EVの移行スピードが減速してきて、ハイブリッドが再注目されているなか、スバルはトヨタのモーター/発電機と仕組みを使ったストロングハイブリッドを新開発した。その新しいストロングハイブリッドの駆動用と発電用2つのモーター、フロントデフ、AWDを1パッケージにした「トランスアクスル」を生産しているスバル北本工場を見学する機会があった。はたして工場を見学してどんなことを感じたのか?
文:国沢光宏/写真:ベストカーWeb編集部、スバル
■トヨタとは違うスバルの新型ストロングハイブリッド
自動車メーカーの工場見学というのは、自動車メディアの記事としては地味だし、あまり関心がないかもしれない。ただクルマ好きならぜひとも読んでいただきたく思う。
なんせ1997年の初代プリウスからハイブリッドについて様々な取材をしてきた私さえ、ハイブリッドの動力伝達系を生産している工場を見たのは始めて。面白いか面白くないかと聞かれたら「すんごく面白かった!」ということになります。
まずスバルのストロングハイブリッドだけれど、生き残り戦略にとって最重要アイテムになる。なんせガソリンスタンドがなくなることを意味するカーボンニュートラルの目標地点である2050年まで25年。クルマの使用期間を10年とすれば2040年くらいからエンジン車は誰も買わなくなるだろう。逆に考えると2040年までの15年間はハイブリッドが主役になる可能性大。
※関連記事「スバルが新開発した2.5Lストロングハイブリッドは先駆者トヨタよりどこが凄い? 大したことはないのか??」
そんなことからスバルは2020年あたりからストロングハイブリッドの開発に着手する。おそらく様々なシステムを考えたことだろう。
最終的に選んだのが、トヨタと同じようなハイブリッドだった。しかしトヨタのシステムは横置きエンジン用。スバルの縦置きとの共用はできない。そこでスバルはトヨタのモーター/発電機と仕組みだけ使った(トヨタはハイブリッドの特許を開放済み)。
ここまではすでに情報出ている。今回、さらに突っ込んだ取材ができるということはハイブリッド好きの私としちゃワクワクです。一番知りたかったのがトヨタのシステムとの違い。工場の生産工程で使われているパーツを見たらハッキリわかる。
■ストロングハイブリッドシステム用トランスアクスルの生産拠点として刷新された北本工場
群馬製作所北本工場(埼玉県)はもともとは汎用エンジンやスノーモービル向け車載用エンジン、発電機を生産、販売していたが、2024年10月から、新たに開発したストロングハイブリッドシステム用トランスアクスルの生産拠点としてリニューアルした。
今回、ストロングハイブリッド用トランスアクスルの生産工程のほか、デジタル化やハード面、ソフト面ともに誰もが働きやすい環境整備といった北本工場の先進的な各種取り組みも紹介した。
ストロングハイブリッド車の生産は、群馬製作所本工場と矢島工場で行う。ちなみにBEVについては、2025年から大泉工場で生産を段階的に開始し、2027年以降にはEV専用ラインを新規で立ち上げるとしているが、BEVへの移行スピードは不透明になっているため、ガソリン車、ハイブリッド車の需要も一定程度継続するとみて、混流生産するとしている。
北本工場でのトランスアクスル生産量は年産20万台規模。スバル全体の生産台数が100万台規模なので、当面20%程度をストロングハイブリッドにしていくということになる。日本市場の場合、2~3年すると事実上ストロングハイブリッドだけになると思う。アメリカだって増えることだろう。北本工場は2倍くらいの規模になると予想しておく。
実際、工場内には現物のカットモデルなども置いてあり、懇切丁寧な説明をしてくれた。いろんな意味で「なるほど!」の連続でした。一番の違いは「長さ」。横置き用のハイブリッドユニットは、横置きエンジンと同じくモーターも発電機もギアも(動力分割機構と呼ばれる)横置き。
これをエンジンルーム内に搭載するため、コンパクトにまとまっている。ボンネットを開けると、イメージとしてはエンジンの横にトルクコンバーターとトランスミッションが付いている普通のFF車と同じ。
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