窓の開く列車、開かない列車、レトロな車内を体験するなら旧型客車の列車を選ぼう
SL列車の客車も各社でさまざまなものが使われている。我々が実際乗るのは客車なのだから、乗る客車についてもある程度チェックしておきたい。まずは、窓が開くかどうかだ。SL列車の魅力の一つはやはり煙を体感できること。大昔の現役時代はSLの煙は迷惑なもので、トンネルに入る時は窓を必ず閉めるのが常識だったが、観光目的なら少し開けた窓から石炭を燃やす臭いが入ってくるのもまた楽しい。いまあるSL列車で窓が開かないのはJR北海道『SL冬の湿原号』と、東武鉄道『SL大樹』の一部。それ以外は基本的に開閉ができる。ただし、開けるときは周囲の迷惑にならない程度にしておこう。
次に気になるのは内装だろうか。壁や床に木を使った国鉄時代の旧形客車をそのまま使っているのはJR東日本『SLぐんま みなかみ/よこかわ』の一部(新系列客車の12系を使用する場合もある)と大井川鐵道だ。大井川のトーマス号が牽くオレンジの客車も実は国鉄時代の客車を塗り替えただけなので、内部は本物のレトロ車両。木の質感がお爺さん世代には懐かしい。真岡鐵道の客車も国鉄時代のものだが、こちらは昭和50年代製で比較的新しい。レトロというほどではないが、冬にはSLの蒸気を熱源にした昔ながらの蒸気暖房が入るので体験するのもおもしろい。これらの古い客車には当然冷房は付いておらず、夏の乗車には覚悟が必要だ。
いっぽう、JR西日本『SLやまぐち号』の客車は一見すると非常に古めかしいが、実は2017年に新しく製造されたものだ。古い図面や写真などを参考にして、細かいところまで古い客車に近づけようとこだわったと同時に、冷房を完備したり、バリアフリー対応多機能トイレを設置するなど最新の設備も併設する意欲的な客車となった。
その他の鉄道の客車も、元は国鉄・JRの車両だが内外装ともにかなりの手が加えられている。いずれも冷房完備で夏の乗車にも苦労はない。国鉄時代の急行列車の雰囲気が良く残っているのは秩父鉄道『パレオエクスプレス』と東武鉄道『SL大樹』で、逆に観光列車としての快適さを追求して豪華な内装に生まれ変わっているのはJR東日本『SL銀河』、『SLばんえつ物語』、JR九州『SL人吉』である。
乗車中はイベント盛りだくさん。乗車後はターンテーブルでの方向転換も見学できる!!
乗車中の楽しみも沿線風景だけではない。多くの列車が車内販売に力を入れており、オリジナル弁当や地元の名産品のほか、SLグッズやゆるキャラとのコラボ商品などがいっぱいだ。ただし、弁当については予約販売主体のケースもあるので、確実に買いたい場合はネットや電話で予約しておこう。そのほか、車内でミニイベントが開かれたり、地元の人から車窓案内を聞くのも楽しい。
SL列車は降りてからも目を離せない。ターンテーブル(転車台)での機関車回転シーンを間近で見学できるのは、真岡鐡道『SLもうか』(茂木駅)、JR東日本『SLぐんま みなかみ』(水上駅)、東武鉄道『SL大樹』(下今市駅・鬼怒川温泉駅)、大井川鐡道(新金谷駅・千頭駅)。そのほか、SL関連のミニ展示室として、真岡鐵道の「SLキューロク館」や大井川鉄道の「プラザロコ」があり、「SLキューロク館」では月に数回保存しているD51を圧縮空気で動かすイベントを催している。
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