WEC富士戦で劇的勝利を収めたトヨタ・レーシングのPVが、これまでのモータースポーツとはひと味違うと話題に! いったい何がそこまで人を惹きつけるのか? ドライバーたちの意外な表情と、日本らしさを大胆に掛け合わせたその舞台裏を覗いてみよう!
文:段純恵/写真・画像:トヨタレーシング、トヨタ
トップ画像はYouTube動画からのキャプチャです
富士6Hの主役はレースだけじゃなかった!? トヨタが放つ異色のPV
WEC世界耐久選手権第6戦富士6時間レースはトヨタ8号車(セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮)が逆転で母国戦を制し、ランキング首位を堅持した。ラスト20分の手に汗握る優勝争いは、平川の卓越したドライビングでライバルを下したことのみをお伝えし、詳細はWECやレース専門のサイトを見ていただくとして、ここでは別の話題に触れたい。
実はこの富士戦の週末、筆者がもっとも興味をそそられ大注目したのは、トヨタ・レーシング(TR)が富士戦向けに制作したプロモーションビデオ(PV)だった。
百聞は一見にしかず。BCweb読者の皆さんにもまずはレースウィークの木曜日にアップされたPV、「WEC Fujiの準備(温泉マーク)」を見ていただきたい。(https://www.youtube.com/watch?v=-fA-safWHMk)
文句ナシに楽しい。面白い。そしてカッコいい!
筆者もメーカーやチームのPVをヤマほど見てきたが、こんなに何度も見返してはツボにハマって爆笑し、またワクワクと再生ボタンを推してしまうPVは初めてだ。
こんなのアリ!? 舞台はまさかの「銭湯」!
モータースポーツ系のPVといえば、レースの厳しさ、それに挑みプレッシャーに打ち勝つ姿をどう伝えるかに知恵が絞られ、ドライバーやチーム関係者の汗や涙に焦点をあてたショートドラマが多かったように思う。
だがこのTRの動画はそれらとはまったく異なるテイストで仕上っており、マーケティング系のPVとしてはかなり斬新というか、中には面食らった人もいたに違いない。
何しろ舞台はレースとまったく無関係な、とはいえ日本人にとっては生活習慣として馴染みのある、江戸の昔から庶民が社交の場としてきた銭湯である。ロケ地となった都内の某銭湯、最近では滅多にお目にかかれない唐破風屋根に折り上げ格天井、暖簾をくぐって中に入れば番台が鎮座しているという、これ以上ないほど伝統的な造りのザ・銭湯だ。
正直言うと、なぜPVに銭湯? と見る前に一瞬思った。もちろん日本には昔から大事の前に心身を清める禊の習慣がある。富士戦はTRにとってル・マンと並ぶ超のつく大一番であることは間違いない。ではあるが、果たして外国人ドライバーの4人がハコネでもゴウラでもクサツでもない、ふつうの住宅街にある銭湯をどう感じるのか?という疑問が再生ボタンを推す直前まで頭にあった。
外国人ドライバーが“裸のお付き合い”!? ニッポンの銭湯を大満喫
結論から言おう。そんなしょーもない考えはまったくのムダだった。何度となく日本を訪れているブエミにハートレー、マイク・コンウェイにニック・デ・フリースの4人だが、日本のふつうのオッチャンやオバチャン、ニーさんやネーさんが『裸のお付き合い』を展開する入浴施設に足を踏み入れたのは今回が初めて。
だが、約2時間の撮影で彼らはこの日本の『文化施設』を存分に堪能したらしい。
昭和の子供のお風呂必需品、シャンプーハットの使い方を小林可夢偉チーム代表から伝授されるデ・フリース、引き戸を開けて入った浴場正面の壁に描かれた富士山のペンキ絵の大きさに驚くブエミ、風呂あがりにはこれ! の牛乳を一気に飲み干すハートレー、ほてった顔を北斎の富士絵団扇で気持ちよさげに仰ぐコンウェイと、彼らはまだ知らなかったニッポンを芝居気たっぷり、というよりも本気で楽しみ、驚き、味わい、和んでいることが画面からも伝わってくる。
平川が湯舟で顔を拭いながら「やっぱ薪で沸かしたお湯は違う…」と心の声がダダ漏れしているような表情を浮かべているのが、いつもの端正にしてシャープなイメージを覆していて新鮮だ。
ニッポンの銭湯を満喫し、日頃の疲れもすっかり癒されたドライバーたちは、帰りのバスで全員爆睡していたという。横並びで浴場に入るシーンの6人の鍛え抜かれた精悍な背中を見た後だけに、彼らの穏やかな寝顔を想像すると、微笑ましいのと同時になんだか励ましたくなり画面にむかって『お疲れさま』とつぶやいていた。



















コメント
コメントの使い方