2026年4月14日、一般社団法人日本自動車工業会(自工会)が2025年度版「乗用車市場動向調査」を公表した。毎年恒例のこの調査、今年は18〜29歳の若年層に関するデータが特に興味深い内容になっている。「若者のクルマ離れ」という言葉はすっかり定着してしまったが、データをよく読むと話はそう単純ではない。クルマへの関心は確かに下がっていて、免許を取る若者も減っている。しかしそれは「クルマが嫌いになった」からではなく、「買えない・持てない環境が整っていない」からだ、という実態が浮かび上がってくる。最新調査でわかった、若者がクルマを買わない理由と事情は何か。データを読み解いていこう。
文:ベストカーWeb編集部、画像:日本自動車工業会
免許を取らない若者が急増中…でも「取りたくない」わけじゃない
まず押さえておきたいのが「免許」の数字だ。今回の調査では、社会人・主運転車なし層(いわゆるクルマを持っていない若い社会人)の免許保有率が「67%」にとどまっていることが分かった。2017年時点ではこの数字が87%であったことを考えると、ここ8年間の変化は小さくない。
では、残りの33%(免許を持っていない若者)はクルマに関してどのように考えているのか。免許を取りたいと思っているのはそのうちわずか15%。大多数は「取るつもりはない」と答えている。免許不要の理由として多く挙げられたのが「車や運転に興味がない」(26%)、「運転に自信がない」(25%)、「事故が怖い」(24%)だった。
ここに現代の若者像が見える。関心が薄れたというより、リスクやコストに対して慎重になっているのだ。
ただし同じ若年層でも、すでにクルマを持っている層(主運転車あり)はまったく話が違う。「車を運転できないと生活できない」「車を運転したい」という積極的な理由で免許を取っており、クルマ関心度も72%に達する。同じ世代でも、「持っている若者」と「持っていない若者」の意識は別世界だ。
参考資料…日本自動車工業会発表「2025年度乗用車市場動向調査について」
「関心なし」でも「欲しい」が3割…数字の裏にある構造
クルマへの関心度(社会人・主運転車なし層)は「28%」で、これは2017年の「43%」から右肩下がりが続いている。見かけ上は「若者のクルマ離れ」が進んでいるように映る。
しかしここで注目すべきは「購入意向」だ。同じ「主運転車なし社会人」の層で、「クルマを買いたい(買いたい+まあ買いたい)」と答えた割合は32%。関心があると答えた28%より多い。これは何を意味するのか。
一番納得できる背景事情は、「特にクルマが好きというわけではないけれど、必要になったら買う」という、きわめて実用本位な層が多い、ということだ。趣味としてのクルマ文化への関心は薄れても移動手段としてのクルマへの需要は残る。
一方、買いたくない理由の上位はわかりやすい。「買わなくても生活できる」(26%)、「車に対して興味がない」(19%)、「運転に自信がない」(19%)の順。都市部では「買わなくても生活できる」は事実であり、これは選好の問題というよりインフラの問題でもある。
若者のファーストカーは「200万円以下の軽」…でも家族の援助なしでは無理
実際にクルマを持っている若年層(主運転車あり)が「初めて買った車」のデータは、若者市場の核心を突いている。
初めて保有したクルマのボディタイプは軽自動車が36%でダントツ1位。次いでRV系20%、小型車14%と続く。価格は「~100万円」が16%、「~200万円」が31%で、合計47%が200万円以下の車をファーストカーにしている。加重平均でも213万円だ。
そして見逃せないのが資金援助の実態だ。初めてクルマを買ったとき、52%が家族からの援助を受けていた(うらやましい)。特に学生層では73%が援助あり。自力で買える若者はかなり少数派なのだ(がんばれ!)。
これが購入意向層(今後買いたい若者)になるとさらに顕著だ。欲しい価格帯は「~100万円」16%、「~200万円」32%で約48%が200万円以下を希望。そして56%が家族からの資金援助を期待している。
若者がクルマを買うには、200万円以下という価格帯と、家族のサポートという二つの条件が揃ってはじめて成立する。裏を返せば、200万円以内で買える魅力的なクルマが少ない現状が、若者のファーストカー取得のハードルを上げているとも言える。
欲しいのはRV系…新車志向も意外に強い
「買いたい車」のボディタイプ(購入意向あり層)を見ると、RV系が28%でトップ。大・中型車21%、軽自動車18%が続く。男性はRV系34%、女性は軽自動車27%と、性別で傾向が分かれるのも特徴的だ。
エンジンタイプについては、ガソリンエンジンを希望する層が51%と過半数を占める。HEV計が39%で追い、BEVは8%にとどまる。若者世代でも「まずはガソリン、もしくはHEV」が現実解という構図は、全世代と大きく変わらない。
また、新車か中古車かという問いでは、73%が「新車希望」と答えている。「若者は中古車でいい」という先入観があるかもしれないが、データはそれを否定する。むしろ、予算が許すなら新車に乗りたいというのが若者の本音だ。まあ気持ちはわかるが、若いうちは中古車もいいぞ(体験談)。
「いつ買うか」は貯金次第…社会人3〜4年目が勝負
購入予定時期として最も多いのは「社会人になってある程度貯金ができたら」の33%。次いで「子供ができたら」(16%)、「早い時期に社会人になってから」(12%)と続く。
社会人になってすぐに買う余裕はない。でもある程度落ち着いたら買う。このタイムラインが見えてくると、新社会人から3〜5年目の層が主戦場になることがわかる。
初めてクルマを持ったタイミングも「学生の間」が33%、「社会人になってすぐに」が41%と、入社前後が最も多い。このタイミングを逃さない商品・価格・プロモーション設計が、若者市場開拓のカギになる。
「クルマ離れ」ではなく「クルマ格差」が進んでいる
今回の調査が示しているのは、「若者がクルマを嫌いになった」のではなく、「クルマを持てる若者と持てない若者が分かれた」という現実だ。
地方と都市で状況は大きく違い、首都圏の若者(主運転車なし社会人)の購入意向は25%、地方圏は37%と12ポイントの差がある。購入非意向の理由「買わなくても生活できる」は都市のインフラが充実しているほど当てはまるが、地方では依然としてクルマは生活必需品だ。
若者はいつの時代も、欲しいものがあれば貯金し、借金し、親を頼る。問題は、「欲しい」と思える魅力的な200万円以下の選択肢が、いま日本市場で十分に揃っているかという問いだ。
本企画担当編集者(アラフィフ)が若かった頃と比べると、若者の「クルマとお金」を取り巻く環境ははるかに厳しい。スマホ代やPC代(+インターネット代)は必須だろうし、ネトフリやアマプラには加入しておきたいだろう。できればYoutubeの有料プランやAmazon Musicだって入っておきたいはず。そのうえで、いまから約30年前、1997年に初代シビックタイプRが登場した時の車両本体価格は199万8000円(税込)だった。いま調べ直して改めて息をのむ。現行型のシビックタイプRは約618万円(税込)ですよ。3倍以上。
いやもちろん、当時のタイプRと現行型では、走行性能も安全装備も快適装備も、そもそも車格もまったく別物なのは重々承知で、そのうえでこの「現実」をふまえて時代とクルマと若者の環境差は深刻に考える必要がある。
RV系に憧れ、新車を望み、でも予算は200万円まで──。そのニーズに応えるクルマが出てきたとき、止まっていた若者市場が動き出す可能性は、まだ十分ある。周囲にクルマが好きな若者がいたら、ぜひやさしくしてあげてください。業界の宝、日本自動車界の貴重な資産です。
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