離の多寡もあまり関係ありません。20万km超でも大丈夫なモノは大丈夫ですし、5万kmぐらいしか使っていないエンジンが壊れてしまうこともあります。
――えええええーーーー!!??
車谷店長 こういうことを言うと弊社のFD3Sが売れなくなってしまって私も困るのですが(笑)、しかし嘘をつくわけにもいきません。
購入から1年、2年の間に絶対100%壊れるわけでは決してありませんが、「まぁ壊れるんだろうな」と覚悟していただいたほうが、結果としてお客様もシアワセになれるはずなんです。
――ううむ……。具体的にはどのあたりが壊れるんですか?
車谷店長 どこというか、まぁ何でも考えられますよね(笑)。その個体によりけりですが、一番多いのはエンジン本体の故障でしょう。
――ほう。
車谷店長 アペックスシール……、レシプロエンジンでいうところのピストンリングですが、ここが摩耗することで圧縮が減じてしまったり、摩耗どころか破損して、圧縮がゼロになるパターンがまずはあります。
さらには「水食い」というのですが、燃焼室の、冷却水が通っているライン近くが経年劣化でサビてきて、燃焼室と冷却水のラインとの間が“開通”してしまい、圧縮がダメになるというパターンもRX-7では多いですね。RX-8ではあまりないのですが。
――ううむ、それは正直キツいですね……。
車谷店長 はい。まぁほかにもいろいろあるのですが、乗ってらっしゃる方として一番キツいのは「エンジン関係」でしょう。弊社では系列店を含めてさまざまな車種の国産スポーツカーを取り扱っていますが、エンジンブローの確率に関しては、正直申し上げてRX-7がぶっちぎりの1位です。
――古めのスポーツカーを買おうという人は、ある程度は「故障発生に対する覚悟」をお持ちだと思います。でもさすがにエンジンブローは避けたいじゃないですか? FD3Sのエンジンブローを避けるコツはありますか?
車谷店長 それがですね、「避けられない」と思っていただいたほうがいいんですよ。
――ええええええーーーー!!!?
車谷店長 もちろん、一応の予防策として「エンジンオイルは3000kmごとを目安に、安いオイルではなく良いオイルを使って交換する」「冷却水と点火プラグも、半年ごとを目安に交換する」というのはあります。
――で、それをやっておけば、まあまあ安心できるわけですね?
車谷店長 や、それでもダメになるときはあります。
――えええええええーーーーーーーー!!?
車谷店長 あくまで「できることは全部やった」という感じですかね。しかし、「だから絶対安心できる」という話でもないんです。
――もしかしてですが……店長が最初に「FD3Sは見た目で選ぶべし」と言ったのは、ここまで手がかかる可能性があるクルマは、自分がよっぽど気に入った個体じゃないと「直す気になれない」となってしまうリスクがあるからですか?
車谷店長 そうなんですよ! ご自身が心の底から「このセブンのこの色、このカタチが気に入った! ホレた!」と思えるものであれば、仮にエンジンブローしたとしても「しょうがない、直すか!」と思えますよね。
でも「なんとなく」で選んでしまったクルマが壊れたり、それを直すのにお金がかかったりするのは誰しも嫌じゃないですか? だから、ご予算の範囲内で「コレだ! コレしかない!」という感じでビビビと来たFD3Sを買うのが、結局は一番だと思うのですよ。
――マンガ『愛と誠』の名ゼリフじゃないですが、「きみのためなら死ねる!」と思えるぐらいの一台を見つけなくちゃいけないわけですね?
車谷店長 ??? そのマンガは私の世代とちょっと違うのでよくわかりませんが、まぁそういうことだとは思います。弊社も、お売りするFD3Sが壊れないよう最大限の努力はしているつもりですが、それでも「覚悟」を持っていただく必要があるクルマだと言えますね。
――最後に根本的な質問です。FD3Sこと3代目のマツダ RX-7とは、そんな思いをしてまで手に入れる価値があるスポーツカーなのでしょうか?
車谷店長 ううむ、そのあたりの価値観はもちろんお客様それぞれになりますが、やはりこのフォルムと、ロータリーエンジンならではの吹けと音は、唯一にして無二の存在です。
そこに大いなる価値をお感じになるのであれば、もちろん覚悟は必要ですが、あえて手に入れる価値は絶対にある一台だとは思っています。
――うむ、確かにそうですよね!
車谷店長 そして相場もこのところずいぶん上がってしまいましたが、それでもまだ300万円台か400万円台といったところですので、「絶対に手が出ない金額」というわけでもないとは思います。
今後は海外バイヤーの買い攻勢によってさらに上がってしまう可能性もありますので、決して安っぽく煽りたいわけではなく、正直「今がラストチャンスかな?」とは思っています。
ですので、もしも本気でFD3Sのことが気になっているのであれば、その相場がR34GT-Rのようになってしまう前に、ぜひ一度ご検討いただけたら幸いですね。
――押忍、了解です。本日は誠に率直なご意見、ありがとうございました!
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