小さな怪物たちが巻き起こした旋風!! 国産ホットハッチが刻んだ速さの歴史

小さな怪物たちが巻き起こした旋風!! 国産ホットハッチが刻んだ速さの歴史

 日常に溶け込むコンパクトなクルマなのに、走らせると火がついたように速い……意外な二面性がホットハッチの大きな魅力だ。ゴルフGTIが元祖といわれる小ぶりなホットハッチは、狭い道路事情を抱えた日本でおおいに歓迎された。

※本稿は2025年8月のものです
文:岡本幸一郎/写真:トヨタ、ホンダ、日産、三菱、マツダ、スバル、スズキ、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2025年9月26日号

【画像ギャラリー】小ささと軽さがもたらす爽快な速さ!! 鮮烈な印象を残した日本のホットハッチ(16枚)画像ギャラリー

小ぶりで速い! 低価格&ハイスペックにも惚れる

トヨタ スターレットGT(1989年登場)。直4DOHCターボを搭載し最高出力は135psを発生。ジムカーナ選手権などのモータースポーツカテゴリーでは、いまだに現役バリバリで活躍している
トヨタ スターレットGT(1989年登場)。直4DOHCターボを搭載し最高出力は135psを発生。ジムカーナ選手権などのモータースポーツカテゴリーでは、いまだに現役バリバリで活躍している

 ホットハッチの草分けとされるゴルフGTIが出てほどなく、日本でも国内初のホットハッチと呼べるシビックRSが登場した。

 当時はオイルショックで、自動車の性能をアピールすることがはばかられた時代だったため、ホンダは高出力エンジンに5速MTを組み合わせた「RS」の意味を「レーシングスポーツ」ではなく「ロードセーリング」だと説明したという有名な逸話もある。

 オイルショックが一段落した1980年代に入ると、コンパクトカーに強いメーカーから小柄で速いクルマが続々と出てきて、「ボーイズレーサー」と呼ばれて人気を博したのだった。

 ホンダのシティターボ、ダイハツのシャレード・デ・トマソ、スズキのカルタスGTi、三菱のミラージュサイボーグなどが挙げられる。さらに、マツダのファミリアターボ、トヨタのスターレットGT、日産のマーチスーパーターボなどが発売された。

 1990年代に入ってからも印象的なホットハッチがいくつか出てきた。WRCのために生まれたパルサーGTI-Rは、4連スロットルを備えた専用のSR20DETとアテーサと呼ぶ4WDで武装していた。

 さらにはのちにFF世界最速を目指す前の初代シビックタイプRだ。レブリミット8600rpmを誇る自然吸気のテンロクVTECは痛快そのもの。

ホンダ シビックタイプR(初代・1997年登場)。NSXとインテグラに続くタイプRシリーズ第3弾。最高出力は185ps
ホンダ シビックタイプR(初代・1997年登場)。NSXとインテグラに続くタイプRシリーズ第3弾。最高出力は185ps

 2000年代に入ると、走り系のクルマは冬時代を迎え、ホットハッチもなりをひそめていたが、そこに現われたのがスイフトスポーツだ。

 低価格ながら本格的な内容の初代で人気に火がつき、2代目がその評価を不動のものとし、以降も熱烈なファンに支持されている。

 その他のメーカーからも、モータースポーツベースからコンプリートカーまで、さまざまなホットハッチが送り出された。

 なかでもオーテック謹製のマーチ12SRには感銘を受けた。よく回るエンジンに自在に操れるフトコロの深いハンドリングなど、丁寧な作り込みには感心させられたものだ。

 性能の高さではコルトラリーアートがピカイチ。パワフルなエンジンと締め上げられた足まわりで、ガッチリと路面を捉える走りには好印象。限定のバージョンRはさらに凄かった。

 ブーンX4も忘れられない一台だ。ガチな競技ベース車ならではの、日常を無視したかのようなドッカンターボで、勝つためのクルマの形はこうだと思い知らされたものだ。

 Cセグでは、マツダスピードアクセラやハッチバックだった時代のインプレッサのWRX STIがある。いずれも圧倒的な性能と量販モデルらしい高い完成度を誇っていた。

 最近では、なんといってもGRヤリスだ。ほかの多くのホットハッチとは出発点が異なり、もはや別格で究極的な存在。性能面でも日本のホットハッチでは歴代最強に違いない。

●岡本幸一郎氏が選ぶ お気に入りの国産ホットハッチ
・日産 マーチ12SR(2004年)
・トヨタ GRヤリス(2020年)
・三菱 コルトラリアートバージョンR
・ホンダ シビックタイプR(初代)
・マツダ スピードアクセラ(初代)
・スバル インプレッサWRX STI(3代目)
・ダイハツ ブーンX4(2006年)
・日産 パルサーGTI-R
・トヨタ スターレットGT
・スズキ スイフトスポーツ(2代目)

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