消えた「オーバードライブ」 シフトパターンの今と昔

消えた「オーバードライブ」 シフトパターンの今と昔

 少し前まで、AT車にはシフトレバーにオーバードライブをオフ/オンできるオーバードライブスイッチが備わっていたが、最近ではほとんど見なくなってきた。

 トランスミッションの進化と多様化が進む中、シフトパターンがどう変わってきているのか、振り返ってみようと思う。

文:吉川賢一
写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、DAIHATSU、MAZDA、SUZUKI、LEXUS、ベストカー編集部 ベストカーweb編集部

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エンジンブレーキを効かせることができた

 オーバードライブスイッチは、使っている人は使っているだろうが、人によっては、シフトノブの横に何かのスイッチがあるのは知っていても、それが何のスイッチなのか、分かっていない人も多いようだ。

 オーバードライブスイッチは、下り坂などでエンジンブレーキをかけたいときや、高速道路などでブレーキランプを点灯させずにやんわりとした減速をしたいときなどに使用することを目的としていたもので、スイッチを押して「O/D OFF」の状態にすることで、高いギアから低いギアへとシフトダウンすることができた。

 4速ATの場合だと、「O/D OFF」で、4速のオーバートップから、3速のトップに落とし、エンジンブレーキを効かせていた(つまり何もしていない状態だと「オーバードライブ」は「ON」になっている。走行中にスイッチを操作して「OFF」にしたとしても、一度エンジンを切って再始動すると、スイッチを操作していなくてもオーバードライブは再び自動で「ON」になっている)。

かつては4速が最多段だったATだが、1989年登場の7代目セドリックに世界初の5速ATが搭載された 

 「オーバードライブ」とは、変速比が1.000より小さい数字の変速比(高いギア比ともいう)のことを示している。変速比1.000のとき、エンジン回転とトランスミッションの出力軸の回転比が等しくなり、この状態が「直結ギア」であり、これを「トップギア」と呼んでいる。

 このトップギアよりも変速比を下げたギアを「オーバードライブ(オーバートップ)ギア」と呼び、オーバードライブスイッチは、高速巡航でのエンジン回転数を下げることが目的で設定されていたものだ。

 変速比は自動車メーカーのホームページにある車両諸元表を見れば分かる。例えば、日産GT-Rの6速DCTだと、減速比は、1速4.056、2速2.301、3速1.595、4速1.248、5速1.001、6速0.796、後退3.370(最終変速比3.700)となっており、5速がトップギア、6速がオーバートップギアだ。

 細かな数字の値はクルマごとにばらばらだが、ギアが上がるごとに変速比は減っていき、1.000をまたいで1.000未満の数字になる流れは、どのクルマも同様だ。

R32スカイラインの4速AT 昔のクルマにはオーバードライブスイッチが当たり前に付いていた

シフトチェンジによる減速は、BレンジやSレンジが主流に

 一般的なATのシフトパターンは、P(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)が基本のパターンだ。

 その下に、以前は、発進時にエンジントルクが必要になるようなシチュエーションでの低速走行を担うL(ロー)シフトが加えられていることが多かった(今でもLレンジ付のクルマもある)が、現在は、コンパクトカーを中心にCVTが主流となったため、B(「ブレーキ」のB)やS(「スポーツ」のS、日産の旧型ノートでは「スマート」のS)レンジを採用する場合が多い。

 変速比を自在に変えられるCVTの場合、変速比を抑えて擬似的にエンジンブレーキを効かせているため、「Bレンジ」と表現している。また、モーターで駆動するEVやハイブリッド車の場合も、「Bレンジ」という表現となる。

 また、Dレンジを左右に倒して、マニュアル操作に切り替えるMシフトも増えてきた。ドライバーが意図的にギア比を変更し、エンジンブレーキを使って減速するという意味では、オーバードライブスイッチと目的は同じだ。

ヤリスハイブリッドのシフトパターン ブレーキを表すBポジションのみとシンプル

 ちなみに、最近の多段ATの中には、さらなる燃費改善を狙いとして、オーバードライブギアを複数もつクルマも多い。たとえば、レクサスのLC500の10速ATだと、7速1.000、8速0.792、9速0.640、10速0.598と、3つもオーバードライブギアがある。なんとも驚きだ。

レクサスLC500に搭載される10速AT 0.22秒という変速スピードを誇り、世界トップレベルの伝達効率を実現している

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