絶対的なブランド力を誇り日本でも販売好調のメルセデスベンツの中でも、とりわけ日本で、どうしてこんなに?と思わずにいられないほどの人気ぶりなのが、Gクラスだ。
都市部では見かけない日はなく、それもかなり頻繁に目にするのだが、よくよく考えてみると、この価格帯の特殊なクルマがこんなにたくさん走っているというのはただごとではない。
日本でGクラスが売れ続けている理由について岡本幸一郎氏が考察する。
文:岡本幸一郎/写真:MERCEDES-BENZ
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トップグレードの売れっぷりに驚愕
執筆時点(2020年6月)でのバリエーションは、ボトムのG 350 dが1192万円、G 550が1623万円、AMG G 63が2114万円となっている。
各モデルの販売比率も価格相応なのだろうと思いきや、なんと直近でG 350 dが5割で、G 550が1割、G 63が4割というから驚く。
G 350が多いのはわかるとして、倍近い価格のG 63がそれに近い勢いで売れているわけだ。しかも、その大半が全額キャッシュで支払うそうな。そのあたり、Gクラスを購入する層がどういう人たちであるかがうかがいしれる。
むろんG 350 dだって1000万円をゆうに超えているわけで、それなりに経済力のある人でないとそうそう買うことはできないわけだが、年齢層や職業に関係なくGクラスを乗り継ぐ人は一定数が存在する。
傾向としては、メルセデスの中では若いことが特徴で、他のメルセデスは検討せず、もともとGクラス一本にしぼっているという。SUVブームとは別次元の話で、Gクラスが好きだという人が、高所得層にそれだけ多くいるわけだ。
揺るぎないブランドイメージ
思えば現在の「GLS」の前身である「GL」が登場した頃には、Gクラスはお役御免となり、ほどなく消滅するというウサワもあった。
ところがぜんぜんそんなことはなく、それどころか実際はその後にV12搭載車や6輪車を出すなど、むしろ意欲的な新しい動きを見せたほどだった。
2018年には現行型に移行したのはご存知のとおり。ただし、「W463」の型式は従来と変わらず、あくまで「フルモデルチェンジ」ではなく大幅な「改良」であるとしているが、全面刷新されてあらゆる面で進化したことは間違いない。
そんなGクラスの人気の理由はどこにあるのかを考えてみると、もちろんメルセデスの一員であるという強力な後ろ盾もあってのことだが、とにかくデザインにつきる。
そして、人気が人気を呼び、多くの著名人が愛車としていることでも知られるようになり、それもあってその存在自体がますます特別なものになっていった。それらにより確立した誰しもが認めるゆるぎない「Gクラス」というブランドイメージがある。
デザインを継承して進化している現行は売れて当然
1979年の登場当初から40年あまり、基本的にデザインは変わっていない。そんなクルマは世の中にほかにない。ジープも当時とは別物だし、キャラの近いランドローバーのディフェンダーも新生モデルは原型とはまったく違った雰囲気になっている。
むろん最新のGクラスも、変えないで欲しいという声もあって、あえて昔と同じようにした面も多分にあるわけだが。そのデザインこそ、Gクラスの人気の本質だ。
いかにこのデザインが好まれているかというのは、ドライバビリティの観点からも言及できる。
2018年に大幅改良して快適性が格段に向上したのは多方面で報じられているとおりだが、その前のGクラスはというと、同世代の並みのSUVに比べても、公道での乗り味は粗く、おせじにも褒められたものではなかった。
年々進化して走りを洗練させてきた同価格帯のSUVたちとは、むしろ差は開くいっぽうという印象だった。
ところが、そんなことは関係なく、Gクラスに乗りたいという純粋な思いを持つ人は多く、売れ行きは最後まであまり落ち込むことがなかった。強みであるデザインを継承し、弱点を解消した新型が好調に売れているのは当然のことだ。
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