EVやハイブリッドなのにエンジン音を創る意味ってなに? いま自動車メーカーに問われる思想とは!?

EVやハイブリッドなのにエンジン音を創る意味ってなに? いま自動車メーカーに問われる思想とは!?

 クルマの電動化が進むいま、かつてのようなエンジン音や排気音は消え、静けさを手に入れたはずだった。しかし、昨今のEV等を見ていると、あえて音を“作る”という選択が続いている。人工サウンドは必要な演出なのか、それとも過去への未練なのか。電動時代の「音」の意味を考える。

文:中谷明彦/画像:ベストカーWeb編集部、BMW、アウディ、ヒョンデ、ホンダほか

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エンジン音の「演出」は必要?

人工音響システム・ASDを搭載したBMW i8
人工音響システム・ASDを搭載したBMW i8

 自動車の電動化時代における「音」の扱いは、自動車技術の本質を問い直すテーマでもあるといえるだろう。2014年、BMW が量販BEVを市場に投入した初期段階、特にi8系モデルにおいて注目を集めたのが、エンジンサウンドを想起させる人工音響システム・ASD(アクティブ サウンド デザイン)だった。

 本来、電気自動車は化石燃料の燃焼を伴わない。したがって吸排気音も爆発音も存在しない。にもかかわらず、アクセル操作に応じてあたかも高性能ガソリンエンジン車を操っているかのようなサウンドが車内外に発せられる。

 車内と車外では音源が分けられ、室内はオーディオスピーカーから、車外はシャシー下部に設置された専用スピーカーから音が放射される。ドライバーのみならず周囲にもその存在を印象付ける設計だった。これは現代のBEVやHEVに見られる歩行者などへの単なる警告音の類ではなく、明確な「演出」だったのだ。

 果たしてそれは必要なのか。BEVの本質的魅力は、静粛かつ滑らかで、即応性の高いトルク特性にある。大柄な車体を、音もなく一気に加速させるあの感覚は、内燃機関とは異なる異次元の走行体験をもたらす。

「音」を必要とするかどうかはクルマ次第?

アウディS4(B8)は5代目でV8からV6へダウンサイジング。エンジン音を電子的に強調するSoundaktorを搭載した
アウディS4(B8)は5代目でV8からV6へダウンサイジング。エンジン音を電子的に強調するSoundaktorを搭載した

 その静寂を、あえて人工的な音で満たす行為は、矛盾を孕んでいるようにも見えた。もっとも、人工音響はBEVに限った話ではない。ダウンサイジングが進んだガソリンエンジン車では、かつてV8が担っていた音響的威厳を、スピーカーで補完する手法が既に用いられてきた。

 排気量縮小によって失われた重厚感を、車内音響で再構築する。説明なく乗れば大排気量車と錯覚するほどの完成度を持つ例もある。さらにアクティブノイズキャンセリング技術の進歩も見逃せない。特定周波数の逆位相音をぶつけ、不要な騒音を相殺する技術は、もはや珍しくない。

 こうした音響制御の蓄積があったからこそ、BEVにおける演出的サウンド生成が可能になったのである。しかし、技術的に可能であることと、それが必然であることは同義ではない。例えば、静粛性を価値とする高級セダンにおいてはどうか。

 かつてV8やV12を搭載しながら、室内ではほとんどその存在を感じさせないことが「品格」とされた時代があった。電動化によって静けさが容易に実現できるのであれば、それを素直に受け入れる選択もあるはずだ。

 一方で、明確なパフォーマンスアイコンとして成立するモデルであれば話は異なる。例えば BMW i8 のように、視覚的にも動力性能的にもスポーツ性を前面に出す車両であれば、何らかの音響的演出は許容され得る。

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「臨場感」という乗り味

ヒョンデのIONIQ 5 Nにはドライバーが高揚感を得られるよう擬似エンジン音を収録した「N Active sound +」が搭載されている
ヒョンデのIONIQ 5 Nにはドライバーが高揚感を得られるよう擬似エンジン音を収録した「N Active sound +」が搭載されている

 ただし、それが単にV8やV12を模倣するものであるならば、未来志向とは言い難い。むしろ高回転モーターや減速機構の機械音を洗練し、意味ある音へと昇華させる方向のほうが、より筋が通ってくる。近年では変速感覚そのものを疑似的に再現する試みも見られる。

 新型プレリュードのS+SHIFTのように、無段変速機であるにもかかわらず、多段ATのようなステップを設け、シフト操作を疑似体験させる手法である。効率だけを追求するなら不要な機構だが、運転という行為の情緒的側面に応えた設計といえる。

 この問題を理解するために、ドライビングシミュレーターを想像してみる。例えば「グランツーリスモ」のような高度なシミュレーターにおいて、もしエンジンサウンドが完全に排除されたらどうなるか。視覚と操作感がいかに精緻であっても、没入感は大きく損なわれるだろう。

 音は単なる付帯情報ではなく、運動を知覚する重要な要素なのである。電動化が進み、自動運転が普及すれば、移動は効率的で静かなものへと収斂していく。バスやタクシー、物流車両にとって、音は可能な限り抑制されるべき対象だ。

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