「技術の位置を認識し、かつ人に愛され信頼できる人間づくりが、最優先されるべき」、1976年、本田宗一郎氏の上記「開校時メッセージ」によりスタートした「ホンダ学園」が、来年(2026年)で設立50周年を迎える。周年記念企画として、同校は学生主体の「モンテカルロ参戦プロジェクト」を発表。以下、メディア向け取材会で発表された内容をお届けします。
文:ベストカーWeb編集部/写真:本田技研工業
【画像ギャラリー】ホンダ学園が佐藤琢磨選手と初代シビックで「モンテカルロラリー」初挑戦!!(12枚)画像ギャラリー「モンテカルロラリー2026」に初代シビックで参戦!!
ホンダ学園が創立50周年の節目に、1975年式初代シビックRSを学生たちが自らレストアして「ラリー・モンテカルロ・ヒストリック」へ参戦する。アンバサダー兼ドライバーは佐藤琢磨選手。約30名の学生が整備・部品調達から現地運営、ナビ対応まで担い、欧州の山岳路2000〜3000kmに挑む。
整備士不足や若者のクルマ離れが深刻化する日本の自動車界。そうした環境で、若者たちが旧車で欧州の超名門ラリーに挑むというのだから、これは応援しないわけにはいかない。
ホンダ学園とは、本田技研工業創業者・本田宗一郎の「技術だけでなく、世界に歓迎される人間を作りたい」という志をもとに1976年に設立されたホンダグループ直系の専門教育機関。
埼玉県ふじみ野市の「ホンダテクニカルカレッジ関東」と大阪府大阪狭山市の「ホンダテクニカルカレッジ 関西」の2拠点で運営され、実践重視の教育により“技術力と人間力”を備えた人材を育成する。
学園はサービスエンジニア学科(2年制)、一級自動車整備学科(4年制)、研究開発学科(4年制)に分かれており、現在の生徒数は約500名(うち約16.5%が海外留学生)。鈴鹿8耐や全日本ラリーへの参加、ヒストリックカーのレストアといった課外活動も充実し、主な進路はホンダ販売会社や整備工場、サプライヤー、ホンダおよびグループ企業(推薦枠あり)。創立50年を節目に、挑戦の文化と技術の伝承を柱に人づくりを強化している。
設立50周年を迎えるホンダ学園は、上述のとおり、2026年2月に欧州(フランス~モナコ)で開催される「第28回ラリー・モンテカルロ・ヒストリック」に出場する。参戦車両は1975年式の初代シビックRSが2台(レギュレーションにより、1977~1986年1月までにWRC ラリーモンテカルロに出場経験のある車両だけに参戦資格が与えられるため)。
学生たちは、レストアから整備、部品調達、さらには現地での運営支援やナビゲーションまでを主役として担う。
アンバサダー兼ドライバーは、上述のとおり、インディ500を2度制した佐藤琢磨選手。国際レースの超一流ドライバーと学生が、旧車を介して本気で世界に挑む。
海外ラリーあるあるの「言葉の壁」の中身…レギュレーションがわからん!!!
このプロジェクトの面白さは“全方位の学び”にある。レストアは教科書どおりにいかない。欠品部品の代替策、オリジナリティの維持、限られた時間と予算のやりくり——つまり、技術だけでなく調達・品質・安全・法規・チーム運営・コミュニケーションまで含む“実社会の総合格闘技”だ。
ホンダ学園は創設者・本田宗一郎の「技術だけでなく、世界に歓迎される人間を作りたい」という志を掲げてきたが、この挑戦はその理念を現代の形で体現している。常務理事は、マニュアルも部品もない“答えのない実習”に取り組む学生の成長への期待を語り、佐藤琢磨も「挑戦のスピリット」と「あきらめない姿勢」を共に磨くことを楽しみにしている。
記者会見で、記者から「苦労している点は?」という質問が飛び、登壇した生徒は「言葉の壁」を挙げていたのが印象的だった。これは単に「フランス語や英語が難しい」という話ではなく、レギュレーションやルールブックの解読がめちゃくちゃ困難だということ(海外ラリーあるあるすぎて記者席の専門メディア勢が首を縦にぶんぶん振っていた)。
「よく調べていくと、参戦車両は日本の車検を取得する必要があると分かり、予定を前倒しして車検取得するなど、毎日いろいろなことが起きています」(参加生徒)
「目標は?」との質問に、生徒や学園側からは「スタートラインにつくこと」、「完走すること」、「無事に帰ってくること」などが挙がったが、会見に同席した佐藤琢磨選手は「やはりぼくはレーシングドライバーですから、ホンダらしく一番を目指します」と語り、会場から静かに歓声があがった。
とはいえモンテカルロヒストリックラリーはエントリーが300台以上。スピードを競うわけではなく(←ここ重要)、各区間に設定された「規定の平均速度=規定時間」へどれだけ正確に合わせられるかを競うレギュラリティ(TSD)ラリー。区間内の計時ポイント(見えない計測を含む)での早着・遅着が減点となり、総減点が最も少ないクルーが勝者となる。
競技内容の説明を受け、これまでのレースとの違いについて聞かれ、ラリー経験ゼロ(!???)だという佐藤琢磨選手に「自信はありますか?」と聞いたところ、「先ほどの”一番”は撤回しなくちゃいけないかもしれません…(笑)。それでも全力で挑むことには変わりません」と、世界を制したレーシングドライバーとして健闘を誓った。
「答え」のない実習で“技術の伝承”と“挑戦の文化”を磨き、次世代モビリティへとつなぐこのプロジェクトは、クルマの未来に確かな希望を灯す。
取材会ではホンダ学園ホンダテクニカルカレッジ関東校の内部見学なども実施されたので、そちらの内容は後日じっくりお伝えします。がんばれ若者!
第28回ラリー・モンテカルロ・ヒストリック開催概要(予定)
主催: Automobile Club de Monaco(ACM)
開催日時:2026年2月1日(日)~2月7日(土)※予定
理事長:モナコを起点に、南仏アルプス山岳地帯を中心とする複数都市(フランス、イタリアなど)
参加車両
条件: ・1911〜1986年1月までの「ラリー・モンテカルロ」に参加実績のある車種または同等仕様のヒストリックカー(Honda車では初代CIVICが唯一該当)
・規定のオリジナリティーと整備状態を保持していること
レース
形式: レギュラリティラリー形式
・約2,000~3,000kmを決められた平均速度で正確に走行
・スピードではなく精度と対応力を競う













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