ホンダ N-BOXとダイハツ タントは永遠のライバルだ。
昨年11月ついに新型タントが販売トップに立ったかと思えば、翌12月に即N-BOXが抜き返すなど、熾烈な争いが繰り広げられている。
ならばもう決着をつけようじゃないか! ということで、クルマ選びの鬼、渡辺陽一郎氏の助けを借りて、決着をつけることにした。
持ち出したのは両車ともにNAエンジン、FF車の「N-BOX G・EX」と「タントX」。3つの勝負でどちらが優位にあるかを検証していく。同時に乗り比べるとわかることがたくさんあって、非常に面白い対決になった!
●【画像ギャラリー】ともに譲らぬ「生活巧者」!!! ダイハツ タント&ホンダ N-BOXの写真をギャラリーでチェック!!!
※本稿は2020年1月のものです
文:渡辺陽一郎、ベストカー編集部/写真:ベストカー編集部/撮影:茂呂幸正
初出:『ベストカー』 2020年2月26日号
■まずは今回のエントリーモデルをチェック!!!
●N-BOX G・EXホンダセンシング(164万2300円(FF/CVT))
N-BOXはスーパースライドシート仕様(前席セパレートタイプ)のG・EX(FF、NAエンジン)を用意。ホンダセンシング、フルオートエアコン、前席+サイド+カーテンエアバッグ、左側パワースライドドア(右側はオプション)、前席シートヒーター、助手席スーパースライドシートなどが標準の装備充実モデル。コーナリング時の姿勢を制御するアジャイルハンドリングアシストも付く。N-BOXには前席ベンチシート仕様もあり、カスタムでも設定は同じ。
●タントX(149万500円(FFR/CVT))
タントはX(FF、NAエンジン)を用意。360°スーパーUV&IRカットガラス、格納式シートバックテーブル、運転席シートリフター、チルトステアリング、シートヒーター、リアヒーターダクトなどのオプション装備が付いているクルマだったが、現在はそれらがすべて標準装備となる“Xセレクション”が同価格で売られているため、実質そのグレードだと思ってもらえればいい。
前席はベンチシートタイプのみで、先進安全装備のスマートアシストも標準装備となる。
■【勝負1】実用性能の対決…室内 荷室の広さや使い勝手を比べる
軽スーパーハイトワゴンにとって実用性能は何よりも大事。ユーザーは室内の広さや使い勝手、便利さを求めてこの手のクルマを検討するのだから当然だ。
というわけで、まずは居住性、トランクスペース、シートアレンジなど実用性能に絞った対決をした。差のある部分もあればほとんどない部分もあって、ホンダとダイハツの設計思想の違いがよくわかる結果となった。
●シートアレンジの豊富さは?
両車の個性の違いが出てくるのがシートアレンジだ。N-BOXは後席の座面を立てて広大なスペースを生み出せるため(写真①)、後席スペースを第2のトランクとして活かすことができる。
一方、タントは左側センターピラーのないボディ構造と、運転席&助手席ロングスライドを活かしたミラクルウォークスルーが特徴(写真②)。後席に子どもを乗せて、そのまま運転席に移動できる。また、クルマに近づくだけでドアが自動に開くパワースライドドアウェルカムオープン機能も設定している(グレードによる)
●後席の居住性は?
空間の広さは互角。これ以上必要ないほど余裕がある。シートの座り心地はタントがリードする。
●インテリアの質感は?
タントのインパネはスッキリしていて視界も良好だが、こと質感という意味ではN-BOXがリード。
●ドラポジのとりやすさは?
ドライビングポジションは似たようなものとなる。運転席ハイトアジャスターは両車標準、チルトステアリングはN-BOXには標準、タントは“セレクション”なら標準だが、ほかはオプション。
●トランクルームの違いは?
N-BOXは床の低さと開口部の広さが特徴。後席は後ろからワンタッチで可倒。
タントも充分以上の広さを誇る。後席は後ろからワンタッチで倒すことができる
トランクルームの実測値は床が低いうえに全高も高いN-BOXの優位性が明らか。ただ、数センチの差が重要かどうかは使い方にもよるだろう。
●トランクルーム実測値
・N-BOX…開口部の高さ:117cm、荷室の最小幅:90cm、地面から荷室までの高さ:47cm、後席を倒した時の奥ゆき:148cm
・タント…開口部の高さ:104cm、荷室の最小幅:88cm、地面から荷室までの高さ:58cm、後席を倒した時の奥ゆき、135cm
●【勝負1】渡辺陽一郎のチェック!!!
今のホンダの軽自動車はすべて背が高いので、エンジンも上下寸法を大きくできる。補機類も含めて縦長に造られ、前後寸法は短く抑えることで、N-BOXは室内長を拡大した。
さらにN-BOXは燃料タンクを前席の下に搭載するから、荷室の床が低い。全高はN-BOXがタントに比べて35mm高いため、荷室高にも余裕が生まれた。後席を畳んで自転車などの大きな荷物を積む用途に適する。
シートの座り心地は、前席は互角だが、N-BOXの試乗車は、前席がセパレートタイプで運転席の幅が少し狭く感じた。後席の座り心地はタントの圧勝だ。柔軟性が伴い、座面の前側を少し持ち上げたから、大腿部も離れにくい。
タントの特徴は、左側のセンターピラーをドアに内蔵させ、前後ともに開くと開口幅が1490mmに広がることだ。この機能は子育て世代向けに開発され、助手席を予め畳んでおくと、ベビーカーを持った状態で車内に入れる。主力グレードの運転席には540mmのスライド機能が備わるから、子供を後席のチャイルドシートに座らせた後、外に出ないで運転席まで移動できる。
■【勝負2】走行性能の対決…「走り」に関するアレコレを比べる
軽スーパーハイトワゴンは実用性能第一といっても、クルマなのだから「走り」の実力も気になるのは当然だ。特に自分で運転する機会が多いであろうベストカー読者にとっては、それこそ最も気にする部分かもしれない。
制約だらけの軽自動車だけに、走りの性能で明確な差を出すのはなかなか大変。しかし、ここでもやはり両車には意外と明確な個性と違いがあった。どちらが自分の求めているものか、ぜひ参考にしてほしい。
●前席の乗り心地は?
乗り心地はN-BOXが勝る。タントは少しゴツゴツしていてカドのある乗り心地となってしまう。
●後席の乗り心地は?
後席も同様。タントよりもN-BOXが優勢。長距離ドライブの快適性では明らかにN-BOXが勝る。
●エンジンの違いは?
今回試乗したのはともにNAエンジン。N-BOXは58ps/6.6kgm、タントは52ps/6.1kgmでスペックはN-BOXがリードする。
しかし、より低回転で最高出力、最大トルクが出るタントのほうが現実の走りでは俊敏。これにはスロットル設定の違いもありそうだ。回転フィールは互角、エンジン音はタントのほうが少し粗いという印象だった
●視界は?
両車ともにウィンドウが大きく視界は良好だが、細かな違いはある。タントのほうがウエストラインが低く、また、メーターパネルの上方向の出っ張りが少ないので、より視界の広さを感じる。
N-BOXは必要以上の視界の広さより、上質感やエクステリアの大人っぽさ(ウエストラインが高いほうが上級に見える)を重視している印象だ。後席の視界もタントが若干リード。
●ハンドリングはどっちがいい?
ハンドリングのキャラクターは意外なほど異なっている。タントのほうが俊敏で曲がりやすく、N-BOXはソフトなサスペンションとステアリングレスポンスでゆったり走る設定となっている。スポーティなタント、快適性重視のN-BOXという関係で、これもまた選択の分かれ目となる
●実用燃費は?
木更津から編集部までの実燃費を計測した。アクアライン~首都高のルートで、走行時間45分、距離約55km、平均車速71km/h、目立った渋滞もなく有料道路を淡々と走行。結果は「N-BOX:23.0km/L」、「タント:21.9km/L」となった
●【勝負2】渡辺陽一郎のチェック
アクセルペダルを軽く踏んでいる時は、タントが少し力強い。エンジン回転と速度が高まった時は、N-BOXがパワフルに感じる。
タントの最大トルクは6.1kgm(3600回転)で、アクセルを踏んだ時にスロットルが大きめに開く。N-BOXは6.6kgm(4800回転)で、加速が高回転域まで持続する。
走行安定性はタントが少し優れる。操舵に対する反応が自然で、N-BOXに比べて鈍さを感じない。峠道などのカーブを曲がる時も、タントはボディの傾き方を小さく抑えた。背の高い軽自動車では、比較的機敏な部類だ。
一方、乗り心地はN-BOXが快適。路上の細かなデコボコを伝えにくく、ゆったりと走る。エンジンノイズも小さい。タントの乗り心地も、突き上げる粗さは抑えたが、路面の状態を明確に伝える。エンジンノイズも少し粗い。
最小回転半径は、タントが4.4mで、N-BOXは4.5mだから若干大回りだ。タントはメーターパネルの上端が少し低めで前方視界が優れ、サイドウインドウの下端も少し下げたから、側方視界も良好。総じて運転しやすい。
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