「ちょっと考えます」と言って商談を後にした客に、電話をかけるべきか、かけないでおくべきか。かつては当たり前だった営業電話が、今の時代には迷惑行為になりかねない。変わりゆく自動車営業の現場を考える。
文:佐々木 亘/画像:Adobe Stock(メイン画像=WavebreakMediaMicro)
【画像ギャラリー】クルマ買う時こんな経験ない!? 昔と今でこんなに違う「ディーラー商談」のリアルを見る(8枚)画像ギャラリーかつて「電話をかけない営業」は失格だった
一昔前の自動車販売の世界では、電話をかけない営業マンは半人前扱いされていた。商談を終えて帰った客には、その日のうちに「本日はありがとうございました」と電話を入れる。翌週にはキャンペーンの案内を口実に再度連絡する。契約に至らなかった客のリストは営業マンの財産であり、根気強く電話をかけ続けることこそが、成約への王道とされていたのだ。
実際、この手法は一定の成果を上げてきた。人は一度話を聞いた相手からのフォローがあると、多少なりとも心が動くものだ。特に大きな買い物であるクルマの購入においては、背中を押してくれる存在の有無が、決断のタイミングを左右することも少なくなかった。電話営業は、非効率に見えて、実は理にかなった手法でもあったのである。
令和の消費者は「電話」そのものを警戒する
しかし時代は大きく変わった。若い世代を中心に、知らない番号からの着信そのものに強い警戒心を抱く人が増えている。特殊詐欺や迷惑電話が社会問題化するなか、営業電話とそれらを瞬時に見分けることは難しく、「知らない番号には出ない」という行動様式が定着しつつある。
加えて、情報収集の主戦場がインターネットに移ったことも大きい。今の消費者は、来店前にメーカーサイトや口コミサイトで相当量の情報を仕入れており、「営業マンから電話で背中を押してもらう」という体験そのものを求めていないケースが多いのだ。
むしろ、こちらのペースを乱されることへの不快感の方が先に立ってしまう。電話がかかってきた瞬間に「押し売りされるのでは」という警戒スイッチが入ってしまえば、それまで良好だった商談の印象すら損なわれかねない。
【画像ギャラリー】クルマ買う時こんな経験ない!? 昔と今でこんなに違う「ディーラー商談」のリアルを見る(8枚)画像ギャラリーそれでも電話が効く客層は確実に存在する
とはいえ、電話営業がすべての客層に通用しなくなったわけではない。特にシニア層においては、今でも電話でのやり取りに一定の安心感を覚える人が多い。文字でのやり取りよりも、直接声を聞いて相談できる方が信頼を感じるという価値観は根強く残っている。
また、すでに何度か来店して顔なじみになっている客に対しては、電話は単なる営業行為ではなく、人間関係の延長として自然に受け入れられる。問題は、初回来店や資料請求だけの見込み客に対して、いきなり電話をかけることだ。この段階での電話は、相手にとって「まだそこまでの関係性ではない」という感覚とのズレを生みやすく、警戒心を強めてしまうリスクが高い。











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