鉄道の安全を支えるJR東海の巨大車両工場が改修!! 最新型ロボットと日々繰り返される地道な人力による車両保守

■最新の安全訓練はVRで

 さて、巨大な鉄道車両を保守するということは、ふとした気の緩みや点検のミスが重大なトラブルにつながるだけでなく、作業者の安全にも大きく関わってくる。そこで工場内には、作業中の危険なシーンや機器の取り扱いなどを学習する「安全スクール」という施設がある。こちらの施設では実際の車両機器のカットモデルなどがあるほか、正しいヘルメットの着用方法や、乗務員用ドア開閉時の指はさみ体験、そしてVRを用いた体験型の実習装置が用意されている。

 今回はVRと乗務員用ドアの指はさみ体験を実際に体験させていただくことに。VRでの実習シチュエーションは次のような内容だ。

「車両の点検作業に使用した工具を線路上に置き忘れてしまった作業員。このままではその工具の上の列車が通過した際、最悪脱線という事態を招きかねない。そこで慌ててその工具を回収に向かう。VR体験者は工具を置き忘れた作業員に扮する。目の前には線路上に置き忘れた工具が見える。すぐそばに落ちているその工具を拾おうと自身が立っている他の留置車両の前から、数歩前に出て線路内へ進入、工具に手を伸ばした次の瞬間!!走行中の他列車に接触してしまった。」

 本来、線路を横断進入する場合は基地内の指定箇所を渡り、横断前には必ず左右を指差確認しなければならない。しかし今回のように焦りから左右の安全確認をしないまま線路内に入ってしまうと他列車の接近に気づかず事故に遭う可能性もある。VRとはいえ目の前に迫りくる列車の恐怖はタダモノではなく………。なかなか車両基地内の踏切を横断する機会はないが、これは信号機のない道路の横断歩道を渡るときにも応用できる注意ポイント。しっかりと左右を確認してから道路を渡る大切さを再確認した。

 乗務員用ドアの指はさみ体験も、安全に加工されている実習用のドアとはいえ、実際に自身の手を目掛けてしまってくるドアの恐怖感は思わず顔も青くなる。さらに軍手の指部分に割り箸を入れ、実際にドアに挟んでみると割り箸は見事に折れるようすも見学。この割り箸の硬さはちょうど小指の硬さと同じくらいといわれているそうで、「これが自分の手だったらと想像してみてくださいね」といわれ、ゾッとした。この「ゾッ」こそが大切な体験なのだろう。

■JR東海の在来線最重要拠点

 名古屋工場はJR東海の在来線にとって最重要拠点といっても過言ではなく、自然災害への対応も万全。今回行われた耐震補強のほか、ピットのように床下部分に作業スペースや機器が設置されている箇所には自動浮上式の止水板を新設。これは水の力で自動的に浮上する構造になっており、あらかじめ豪雨が想定される場合は予防的に浮上させることもできるほか、突発的な豪雨時でも降り注いだ雨水の力で自動的に浮上する構造になっている。

「自動化を進めても大切なのは人間の能力」と話すJR東海 神田英樹 名古屋工場長
「自動化を進めても大切なのは人間の能力」と話すJR東海 神田英樹 名古屋工場長

 JR東海名古屋工場長の神田英樹氏は「今回の工事を受け、各所に自動化、省力化が図られましたが、それでも最も重要なのはそれを取り扱う人間です。安全で品質のいい車両を送り出し、お客さまにご利用いただきたいです」と話す。

 その証拠に工場内には「○○取り付けよし!」、「トルクよし!」といった指差確認のハキハキとした声が響く。原始的な動作ともいえる指差確認と呼称作業だが、やはりこれが確実な確認作業につながるのだ。

 どんな最新鋭の車両も点検なしには安全運行は不可能。今日もJR東海名古屋工場ではたくさんの車両たちの保守点検が実施されている。

【画像ギャラリー】JR東海名古屋工場に導入された最新設備と安全管理(17枚)画像ギャラリー

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