一般ドライバーから見ると、何のためにするのか理解できないトラックの行動がある。しかも、迷惑と感じる行為だ。たとえば、次の2点。
[1]高速道路SA・PAの減速レーン、加速レーンでの仮眠
[2]駐車場や幹線道路・中央分離帯へのゴミのポイ捨て
すべてのトラックドライバーではない、もちろん優良ドライバーもいる。だが、業界全体の評判を落とすような行為をするドライバーが一定数いるのは事実だ。
現役トラックドライバーとして、なぜそのような迷惑行為が起きるのかを分析してみたい。
文末では、トラック同士が追い越し車線まで広がって並走している迷惑運転や、あおり運転に関しても取り上げているので、最後まで読んでいただきたい。
文/長野潤一
写真/長野潤一、Adobe Stock
●長野潤一とは
トラック歴27年のベテランドライバー。物流の将来を考えながらハンドルを握る社会派ドライバー兼ライター。ベストカーで連載『トラックドライバー三番星』を執筆中
【画像ギャラリー】人の振り見て我が振り直せ! 他車から迷惑と思われる行為
■深夜の高速道路SA・PAの実態
深夜の高速道路を走ると、長距離トラックの違法駐車が目立つ。SA・PA(サービスエリアとパーキングエリア)の減速レーン、加速レーン、果ては高速バスのバス停にも駐車、仮眠している。眠りから覚めて、いざ出発しようとした際に、もし後ろから高速の車両が来たら……。重大な接触事故が起こりかねない危険な行為だ。対策や取り締まりはされているのだろうか?
各高速道路会社は、加減速レーンに駐車できないようにラバーポールを設置し、パトロールも随時行っている。しかし、ラバーポールを踏み倒してでも、無理やり駐車禁止区域に乗り入れ駐車するトラックがあとを絶たない。
カーブの途中に停めて、ほかの交通の妨げになることもしばしば。だが、警察が駐車違反で取り締まるというのは聞いたことがない。枠外駐車のトラックのあまりの多さに、取り締まりが不可能なのだろう。
なぜ、本来駐車すべきでない場合に駐車するのか? それは、SA・PAの駐車枠が圧倒的に足りないからだ。特に足りなくなるのは夜中の時間帯。東京~大阪を結ぶ新東名・新名神など幹線のSA・PAの夜中の実態は、駐車枠以外まで停められるスペースというスペースはほとんど大型トラックで埋め尽くされている。
新人のドライバーを指導する際には、「長距離は、走るより停まるほうが難しいからな」と言う。車体の長いトレーラーを停めるのはさらに至難の業。トレーラー専用枠もあるが、ほとんど埋まっている。
通常の大型枠に車体を「く」の字に折って停めるためには、2枠連続で空いている場所を見つけなければならないが、不可能に近い。もし駐車場が見つからなかったら、どんなに眠たかろうと、我慢して次のSA・PAまで走るしかない。2~3軒たらい回しにされることもある。SA・PAからあぶれたトラックが、仕方なく加減速レーンに停まっているのだ。
■なぜSA・PAのトラック枠が足りなくなるのか?
では、なぜSA・PAのトラック枠自体が足りなくなるのか? この問題は一見単純そうに見えるが、連立方程式を解くように、複雑な社会的背景がかかわりあっている。それを解読するのにしばらくお付き合いいただきたい。
[1]長時間駐車の問題
高速道路各社も、ごく一部のトラックが駐車スペースを長時間占有することで、多数のトラックが停められなくなっていると分析する。
長距離トラックの業態を大別すると、宅配便などを夜通し運ぶ「路線」と、工場~倉庫間の荷物などを運ぶ「一般」がある。「一般」は目的地の近くのSA・PAに早めに到着し、そこで翌朝まで寝るので長時間駐車になる。
駐車場の側からしてみれば回転率が悪い。すべてのトラックに寝場所を提供するというのであれば、SA・PAは際限なく大きくしなければならない。ひとつの解決策として考えられるのは、SA・PAでの長時間駐車に対して課金することだ。
混み合う幹線区間に関しては、一定以上(例えば2時間以上)の駐車には料金を徴収するというふうに方針転換するべきではないだろうか。徴収は技術的に難しいが、事業用車に普及しているETC2.0を利用すればよいだろう。
SA・PA駐車枠不足解消への取り組みに関する最近の動きは、
・ETC2.0を利用した「一時退出」外部駐車場活用(新東名=道の駅もっくる新城など)
・東名(下り)駒門PA移転拡大(2017年)
・新東名(上り)静岡SAと浜松SA拡大(大型枠8~9割増)、25mダブル連結車専用枠新設
などがある。
[2]「430休憩」の実施強化
「430休憩」とは、連続運転4時間以内につき30分以上休憩しなければならないという、労働基準法の条項の通称である。
2時間で15分の休憩を2回など、分割休憩も認められる。この条項は以前からあったが、数年前から企業のコンプライアンス遵守が重視されはじめ、時を同じくしてデジタルタコグラフ(デジタコ、運行記録計)が普及し、休憩時間が可視化されたことから確実に実施されるようになった。
以前は、8時間でもぶっ通しで運転するドライバーもいたため、「430休憩」は重大事故の削減に一定の成果をあげている。しかし、ほとんどのドライバーがキッチリ30分休憩を取るようになったことが、SA・PA混雑の一因にもなっている。
[3]ETC深夜割引のための時間調整
深夜割引は、深夜0時(24時)~4時の間に高速道路上にいれば3割引になるというもので、長距離になればなるほど割引額も大きくなる。
例えば、13トン積トラックで大阪~東京間(約470km=大型車1万7000円)の場合、東名・東京料金所を24時過ぎに通過すると5000円以上の割引になる(トレーラー=特大車なら約9000円の割引)。この制度には、多くのトラックを24時までせき止めてしまう欠陥がある。
解決案としては「事業用自動車は全時間帯同一の15%割引」というのはどうだろうか? これなら時間帯を気にすることなく、24時間シームレスな物流を実現できる。
「割引率が低い」という声も出そうだが、もともと事業用車というのは深夜割引を受けたのち、さらに「ETCコーポレートカードの大口・多頻度割引」(最大46%程度割引 ※令和2年3月まで暫定)を受けており、大型トラックの料金のほうが一般の普通乗用車よりもはるかに安い。また、ITを駆使して、時間帯と割引率をもっと細分化するのも一案だ。
[4]高速道路外の駐車場不足の問題
これが最も根源的な問題だと感じる。“下”に降りると適切に停められる場所がないのだ。
トラックの駐車場というのは、本来運送会社自身や積み降ろし地(荷主)、または公共で用意すべきものである。しかし、全国に多数ある工業団地には公共のトラック専用駐車場がなく、ほとんどが路上駐車。最近インターチェンジの近くに増えている巨大倉庫にも、充分な待機場を備えているものは少ない。道の駅やトラックステーションも、大都市圏では充分にはない。
しかし、「ジャストインタイム」といって、定時に来いという。早過ぎてもダメなのだ。全国からトラックが集まるメッカともいえる東京港(大井埠頭など)にすらトラック待機場はない(あるのは、コンテナ待機レーンだ)。
そのため、オリンピック会場のすぐそばの江東区新木場や若洲には、路上駐車のトラックが常時数百台は居る。大型車への駐禁取締りはほとんどなく、警察も“お目こぼし”をしている。
トラックステーションを設置するのが本筋なのだが、新設するには相当な費用がかかる(東京都港湾局は混雑緩和のため12月から一般トラック待機場のトライアル運用を開始した)。税金で造った道路の1車線をやんわり使っている分には、誰もあまり文句を言わない。そうした面倒なものを日本中で、無料の高速道路のSA・PAに押し付けてしまっているのだ。
トラック物流がうまく回るには、トラックの集まる所に待機場を設置しなければならないという、社会のコンセンサスが必要だ。
コメント
コメントの使い方トラックドラーバーは道路上で自分が一番偉いと思っている。
歩道でも歩行者よりも自分のほうが優先と思っている始末。
物流を支えてるから優先とか言うが他の自動車も社会のために働いて交通している。