カーボンパーツ、アルミ削り出しパーツを得意とする技術者が持った壮大な夢。それはあのブリッテンのような、エンジンからフレームまでオールオリジナルなマシンを製作することだった。しかも今は途絶えてしまった2ストロークで、しかもコンペモデルとしてではなくユーロ5+規制にも対応する公道マシンとして! こうして生まれた「VINS(ヴィンス)」がとうとう日本にやってきた。
●写真:小川裕之
エンジンも車体もオリジナル「VINS(ヴィンス)」って何者だ?
あのVINSがとうとう! と、この記事を前のめりで読み始めた人は相当なマニアであり、一般の人にとっては聞いたことも
ないメーカーだろう。
VINSは車体とエンジンの設計を担当した代表のヴィンセンツォ・マッティアさんと、ニコラ・トレンターニさん、ジュゼッペ・エヴァンゲリスタさんが率いる会社で、四輪のカーボンパーツの製作を主な生業としている。
代表のヴィンセンツォさんはフェラーリの社員だった2013年から小さなガレージでオリジナルマシンの開発を手掛けており、これが本格化したのはニコラさん、ジュゼッペさんが加わった翌2014年。今につながるVツインエンジンが形になり、車体もそれまではカジバ・ミトをベースとしていたものから完全なるオリジナルへとシフト。2017年にはVINS社が設立されプロジェクトが本格的に始動したのである。
ヴィンセンツォさんはフェラーリの市販車ではなく、フォーミュラ部門の仕事をしていたため、カーボンパーツやアルミ削り出しパーツ製作を得意とし、また空力のノウハウも豊富。現在のVINSではこれらパーツ類を製作できる様々な機械を持つことで、アストンマーチンやアルファロメオ、アバルトなどの純正カーボンパーツ製作を担っている。こうした安定した運営があるからこそ、(趣味ともいえる)バイク制作にじっくりと取り組むことができているのである。
VINSの核となる2ストロークの250cc・Vツインエンジンは実は数年前にすでに完成しており、イギリスの「ランゲン」というメーカーへ提供されていた。そちらはヴィンスが得意とするカーボンのモノコックフレームとは違い、アルミのパイプフレームという構成で、100台の限定生産を達成。この100機のエンジンを製作するのに時間を要してしまい、本家VINSのデリバリーが遅れてしまったという都合がある。本家VINSの「ドゥエチンクワンタ」は、こうしてやっと走り出したのだ。車体価格は日本代理店のモータリスト扱いで990万円(税込)となっている。
公道で楽しむための2ストロークスポーツ
VINSは会社の名前であり、ここに紹介する機種の名前はイタリア語で250を意味する「ドゥエチンクワンタ」。もちろん、ランゲンのフレームに搭載されていてもその魅力は健在なのだろうけれども、VINSとしてはカーボンモノコックフレームと、ホサック式と呼ばれる軽量なフロントサスペンション、フローティング構造のリアサスペンションなど独自の思想と同社が持つ技術を最大限に投入したこのドゥエチンクワンタこそが世に出したかった形。レーシングマシンではなく、バイクエンスージアストが、公道で合法的に楽しくスポーツするためのモデルである。
ランゲンにも搭載されたVツインエンジンは、GP250時代の終盤に活躍したアプリリアの250ccGPマシンに搭載された「ロータックス258」をベンチマークとしており、
初期の75psほどの仕様からアップデートが重ねられ市販版は83psまで高められている。Vツインは車体前方に向かってパックマンのように口を開く形で搭載され、Vバンクの間の吸入口へと新気が直接入っていく仕組み。スロットルはギロチンバルブなどと呼ばれる、左右から引き戸のように閉じるスロットルバルブを採用し、その先にリードバルブがある構成。アクセルにはアクセルワイヤーがあるが、それはスロットルバルブのところで電子制御スロットルへと変換され、ドライバビリティはもちろんのこと規制対応などのための細かな制御が可能となっている。
インジェクターはリードバルブと一体化しており、燃料噴射はリードバルブ中央から行われるため、リードバルブを通過するのはあくまで吸入空気のみ。2ストロークオイルの分離給油システムは4つの電子制御オイルポンプを持ち、リードバルブ付近に設けられた気筒当たり2本の専用通路から供給される。しかもそのオイルタンクはラジエター横にほぼ一体化して設置され、オイルの温度・粘度を安定させている。こうして燃料、空気、オイルを完全に分けて管理することで最新の規制に対応しながらも高い動力性能を確保。さらに非常に優秀な低オイル消費(約8500km/Lとのこと!)や燃費も実現し、規制対応に大いに貢献しているのだ。
V型2気筒エンジンは2軸クランクシャフトで、しかも2気筒は同爆だ。上側のシリンダーは前方向に、下側のシリンダーは後ろ方向に回転し、それぞれがギアで連結されて同時に爆発する。これにより振動を打ち消しあうためバランサーも必要としないという考え方だ。また2軸というのはエンジンをスリムにできるため前面投影面積を減らすことやバンク角を稼ぐといった視点からも有利で、市販車ではあまり多くはないかもしれないものの、競技用2ストマシンでは広く使われてきた方式だ。
排気は特に上側シリンダーのチャンバーがなるべくまっすぐ出せるようにと、フレーム後ろ側はほぼ空洞とし、リアサスペンションは横向きに配置している。また、シリンダーがVINSのオリジナルとなる市販モデルでは排気ポートのスタッドボルトを2点→3点留め構造として密着性を高め、より安定した性能と信頼性を得るという。

VINSオリジナルの2軸クランク・90度Vツインは54mm×54.5mmというボア✕ストロークから249.5ccの排気量を得る。1次振動はゼロのため、バランサーは装備されない。試乗車はヤマハYZ125のシリンダーと鼓型の排気デバイスをそのまま用いているが、市販版はVINSオリジナルシリンダーにコスワース製ピストンとなり、排気デバイスもホンダのRCバルブタイプとなる予定だ。

スロットル系はエンジンVバンクの中央に配され、車体前方から取り入れた空気を一直線にクランクケースへと送り込む。効率の良さを見た目からも感じさせるレイアウトだ。フレームだけでなく、エンジンにもスイングアームピボットを備える。

今回の試乗は混合ガスで行ったが、4つのデロルト製オイルポンプを電子制御することで驚異のオイル燃費を達成し、ユーロ5をクリアする先進のオイル供給システムも特徴。2つのオイルタンクはラジエター両脇に置かれ、オイルの粘度や温度を最適にコントロールする。
性能と規制対応においてもう一つ大切だったのは冷却能力。ラジエターはエンジン上部に位置するのだが、容量は意外と少ない。しかしここに効率的に走行風を流すことができるのはほぼ空洞となっているカーボンフレームのおかげだ。フレームはホサック式のフロントフォークとピボット部を繋ぎ、強度が必要なところはかなり分厚く、そうでないところは極力薄く作られている。エンジンマウントもピボット部とホサックフォークに接続する部分の2か所のみ。
走行風はカウル前方の大きなインテークから直接ラジエターに当たり、そのまま後方へと排出されるのだが、フレーム後方は負圧になるように設計されているため、ラジエターを通る流速は高く、とても効率的に熱を後方へと引き出していくのだという。真横からその流れを見ると、排気チャンバーやジェットエンジンの仕組みのように、囲われた形状の中の空気の流れを上手にコントロールする思想が伺える。同社は「アメリカズカップ」を戦うカタマラン(双胴船)のデザインに大きく影響を受けたというが、なるほど、こういうところではこれまでのバイクとは全く違うアプローチを見る気がする。

モノコックフレームは競技用ヨットに使われる素材や技術を用いたというドライカーボン製。フロントフォークはホサック式で、リヤショックは4輪フォーミュラカーに着想を得たという横置きの両押し式。エンジンだけでなく車体も独創性の塊だ。

ストリップだと直線的な吸排気レイアウトがよく分かる。ちなみに青✕ピンクのカラーリングは、VINS創業者のヴィンセンツォさんがリスペクトするブリッテン(ニュージーランドの個人が製作した伝説の完全オリジナルレーサー)へのオマージュで、製作者である故ジョン・ブリッテンの遺族にも使用許可を得ているという。
試乗車はランニングプロトタイプ
初めてVINSという名前を聞いた読者でもおおよそこのバイクの成り立ちはご理解いただけたかと思う。試乗記に移る前に少しだけスペックのおさらいをしておこう。
エンジンは文中で83psまで高められたと書いているが、試乗が叶ったこの車体はランニングプロトタイプという位置づけで、75ps仕様となっている。またすでにテストを重ねているため信頼性は確保されているが、1~2速においては10000rpmでレブリミッターが作動し、3速以降で本来のリミットである1万2300rpmまで回すことができる仕様。さらにテストが行われてきた欧州と日本の気温・気圧の違いを鑑みて、試乗時は自慢の電子制御式分離給油システムを封印し、50:1の混合ガソリン仕様とされていた。
重量は公式には105㎏。カーボンモノコックフレームをはじめ、スイングアームもフロントフォークもホイールも全てカーボンなのだから軽さは群を抜いている。ただこの車体はランニングプロトという性格上様々なセンサー類、ロガー類が装備されているため完全走行状態で122㎏となっている。
ミッションはカセットタイプの6速、
逆シフト仕様。チェーンはMoto3同様の415サイズのシールレスチェーン。ブレーキはホタ・ホアン社製がついているが、市販仕様ではブレンボに変更される。またその他細部についても完全ハンドメイドゆえに細かな注文、設定には柔軟に対応できる体制だ。

前後のカーボンホイールは南アフリカのBST製。ブレーキ周りはスペインのホタ・ホアン製だが、こちらは市販時はブレンボ製コンポーネントに変更予定。タイヤサイズは前120/70ZR17・後150/60ZR17で、試乗車はミシュランのパワーカップEVOを履く。

上側のチャンバーはテールカウルにぴったり収まる。市販版では規制対応のために触媒が備わるが、試乗車はイタリアで一度登録された車両のため、触媒レスでの登録が可能となっている。ABSも装備されないため、新車登録の際は簡易的なABSを備えて登録されるという。
モダンな車体に燃料噴射&同爆の2スト250
押し歩きで「軽!」となるのだが、それは車重がそもそも軽いことに加えてマスの集中、そしてホイールベアリングにダストシールがついていなかったり、シールレスの細いチェーンがついていたりと、そういった部分ではコンペモデルと似た仕様となっていることも大きい。ハンドル切れ角の少なさ(現車は左右15°で、量産車は倍の30°の予定)含め市販車ではなくレーサー感はとても高い。
またがるとかなり腰高で、バイクの構成がこういう風になる前に国産の2ストスポーツってなくなっていたのだな、と改めて思わせられた。というのも、国産の2スト勢はみなシートが低くコンパクトな90sポジションだったのだ。対するドゥエチンクワンタは現代のSSモデルのように高いシート高と低いハンドルを備え、そのこともあってかつての国産2ストに比べると全体的に一回り大柄に感じられた。こんなモダンなポジションで2ストモデルに乗るということ自体が最初は違和感があったのだった。

シートは高く、ハンドルは低く開いているためライポジはかなり前傾するスポーティなもの。しかし車体が超細身で足を真っ直ぐ下ろせるため、ライポジのキツさほど足着き性は悪くない。(またがりライダーは身長170cm・体重70kgの編集部松田)
これだけ軽いのに始動はセルでしかも始動性も良好。圧縮比が高いような弾ける排気音でアイドリングする。クラッチを繋ぐと低速域ではハンドリングにフリクション感があり、特にUターンなどでは意識的にハンドルを切る感じがあった。ただ走り出すとその感覚は消え素直なハンドリングになる。
独特な構成の前後サスだが、これはいい意味で違和感がない。これだけ高い位置にライダーを座らせているのに、パタリと寝てオーバーステアになってしまうようなこともなかったし、逆に曲がらないということもなく極めてニュートラル。あえて言うならばもっとペースを上げてフロントを積極的に使いたいと思った時、もう少しフロントからのインフォメーションが欲しいと思う場面はあった。フロントが路面をしっかりと捉えている感覚、あるいはタイヤをしっかりと路面に押し付けている感覚が希薄なことがあり、タイヤの空気をもう少し抜きたい、もしくはもっとしなやかなタイヤ銘柄に交換したい、と思う人もいそうだ。
それでもこのバイクを楽しく乗ろうと思ったら、少し腰を引いて乗ると良いことに気づいた。リアサスの動きはわかりやすく、リアタイヤを中心に乗ったとしても旋回性が引き出せないということはなかった。しばらく乗っているうちに、腰高なポジションやレーサーライクな生い立ちとは裏腹に、意外とフレンドリーで許容度の高い乗り物なのではないかと思い始めたのだ。
軽量さや空力などの理由から採用されたホサック式フォークだが、BMWのテレレバーのようなその仕組みはスポーティというよりは包容力のあるハンドリングにつながるのではないか…。そしてBMWがスポーツモデルにおいてはテレレバーをやめてテレスコピックにしていったことを考えると、今のスポーツバイクへのアプローチとしては、ホサック式はレアなのかもしれない、しかしそのシステムこそがこの包容力を生んでいるのではないか、などということも考えた。もっとも、それでも敢えてホサック式フォークでチャレンジすることに意味があるわけだが。

操舵と衝撃吸収の機能を切り分け、テレスコピック式フォークの構造的弱点を解消しよう…というのがホサック式と呼ばれるフロントサスペンションのねらい。構造的には4輪のダブルウイッシュボーンサスに近く、上下2本のアームでフォークを支持している。理論的には制動時にサスペンションが沈まないため、フルブレーキングをしても路面の追従性やサスペンションの衝撃吸収機能が失われないのがメリット。

作動の図解。スイングアームの上下運動を受けた三角形のリンク(=車体に固定されている)が、テコの原理でショックユニットを左右から押す。チャンバーレイアウトの自由度向上や、フレームに衝撃を受けるための構造が不要となるため軽量化が可能などのメリットがある。ホンダのユニットプロリンクやスズキのフルフローターの発展型とも言える?
250cc以上あるのでは?! 全域で力強い同爆エンジン
エンジンはアイドリングのすぐ上からモリモリトルクだ。同爆というのが効いているのだろう、1発1発の推進力が強く、しかも圧縮比が高いようなスタッカートの効いた爆発感がドラマチックだ。4000rpm辺りからは本当に力強く、250㏄以上の排気量があるかのような頼もしさがあった。本気でパワーが盛り上がり始めるのは8000rpmから先なのだが、ココも2ストらしく二次曲線的に突然パワーが解放されるというよりは、もっと直線的に、右肩上がりにパワーが湧き出てくる感覚だ。
ただ8000rpmから先は振動もかなりのもの。2本のクランクが逆方向に回転することで振動を打ち消しあうとされているが、エンジンから発せられる振動がモノコックフレームの中で共鳴して増幅されるような感覚があり、8000rpm以上を維持して走るのはなかなか負担が大きい。またその領域ではスロットルに対する反応も敏感で、ドン付き感を和らげるためにクラッチを滑らせたりする必要があった。
3速でしっかりレッドまで回し切れば確かに速い。ただ中回転域のトルクフルな特性を理解できれば、そんなに回さなくてもスイスイ走れることにも気づいた。高めのギアでもアクセルを大きめに開ければトルクに乗せてなかなかスポーティに走れてしまう。パワーバンドに入る所が唐突ではないし、高めのギアを使っていればドン付きも気にならない。あまり構えなくとも、流す程度の走りでも楽しめるのだ。
「意外と優しいじゃないか」と思い始めたときに、その感覚がフレームから受けている印象とリンクした。腰高でレーシーかと思ったら意外や包容力のあったフレームと足周り同様に、エンジンも2ストらしくギンギンにパワーバンドを維持しなくとも、豊かな中速域トルクをつかって優雅にさえ乗れてしまう。その二つの特性がうまく絡まりあって、ドゥエチンクワンタは現代の、公道における2ストスポーツの形を提案しているのではないだろうか。
NSRとの比較で見える、30年という時間の差
今回、ドゥエチンクワンタの比較用としてMC21型のホンダNSR250Rを現場に持ち込んだため、同軸で語っていいのかどうかはわからないが、その印象の違いを記してみよう。

比較したMC21型NSR250Rは1992年型。エンジンはノーマルながらチャンバーを社外品に交換し、ダイナモ上で約63ps(クランク軸)を発生している個体だ。ちなみにホンダの公式スペックは最高出力45ps・装備重量は151kgだ。
ドゥエチンクワンタの後に乗ったNSRは「工業製品」という感じが強かった。すべての操作がスムーズで振動も少ない。エンジンのかかり、吹け、回り方、すべてにおいてスムーズで、必ずしも丁寧に付き合わなくても大丈夫そうな感覚とでも言おうか。ドゥエチンクワンタで通勤やロングツーリングに出かける人はまずいないだろうが、NSRならばそういったシチュエーションも十分にこなす、そんなイメージ。ライダーも一部のプレミアム層をターゲットにするドゥエチンクワンタに対して、基本的には大衆向けの汎用性を持ったNSRといった感覚だろう。
車体はNSRの方が圧倒的にコンパクト。シートが低くハンドルが近く、写真を見ていただければわかるが、身長185㎝の筆者だといろんなところがはみ出している。シートの低さからくる路面の近さが90sな運動性を強く印象付けてくるのも特徴だろう。昨今の高い重心位置からペタンコ!と一気に寝かすのではなく、ライダーは低いところにいてコロリコロリと向きを変える感覚は、ドゥエチンクワンタから乗り換えるとまるでNチビ(NSR50)かのようだった。どちらの特性がいいとは言わないが、同じ2ストVツインエンジンを採用していても30年でこれだけ車体づくりの考え方は変わったのだな、と実感した次第だ。
NSRのエンジンはフリクションの少なさも魅力。パワーバンドを維持するためにギアを繋ぐにあたり、スロットル操作に忠実にプンップンッ!とタコメーターが躍る。パワーバンドでも振動は少なく、その領域をいかに維持するかに楽しさがあった。ただパワーバンド以前とパワーバンドに入ってからのパワー感が大きく違うため、速く走るためにはパワーバンド維持は必須。ドゥエチンクワンタのように高いギアでズボラ運転をしていてはグモモッと失速してしまう場面もあった。
ただエンジンの味付けについてはあくまでそのバイクが目指したものの違いだろう。先ほどNSRは工業製品だと書いたが、工業製品でありつつもサーキットではライバルを確実に撃墜しなければいけない使命を背負っていたのに対し、ドゥエチンクワンタはそもそもライバルもいなければ、サーキットではなく公道で楽しく乗るために作られたバイクなのだ。2台の性格の違いを考えるとまさにその違いだと実感する。
もし今、ホンダが改めてノビノビとNSRを作るのならば、今やサーキットでのパフォーマンスを求める必要はないのだから、もしかしたらドゥエチンクワンタのようなフラットでトルクフルな特性になるのかもしれない。
1点、30年の進化を感じたのはギアボックスだ。NSRが名車であることに間違いはないが、ミッションのタッチはさすがに30年前という感覚が否めないのに対し、ドゥエチンクワンタのカセット式ミッションは本当に精密で、短いストロークでカチカチッとシフトチェンジが可能。シフトミスやギア抜けは一度もなく、その好印象はNSRと比較したことでさらに更新された。
2台を直接比較することがナンセンスなのは重々承知の上で、時を超えた2台の2ストVツインを同時に試乗したのは興味深い体験だった。
「今」作ることの難しさ
エンジンをイチから作るのは難しい、ということは今回の試乗会にて再三言われたこと。ましてや個人で、となると一層困難だろう。メーカーでも一度作ったエンジンをなるべく長く使ったり、多機種展開したりしているところを見ると、その通りなのだと思う。
一方で戦前のイギリスや戦後の日本では町工場に毛が生えた程度の規模のメーカーが、それぞれの考え方で様々なエンジンを作り出していたし、ヴィンスが尊敬するブリッテンのように過去に個人レベルでエンジンが作られたこともあった。ただそれは、まだ環境規制など存在しなかったころであるし、戦前戦後のエンジンなど発動機の延長線上のものも多かったはず。またブリッテンは競技用車両という性格上、縛りも少なかったはずだ。
一方でVINSは、今やユーロ5+という非常に厳しい環境規制がある中で、2ストロークでちゃんと合法的に公道で走れるバイクを作ろうというのだから「エンジンを作るのは難しい」の中でもけた違いに難しいことにチャレンジしているといえ、その心意気を買いたい。
まずはデリバリーの開始を歓迎するが、どうやらVINSはここで終わるつもりはないらしい。将来的にはマン島TTレースにも出場したいという願いもあるし、そしてさらに別のエンジン形式も構想はあるというのだから楽しみだ。いちエンジニアが作り上げたアート作品のようなドゥエチンクワンタ、2026年にスタートラインに立ったといえよう。これからどのような伝説を紡いでいくのか、楽しみである。

右がエンジンと車体設計を担当するVINS代表のヴィンセンツォ・マッティアさん。中央は車体全般を担当するニコラ・トレンターニさん。左のジュゼッペ・エヴァンゲリスタさんはVINS社のオペレーション全般を担当する。今回の国内試乗会が実現したのはヴィンセンツォさんと、日本輸入元であるモータリスト代表・野口英康さんの個人的な交流も大きいそうだ。
VINS DUECINQUANTA・主要諸元
・軸間距離:1,380mm
・シート高:ー
・装備重量:112kg(ガソリンなし)
・エンジン:水冷2ストローク クランクケースリードバルブ V型2気筒 249.5cc
・ボア✕ストローク:54mm✕54.5mm
・圧縮比:13.5
・最高出力:83HP/11,700rpm(公道仕様は75HP)
・最大トルク:ー
・燃料供給:低圧セミダイレクトインジェクション(ポート噴射)
・燃料タンク容量:10L
・変速機形式:常時噛合6速リターン(カセット式。ギヤ比はカスタム可能)
・車体形式:カーボンファイバー製モノコック
・Fサスペンション形式:ホサック式(アンチダイブ/キャスター角可変)
・Rサスペンション形式:二重作動式・横置きフルアジャスタブル
・ブレーキ形式(F/R):ダブルディスク(300mm)/シングルディスク(220mm)
・タイヤサイズ(F/R):120/70ZR17 / 150/60ZR17
・最高速度:210km/h(スタンダードのギア比)
・0-100km/h加速:3.8秒(スタンダードのギア比)
・燃費:16km/L(WMTCスタンダード3モード)
・販売価格:990万円(税込)※詳細はモータリストに要問い合わせ
モータリスト:https://motorists.jp/
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/571592/
【新車試乗】最新排ガス規制をクリアする2ストローク! 250ccで85ps「ヴィンス・ドゥエチンクワンタ」を公道インプレッション【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery3/571592/572824/


























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