買うと泥沼にハマる フェラーリとポルシェ 待ち受ける悪夢のシナリオとは?

■190万円から買えてしまう水冷911悪魔の誘惑

1997年にデビューしたタイプ996。300ps/35.7kgmを発生する水冷3.4リッターフラット6を搭載。涙目型といわれたヘッドライトが特徴
1997年にデビューしたタイプ996。300ps/35.7kgmを発生する水冷3.4リッターフラット6を搭載。涙目型といわれたヘッドライトが特徴

 お次はポルシェである。ポルシェといえばなんといっても「911」が欲しいと思うわけだが、新車や高年式中古車は軽く2000万円オーバーであり、空冷世代の良質物件も1000万円を超える。

 となれば、目をひくのは車両価格190万円ぐらいから狙えてしまう996型、つまり空冷エンジンから水冷エンジンに変わった最初の世代として1998年に登場したモデルの、前期型カレラである。

 190万円といえば、トヨタライズの下位グレードを新車で買うのとおおむね同額、あるいはダイハツ トールの登録済み未使用車(昔で言う新古車)と似たような値段だ。

 「ダイハツトールとほぼ同額でポルシェ911が買える!」となれば盛り上がってしまうものだが、盛り上がる前に、まずは冷静になっていただきたい。

 車両190万円や200万円ぐらいの996型前期カレラを購入した後には、以下のような泥沼が待ち受けている可能性も高いからだ。


190万円の996型911購入後に待ち受ける泥沼
●懸案のインターミディエイトシャフト(IMS)は、前期型の場合は問題ない場合が多いが、エンジンのIMS以外の部分にいろいろな不調が感じられる。
●動かない(走らない)わけではないのだが、足回りのゴムブッシュやエンジンマウントなどのフィーリングがどうにもイマイチである。
●走行8万km前後である場合が多いため、その他のさまざまな消耗部品も納車後わりとすぐ、一斉に交換タイミングを迎える。
●それらをすべて直そうと思うが、修理代の見積もり総額を見て気を失う。
●直すことをあきらめ、「まぁ動くは動くのだから」ということで、そのまま乗り続けると決める。
●だがどうにも満足できない精神状態のまま、約1年が経過する。
●「これはもう我慢できない!」ということで売却を決意する。
●しかし二束三文でしか売れない。
●ローンで買っていた場合は、残債が残る。

 ……これも自分で書いておきながら嫌になるが、十分ありえるシナリオである。996型の前期カレラはそもそもあまりお勧めしないが、どうしても欲しい場合は「車両価格300万円付近」を下限目安としながら、慎重に探していただきたい。

2002年マイナーチェンジした996後期型。ヘッドライトデザインが911ターボと同形状に変更。エンジンはバリオカムプラスを採用し、3.6リッターに拡大、320ps/37.6kgmを発生する
2002年マイナーチェンジした996後期型。ヘッドライトデザインが911ターボと同形状に変更。エンジンはバリオカムプラスを採用し、3.6リッターに拡大、320ps/37.6kgmを発生する

996後期型ポルシェ911(2002年以降)の中古車情報はこちら!

 お次に、同じ996型カレラでも2001年9月以降の後期型は、前述したインターミディエイトシャフト(IMS)のベアリングが破損し、エンジン全体が逝ってしまうというリスクがある。

 ただし、この問題についてはポルシェジャパンがサービスキャンペーンとして無償対応しており、対策部品への交換や、うまくすれば(?)新品の対策済みエンジンへ載せ替えてくれる場合もあるため、IMS自体については巷で言われているほどの心配をする必要はない。

 しかし底値系物件の場合はIMS以外の部分で、前期型カレラとほぼ同様の問題が生じる可能性を否定できない。そのため、996型の後期カレラ系を狙いたい場合は「車両価格400万円付近」を下限目安とすることをお薦めしたい。

■泥沼警報発令中! 泥沼にハマりそうなクルマはこれだ!

 またそのほか下記のポルシェ各モデルについてもフェラーリの場合と同様、泥沼にハマる可能性を直視しながら「底値系物件には手を出さない!」という強い信念を持っていただきたいと思う。

996型の後継モデルとなる997型ポルシェ911カレラ。丸型ヘッドライトになって、空冷時代のポルシェらしさが復活
996型の後継モデルとなる997型ポルシェ911カレラ。丸型ヘッドライトになって、空冷時代のポルシェらしさが復活

997型ポルシェ911カレラの中古車情報はこちら!
997型911カレラ前期型(2004~2008年)の泥沼
→底値系の個体ではエンジンのシリンダー内にキズが発生し、そのままエンジン全体がお釈迦になる可能性も。IMSと違ってポルシェジャパンはこの問題についてサービスキャンペーン対応をしていないため、エンジン交換となると約200万円の自腹出費に。997型の前期カレラを買う場合は「車両価格420万円以上」をひとつの目安に。

ポルシェ初のSUVとなったカイエン。フォルクスワーゲンのトゥアレグと共同開発されており、共通のプラットフォームを採用している
ポルシェ初のSUVとなったカイエン。フォルクスワーゲンのトゥアレグと共同開発されており、共通のプラットフォームを採用している

初代ポルシェ カイエンの中古車情報はこちら!
初代カイエンの泥沼
→ポルシェ初のSUVとして2002年に登場したカイエン。その初代の中古車はなんと車両50万円付近から探すこともできるが、そういった底値系はやはり不具合の総合商社状態。

 そしてさまざまな不具合が出るだけならまだいいが(いや、良くはないが)、もともとは600万~1200万円級の高級車だっただけに部品代は高い。

 すべてを完璧に直そうとすると部品代と工賃で爆死する。初代カイエンが欲しい場合は「最低でも車両価格160万円」を、おおむねの目安としていただきたい。

 以上のとおり、値段だけに目を奪われて粗悪な底値系に手を出すと、「泥沼」にハマる可能性も大な中古のフェラーリ&ポルシェではある。

 だがある程度以上の予算を用意して、信頼できそうな専門店と腹を割って相談しながら慎重に選びさえすれば、「所有中は大いに満足でき、売却する際の値段も高い」というステキな一台を探しだすことも普通に可能なのだ。

 「安物買いの銭失い」をするのではなく必要十分な対価をもって、フェラーリ&ポルシェという名車の世界にぜひとも進撃していただきたいということは、最後に付け加えておきたい。

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