1981年10月にシビックの下にラインアップされたシティは工夫がつまったモデル。FFのエンジン横置きという発想は、シビックと同じだが、車高をアップし、居住空間を広げているのが新鮮だった。
”トールボーイ”というキャッチフレーズとともに大きな注目を浴びた。価格はRが78万円、2人乗りの商用グレードのシティプロが59万8000円と安く、大人気となった。
1981年当時の大卒初任給平均が12万円ほどだったので、現在からすればRで110万円程度の価格となる。それでは1982年1月号のベストカーガイドをふり返ろう。
文:徳大寺有恒/写真:ベストカー編集部
ベストカーガイド1982年1月号
■バイクも積めちゃう小さなオモチャ箱
全長3380mm、全幅1570mm、ホイールベース2220mmのクルマに大人4人を楽々と飲み込み、もうひとつおまけにバイクまで積んでしまう。
エンジン横置き、FWDレイアウトと2ボックスボディを用いると、かくもスペースユーティリティに優れるクルマができるという証明だ。
シティのアイデアはけっして独創的なものではない。ジウジアーロはかつて何度か、この種のコンセプトを持つクルマのアイデアを発表しているし、日本の軽自動車もこれに近いことをやっている。
といって、日本では小型車の分野で、これほど割り切ったクルマを商品として出したのはシティが初めてだから、その評価は相応にしてやらねばならない。
ホンダは盛んにトールボーイとその高さを誇っているが、そのホンダこそ、全高を高くすることを一番嫌っていたメーカーなのだ。
もし、シビックをもう少し背を高くしていたらと、私は悔やむのだ。前後のオーバーハングにしてもそうだ。このシティはオーバーハングがほとんどないと言っていいほど短い。
しかし、これも従来のホンダでは見られなかったことだ。アコード、クイント、みなムダなオーバーハングを持っている。
このあたりの間違ったポリシーをシティはことごとく否定することから始まったのだろう。そして完成したクルマは気持ちがいいほど理想的なレイアウトなのである。全高を高くする。シートポジションを高くする。
そうすると、ドライバーは足を伸ばさなくなるのでシートが前に出る。そこでリアシートのレッグルームが生まれるという図式だ。相当前からジウジアーロが主張していたレイアウトで、VWゴルフやフィアット・パンダで実現されている。
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