最近、パドルシフトを装着するクルマが増えてきた。ハンドルを握ったままでもシフトチェンジができるため、MT車のような操作感を楽しめる機能なのだが、ステアリングの裏側に装着されているクルマもあれば、コラムに設置しているケースもある。果たして、どこに装着するのが最適解なのだろう? この疑問をレーシングドライバーがズバリ!!
文:中谷明彦/写真:ベストカーWeb編集部
■タイプによってパドルの位置は異なる
パドルでシフトをマニュアル操作する時、ステアリングのスポーク設置式がいいのか、ステアリングコラム式がいいのか、よく議論になる。スポーク設置式でもプッシュ式やプル式があり、初めて乗ると戸惑うこともあるだろう。
F1を始め、レーシングカーの例を見ればステアリング裏側一体式がほとんど。ラリー車ではステアリングホイールリング式のようなものもあり、チームの考え方やドライバーの好みでも分かれる。
ではどの方式が正解なのか、というのは愚問だ。それぞれに特徴や長所、欠点もあり、操作状況を考慮して配置すべきものだからだ。
例えば、F1のようなフォーミュラカーの場合。ステアリングのギアレシオがクイックで、ほとんどのサーキットでステアリングホイールの最大操作角は90度前後だ。
ステアリングホイールを持ち替える必要がないのでステアリング一ホイール裏に一体式のものが採用される。右手でシフトアップ、左手でシフトダウンと決まっているので操作間違いがない。
これがツーリングカーやラリー競技のようにステアリングホイールをロックtoロックまで2〜3回転も操作する場面がある場合、回転するステアリングホイールと一体式ではスポーク部だろうが裏側だろうがシフトアップとダウンのパドル位置が左右逆転するケースがあり、連続操作時には戸惑うことになる。
このような場合はステアリングコラムに固定されていれば、パドルスイッチは常に右シフトアップ。左シフトダウンと固定できる。これで送りハンドル操作すれば戸惑うことなくシフト操作できるので適しているというわけだ。
【画像ギャラリー】V12の音色に酔いしれた!!!!! パドルシフトのルーツは[フェラーリ]F640からはじまった!!!!!!(13枚)画像ギャラリー■ぶっちゃけ市販車では必要ない!?
では一般車ではどうか。やはりステアリングギア比はスローで、ヘアピンコーナーなどでは180度以上切り込むシーンも多いだろう。
車庫入れやUターン、モータースポーツのジムカーナ競技など車両を振り回してコントロールする場合もコラム固定の方が適している。そこで、僕の私見としては市販車ではコラム固定式を推奨しているというわけだ。
パドルシフト車でコラム固定式を採用しているのは輸入車ではフェラーリやランボルギーニ、マセラッティなどのイタリアンスーパーカー、アストンマーチンもそうだった。
日産GT-Rも当初はコラム式だったし、僕がアドバイスしていた三菱のランサー・エボリューションXや初代アウトランダーでもコラム固定式を採用していた。
特にアウトランダーではアストンマーチンが採用していたマグネシウム合金性を奢り、パドルの操作感に重厚さを与える贅沢な仕様となっていた。
だが、重要なのはパドル設置場所だけの問題ではない。レーシングカーでのパドル採用はドライバーに負担を軽減し、シフト操作ミスによるエンジン破損などにも役立っている。
それまで1レースで数百回もクラッチとシフトレバーを操作する苦労から解放され、ドライバーの誤操作はほぼ無くなった。そうでなければ現代のレーシングカーのような速さをHパターンシフトで操作しながら操るのは不可能だっただろう。
ところが、一般車においてはどうかというと、もともと2ペダルのAT車がマニュアルシフトする場合のパドルとして設置されている場合が多く、あまり重要な機能を与えられていない。
Dレンジを選択しておけばパドルも一才操作することなく、プログラムされたシフトが自動で選択されるのでパドルはオプション装備品である車種も多い。
こうした最近のAT車では、例えパドルで操作していてもエンジン回転が高まると自動的にシフトアップしてしまい、また低速でエンジン回転が低すぎると自動的にシフトダウンする。
ドライバーがパドル操作しなくても適切なシフトポジションになっているので意味がほとんどない。こうしたフェールセイフ機能が強すぎると、マニュアル操作の楽しみも半減してしまい、もはやパドルは必要ないと言えるだろう。
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