ホンダV型3気筒「RCV850」を予想! RC211Vに連なる左右対称V3エンジンで軽量コンパクトを追求か

ホンダV型3気筒「RCV850」を予想! RC211Vに連なる左右対称V3エンジンで軽量コンパクトを追求か

 ホンダがEICMA2024(ミラノショー)で発表した「電動過給機付きV型3気筒エンジン」は詳細は発表されておらず、どんなモデルになるかも謎のベールだ。気が早いが予想してみた。

 
文/市本行平
 

V型エンジンをあきらめていなかったホンダ

 ホンダは1979年にNR500で世界GPに復帰した際にV型4気筒エンジンを採用し、従来の並列レイアウトのエンジンからV型に転換を図った歴史がある。以来、世界GPにおいては一貫してV型を採用し続けており、これまで数多くのエンジンを開発し、活躍してきている。

 そして、市販車でもホンダはV型を主力にすべく1980年代に大攻勢をかけたが、こちらはレースほどの功績は残せていない。当時のバイクブームに乗ってVT250Fシリーズは大ヒットしたが、他は直4モデルほどの人気を得られず、現在は全てのV型スポーツが生産終了してしまった。

 理由は「直4はフィーリングが良くエキサイティング」とよく言われる。並列4気筒の排気音やなめらかな回転フィールは魅力的で、商品性においてはV型は敵わなかったのだ。それでもホンダが再びV型にトライするのは、どういった戦略なのだろか。

 

11月に開催されたEICMAでホンダが参考出品した「電動過給機付きV型3気筒エンジン」は内燃機関への情熱を現す意味でも有効。そしてホンダらしいオリジナリティに溢れている。

 

過給機はモーターで回転するのがユニーク。配置レイアウトも自由度が高い。

 

エンジン回転数に関わらずモーター過給できるのでラグがなく低回転からレスポンスのよい特性を実現。

 

 

1980年代にホンダはV型エンジンを大きく打ち出し、レーサーからクルーザーに至るまで全方位でモデル展開。1982年のVT250Fは4ストロークで2ストのRZ250に対抗したのは有名な話だ。

 

 
 
 

次期MotoGPとのリレーションはなさそう

 ホンダが改めてV型エンジンのマシンを出すにあたってまず気になるのは、2027年からMotoGPの排気量が850ccに引き下げられる際に登場する新型マシンとの連携を図るかどうかだ。仮に新型V3マシンの発売が2026年だとするとタイミングも近い。

 しかし、これは違うかも知れない。2027年からのMotoGPは「Engines will remain 4-stroke only, with 4 cylinders」とされ、「4ストロークのみ、4気筒」なので、1~3気筒は除外されているのだ。だだし、4気筒「のみ」とも書かれていないので異なる解釈もできる。

 そして、もう一つの否定材料は、ホンダ二輪事業統括の加藤稔氏が850ccの新型MotoGPマシンについて、「量産開発にリンクするかと言えば今の時点では難しいと思います」と語ったことだ。開発中とされる新型RC214V(仮称)は、V型3気筒ではない可能性が高い。

 ミラノショーで登場した新しいV型3気筒エンジンはアッパーミドルクラスと言われており、850ccの次期MotoGPマシンに近い排気量になると思われるが、MotoGPイメージを受け継いだレプリカ的なモデルではなさそうだ。

 

1983年にWGP500クラスでチャンピオンを獲得したNS500のレプリカとして発売予定だった幻のMVX400F(未発売車)。NS500と同じ2ストローク3気筒エンジンを採用していた。

 

 

2003年に発売されたCBR600RR(手前)は、V型5気筒のRC211Vとは異なる並列4気筒エンジンを採用しつつ共通の設計思想による車体パッケージを実現。こういった連携ならあり得るか。

 

レースとは一線を画したスポーツモデルに期待

 新V型3気筒モデルの完成車についてヒントはいくつかある。前述の加藤氏は「お客様からは“もうちょっと新価値が欲しいよね”と言われています」と語っており、大型ファンモデルの既存プラットフォームにはない価値を生み出すことを目的とした新型モデルになるはずだ。

 ホンダの欧州での販売状況は好調で、CRF1100L、CB750ホーネット、NC750Xなどの並列2気筒エンジンとCB650Rなどの並列4気筒エンジンの計4つのプラットフォームが牽引している。新V型3気筒は第5の柱として位置づけられており、オリジナリティが重視されている。

 アッパーミドルの3気筒ではヤマハのMT-09シリーズが欧州で地位を確立しており、ネイキッドやツアラー、スーパースポーツまでバリエーションを拡大しており、ホンダはこれに独自のV型3気筒+過給機で対抗するだろう。バイクでは世界初の例となり注目度も高い。

 ヤマハが2025年からYZF-R9で参戦するWSSPクラスにホンダはCBR600RR、上位のSBKにもCBR1000RR-Rを投入しており、新しいV3マシンはレースとは一線を画した自由度の高いコンセプトを選択できる。それが「新価値」という新たな提案に結びつくだろう。

 

2024年9月に予想した新V3マシンの「RCV850」。標準的なネイキッドはまず登場すると思われる。他にもスーパースポーツタイプやツアラータイプなどにも期待したい。

 

 

1995年の東京モーターショーに展示されたコンセプト車のスーパーモノ644。ハーフカウルとトレリスフレームの車体に、空冷単気筒644ccを搭載していた。こういった趣味性の高い1台にも期待。

 

 

2001年の東モに出展されたコンセプト車のザクシス。心臓部は水冷Vツインで、過激デザインと前後片持ちアームの独特な足まわりが特徴だった。こういったぶっ飛び系もあり!?

 

V3エンジンは過去のGPマシンの技術を受け継ぐ

 ホンダがV型3気筒を選択した理由は1983年にWGP500でタイトルを獲得し、市販車のMVX250FやNS400Rのイメージを受け継ぐことがまず考えられる。ホンダならではのオリジナリティを追求する上で重要な歴史的背景として価値を高める好材料だ。

 技術面では、V3にしたのはエンジン内部の運動部を左右対称にできるからと推測できる。これはRC211VのV5エンジンで強調された特徴でカップリング振動を抑えることができるのだ。2010年のVFR1200FではV4でこの特徴を受け継いで発売された経緯もある。

 また、75度という挟み角はRV211Vの75.5度に近く、一般的な90度V型4気筒よりもコンパクトにできる。RC211Vでは1次振動をキャンセルできる角度になっており、新しいV型3気筒でも1次振動を打ち消す工夫が施されている可能性があるだろう。

 バランサーを不要にする技術はパワーを追求するホンダの伝統でもあり、新V型3気筒マシンはこの特徴を受け継いでいることに期待したい。公開されたエンジンはケースにバランサーとらしき張り出しも見当たらず非常にコンパクト。振動を抑えるとエンジンやシャーシを軽量にできるのもメリットだ。

 

前側2気筒で3気筒でありながら2気筒と同等の幅にできるのもメリット。ケースの前方にはセルスターターやウォーターポンプは確認できるがバランサーがあるように見えない。

 

 

前側2気筒の間に後1気筒が配置されており、クランクやピストン配置が左右対称レイアウトだと推測できる。ピストン往復運動から生じる左右方向のカップリング振動が解消できる。

 

RC211Vのクランク&ピストン配置が左右対称になっているのが分かる。

 

VFR1200FのV4は左の従来のV4から左右対称にすることでカップリング振動を解消した。

 

MVX250FのエンジンもV型3気筒の左右対称レイアウトを採用していた。

 

MVX250Fは90度V型でリアのコンロッドを2気筒分の重さにすることで1次振動も解消した。

 

過給機の採用もホンダのオリジナリティ

 過給機と言えば2015年にカワサキが発売したスーパーチャージャー搭載のNinja H2/H2Rを思い浮かべるが、バイクで先鞭をつけたのはホンダだ。1981年にホンダは二輪初のターボ車「CX500ターボ」を発売し、498ccの2気筒エンジンで82PSのパワーを発揮した。

 ミドルクラスの車体でリッターバイク並みのパワーを発揮させることが狙いで、この考え方は新しいV型3気筒エンジンにも通じているだろう。アッパーミドルの800~900cc程度の排気量でも過給することで、リッターバイクを上回るパワーを発揮できるはずだ。

 また、現代ならではのテーマとして過給機をエコに活用しているとも考えられる。燃料噴射量を抑えたリーンバーン時でも過給することでトルクを確保する制御ができることから、パワーと同時に燃費を追求していくこともテーマになると思われる。

 さらに、電動とすることでかつてのターボで指摘されたターボラグの解消も可能。ホンダが新しいV型3気筒エンジンでアナウンスする「内燃機関領域での新たなチャレンジ」には、エンジンレイアウトだけでなく制御面での進化も期待できるはずだ。

 

CX500 Turbo [HONDA] CB900F以上の加速性能およびベース車のCX500以上の好燃費を実現した世界初のターボバイク。ホンダの新しいV型3気筒はこれの進化型とも言えるだろう。

 

ターボ車を開発するにあたり水冷エンジンが必要になり、数少ない候補からCL500が選ばれた。

 

ターボ搭載でホンダで初めて電子制御の燃料噴射システムを採用。点火時期もマップ制御とした。

 

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/422003/

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