5月9日に発売された新型ミライースは、発売後1カ月で月販目標2倍超の2万台を受注。上々の立ち上がりをみせている。
ミライースといえば、低燃費・低価格が売りの実用車だ。
いい実用車は「これでいいじゃん」と思わせる魔力に溢れているもの。「この価格で、この燃費・性能なら、これで充分じゃん」と思わせるところに“いい実用車”たり得るバランスの妙がある。
翻って新型ミライースは“いい実用車”なのだろうか?
文:ベストカーWEB編集部/写真:茂呂幸正
室内の割り切りで加速する『必要充分感』
まずは室内に足を踏み入れ、じっくり観察する。——ぐうの音も出ないほどの割り切り、実に潔い空間だ。
見よ、このヘッドレスト一体式シートという潔さ!
先代では独立したヘッドレストを持つフロントシートを採用していたが、新型では軽量骨格のヘッドレスト一体型シートを採用。
このほか、インパネやガラスの薄肉化、樹脂外板パーツ、樹脂製のガソリンタンク(従来は金属製)の採用と併せて、内外装のパーツだけで30kgの軽量化を実現したという。
が、それをさらに上回る割り切りを見せるミライースが眼前に飛びこんできた。
最安84万円の衝撃にミライースの真髄を見た!
飾り気のないこちらのミライースは、お値段なんと84万2400円という衝撃の安さを誇る「B」グレード(ちなみにアルトの最安は「F」の84万7800円)。
売れ筋ではないが、このグレードにこそ、ミライースの割り切りの真髄を見た思いだ。
なにせ、鉄チンホイール剥き出し。車内に入るとエアコンはマニュアルだし、リアシートにはヘッドレストすらない。
極めつけにリアウインドウは開閉できない、いわゆる“はめ殺し”タイプときた。
が、しかしだ。この車を買うであろう人や会社の立場を考えると、「これで充分」なのだ。
加えて、アルトの最安グレードより安いうえ、トランスミッションは誰でも使えるCVT。アルトの最安グレードは5MTだから、その点でもさらに「これで充分度」が増す。
緊急自動ブレーキのスマートアシストⅢが付いた「B“SAⅢ”」でも90万7200円とコスパ抜群だ。
これだけ割り切っていると、もはや「これ以上の何か」を求めるのはナンセンスではないのか? という思いさえしてくる。
では、実際に走らせてどうか? 先代では、その非力さが気になったのだが……。
「燃費据え置きで走りが進化」は本当?
新型のJC08モード燃費35.2km/Lという値は、先代ミライースと変わらない。
新型ミライースは先代比で約80kgの軽量化を実現したのに、なぜ燃費は上がっていないのか? この疑問に対してダイハツの開発者はこう答える。
「例えばショックアブソーバなどのパーツそのものも変えていますし、足回りやエンジンのセッティングも変わっています。(軽量化したぶんを)走りに振り向けたからです」
実際に走ってみると、確かに先代でネックとなっていた出足の悪さは、かなり改善されていた。
先代は、信号待ちからの発進や高速道路の合流など、アクセルを踏んでしばらくしてから『1テンポ以上遅れて加速が着いてくる』イメージだったが、新型ではその遅れが『0.5テンポくらい』まで改善されている。
それを裏付けるように、データでは40〜80km/hの追い越し加速時間が、先代の10.4秒に対し、新型は9.8秒と0.6秒改善しているという。
強いて言えば、ライバルのスズキ アルトと比べると、まだ多少加速に『もっさり感』があることか。エンジンの静粛性はミライースのほうが上です。
そして、乗り心地。実際に石畳の上を走ってみると、謳い文句の「上質でフラット」は言い過ぎにしても、車内で感じる突き上げ感は、かなり減少している印象だ。
さて、前述のように軽量化したぶんをカタログ燃費向上に充てなかった新型ミライースだが、その燃費は充分か?
実際に街中を走ってみると、その燃費は25km/L程度。先代ミライースやアルトエコと比べても遜色なし。
仮にカタログ燃費が0.5km/L程度上がっていたとしても、実燃費の違いはほとんど見られない。
しかも、新型ミライースのエコカー減税は重量税/取得税とも『免税』だ。
ユーザーにとって、カタログ燃費が先代から上がっていないことによるデメリットはない。
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