原爆被害から77年、被爆直後にも広島市民の生活を支えた広島電鉄の「あの日」、そして戦後の日々


 2022年8月6日広島……。1945年の原爆投下から77年目を迎えた。ロシアによるウクライナ侵攻や、中国による台湾付近での軍事演習など国際情勢が不安定となっている中、今年の平和記念式典はコロナ禍以前に近い形で行われ、広島市長の平和宣言に引き続き、岸田総理をはじめグテーレス国連事務総長らがあいさつをした。

 爆心地を含む広島市内を走る路面電車、広島電鉄は原爆による惨禍を後世に残すべく、当時被爆し、修理復旧した路面電車、『被爆電車』を走らせて平和への取り組みを行っている。被爆電車のレポートをご紹介しよう。

文・写真/有村拓真

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運転士は女子学生 原爆被害から3日後には「一番電車」が走った!! 

 原爆が投下された昭和20年、1945年8月6日当時、広電には650形を含め123両の電車が在籍していたが、そのほとんどが被爆の影響を受けた。当時、100形、150形、200形、300形、400形、450形、500形、600形、650形とさまざまな車種を保有していたが、その中でも現存しているのは今回ご紹介する650形と、150形の一部に限られる。

原爆投下から1か月後、1945年9月5日に米軍によって撮影されたとされる広島市内、中区千田町の広島電鉄本社上空からの写真【アメリカ国立公文書記録管理局所蔵】

 このうち150形の156号車という電車が現在でも動態保存されている。この車両は1971年に一旦廃車となったものの、1987年には復活を果たした。普段は江波車庫に保管されており、「ひろでんの日」などのイベントでその雄姿を見ることができる。

 いっぽう650形電車は戦中の1942年に5両が製造され651号~655号の番号が付与された。全車両が原爆の被害にあった。651号が爆心地から約700m先の電停中電前付近で被爆し半焼、652号は爆心地から約4km離れた宇品付近で被爆したが軽度の被害で済んだ。653号、654号は共に爆心地から約3km離れた江波で大破した。655号は爆心地から約2.5km離れた広島駅で全焼した。655号はその被害状況から復帰まで約4年を要したが、他の車両は1年ほどで復帰を果たしている。

原爆投下から77年、車歴として80年になる650形。末永く活躍してほしい車両だ。紙屋町東付近を走行する650形651号車。朝のラッシュ時で活躍する

 原爆による壊滅的な被害からわずか3日後の8月9日には、被爆を免れた電車を中心に乙斐電停(現在の西広島電停)から西天満町電停(現在の天満町)の2kmにも満たない距離の運行を再開した。「一番電車」が走るその姿に多くの市民が勇気づけられたという。

 1945年当時、電車の運転や車掌はわずか15、16歳の女学生ばかりであった。彼女たちは1943年に設立された広島電鉄家政女学校の生徒たちである。これは男性運転士などが徴兵されたため、人手不足が深刻であった広電が全寮制の学校を設立し、人手不足の解消を図ったことによる。他にもバスの車掌なども行っていたという。入校1年目で車掌業務、2年目で運転業務に携わったという。勉強と仕事が両立でき、給料も発生するため、中国地方の農村や漁村の女の子たちがこぞって親元を離れ広島で活躍したという。

今日も走り続ける『被爆電車』が伝える広島の歴史

 現役の被爆電車は651、652、653と3両存在するが、651号、652号は主に朝のラッシュ時などに1、3、5、7の路線で運用されることが多い。筆者が今回撮影した8月5日の午前中と8月6日は651号、652号の両車が7番の路線である広電前を出発し、横川駅前に向かう路線を運行した。横河駅前到着後は折り返し広電前行として運行されていた。653号の活躍については後述する。

8月5日の夜には原爆犠牲者を鎮魂するため、かがり火が元安川に灯された

 654号は2006年に退役し、現在はヌマジ交通ミュージアム(旧広島市交通科学館)の屋外に展示されており、不定期で車内も公開されている。655号は1967年に大型トラックとの事故により廃車となってしまった。

 いずれも車歴としては80年になる古豪の存在である。1975年にはワンマン化、1986年には各車両に冷房装置が取り付けられるなどして近代改修を行った。しかし最高速度は35km程度で、乗車定員は80人程度である。5車体3台車を連節して150人程度乗車可能な最新の5200形電車など他の車両と比べると、製造年の違いで明らかに劣る部分はあるが、なにより被爆電車という大変貴重なものである。末永く活躍してほしい存在である。

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