触らないことも技術のうち!? プロが辿り着いたメンテナンスの本質 大事なのは異常の言語化だった!!

触らないことも技術のうち!? プロが辿り着いたメンテナンスの本質 大事なのは異常の言語化だった!!

 メンテナンスとは、工具を手に取ることだけを指すのではない。レースの現場と市販車の両方を知るプロドライバーが行き着いたのは、むやみに「触らない」という判断。そして、それこそがクルマの性能と寿命を守るという結論である。数え切れない実体験から見えてきた、走りを決める本当の整備観を掘り下げる。

文:中谷明彦/写真:ポルシェ、ホンダ、ベストカーWeb編集部

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メンテナンスの意味を考える

レースの現場ではメンテナンスが、その日の走りを左右する
レースの現場ではメンテナンスが、その日の走りを左右する

 “触らない”ことも、ひとつの技術である。最初に断っておきたいのだが、私はあくまでプロのレーシングドライバーとして、あるいは開発テストドライバーとして車両走行性能を評価することを生業としてきた。

 いわゆるメカニック、整備士としてのプロではない。自ら図面を引き、部品を削り出すエンジニアでもない。それでもなお、メンテナンスについて語る資格があるとすれば、それは長年にわたりレースの現場に身を置き、車両開発に関わり、メンテナンスによって走りが決定づけられる瞬間を数え切れないほど経験してきたことだろう。

 その経験上、走行性能は設計や素材だけで決まるものではないと考える。また、それが正しく維持されているかどうかで、そのクルマの価値は大きく変わるのだ。

サーキットにつく前に決まっている!? トップチームのメンテナンス

トップカテゴリを走るチームでは、徹底的なメンテナンスが行われている
トップカテゴリを走るチームでは、徹底的なメンテナンスが行われている

 レーシングカーの世界では、車両メンテナンスは特別な行為ではない。基本中の基本だ。どれほど高性能な車両であっても、適切なメンテナンス整備がなされていなければ、まっすぐ走ることすらできない。

 日本のトップカテゴリーを戦う強豪チームであれば、車両はサーキットへ運び込まれる前に、すでにファクトリーで徹底的にチェックされている。

 各部の摩耗、締結状態、アライメント、4輪荷重など。さらに、シュニッツァーBMWのような名門チームでは、サーキット到着後、まずピット内に完全に水平な基準面を作ることから作業が始まる。サーキットのピットは必ずしも水平ではない。

 かつては山の中腹や斜面に設けられた施設も多く、水平基準を持たないままセットアップを行うことは、正確な評価を放棄するに等しかった。世界を転戦するようなトップチームなら、尚さら必要な準備だった。

 水平基準面の上に車両を載せ、ファクトリーで作り込んだ状態が維持されているかを確認する。走行が終われば、その都度そこに戻し、変化を測定し、データ化する。これは今や多くのトップチームでは常識であり、アマチュアチームであっても同様の思想で取り組むチームは少なくない。

 レース車両は膨大な数の部品で構成されている。しかし、それらをすべて交換し続けることは現実的ではない。F1ではコストキャップ(予算上限制度)が導入され、一般のレースカテゴリーでも予算は常に制限されている。

市販車におけるメンテナンスの重要性を振り返る

中谷氏は3.3L仕様の964型911ターボ。3.6Lにさきがけて1991年に登場。
中谷氏は3.3L仕様の964型911ターボ。3.6Lにさきがけて1991年に登場。

 重要なのは、「どの部品が、どの段階で限界を迎えるのか」を正確に見極めることだ。そこにはドライバーのインフォメーションと、メカニックの技術的判断、その両方が必要になる。ピンポイントで有効なメンテナンスができるかどうかが結果を左右する。

 では、一般車ではどうだろうか。私がこれまで所有してきた中で、最も長く付き合ったのが1993年式のポルシェ 911ターボ(タイプ964)である。およそ25年間、このクルマと向き合ってきた。トラブルがあれば必ず正規ディーラーへ持ち込み、メーカー指定の方法でメンテナンスを行う。それを徹底してきた。

 何か違和感を覚えたら、そのまま走り続けることはしない。プロドライバーとして、それは感覚的に許されない行為だ。特に気を配っていたのがオイル管理である。空冷エンジンのポルシェ 964ターボでは、オイルが冷却と潤滑のすべてを担っている。

 その分システムは軽量で、恐ろしいほどの吹け上がりを見せるが、同時にオイル管理を怠れば致命的な結果を招く。このクルマは約1000kmで1Lのオイルを消費した。オイル容量は約11リッター。つまり、1万2000km走ればエンジンオイルは一巡する計算になる。

 私は常に車内に1リッターのオイル缶を積み(ポルシェ純正指定オイル)、500km程度走れば補充し、適正量を維持することを欠かさなかった。

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