SUV販売が絶好調なトヨタ。2019年末発売の小型SUV「ライズ」が、2020年上半期の登録車販売で一位を記録。2020年6月発売のハリアーは、既に年内納車が難しいといわれるほど。さらに新たな小型SUV「ヤリスクロス」の9月発売を予告するなど、トヨタは攻めの姿勢を見せる。
その一方で、既に将来的な既存車種の半減と販社統合を進める半版戦略の見直しを図っている。新型車を続々と投入しながらも、車種の減少に違和感を覚える人もいるだろう。トヨタの車種統合の予想とSUV戦略の今を分析する。
文:大音安弘/写真:TOYOTA
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■9車種まで拡大されるSUV
2016年末のコンパクトクロスオーバーSUV「C-HR」の投入以降、続々と新型車を投入。そのすべてがヒットとなっているトヨタ。2020年9月国内投入予定のヤリスクロスを含めると、全9車種にまで拡大。
本格SUVの「ランドクルーザー プラド」と「ランドクルーザー」以外は、ここ数年に投入された新型車のみと、フレッシュな顔ぶれだ。トヨタの中でも、セダンに次ぐ車種の多さを誇るが、セダンは、アリオンとプレミオという姉妹車を含めて10車種なので、トヨタの中で最も多彩なラインアップがSUVといえる。
そのラインアップは、エントリーコンパクトの「ライズ」、スペシャルティなコンパクトの「C-HR」、タフなミッドサイズの「RAV4」とそのPHV「RAV4 PHV」。
さらに上級の都市型ミッドサイズ「ハリアー」、ミッドサイズ本格派「ランドクルーザー プラド」、フラグシップのラージサイズの本格派「ランドクルーザー」と、下から上までしっかりとカバーする。9月発売予定のヤリスクロスは、「ライズ」と「C-HR」の間を埋めることになる。
■ライバル不在か!? ヤリスクロス
ヤリスクロスは、日本のSUV市場の薄い層を攻めてきたという印象だ。ライバルとなりそうな日産キックスやマツダCX-3よりも、コンパクト。ヤリス譲りの機動性の良さに加え、サイズアップによる積載性の向上が期待でき、コンパクトカーで十分だが、キャビンの広さも重視するユーザーに受けそうだ。
ハイブリッドに加え、4WDの設定も強みとなるだろう。この手のサイズのクロスオーバーは、欧州車の方が得意。ただ日本だと、価格面が厳しい。ヤリスクロスがお得感を打ち出せば、一人勝ちも十分あり得る。それだけに、既存のラインアップに割り込むように導入を決めたのだろう。
■2025年までに30車種程度とするが……
人気のSUV市場へ続々と新車を送り込むなど好戦的な姿勢で挑むトヨタだが、その一方で、将来的な国内での新車販売の落ち込みを懸念し、ディーラーの再編による全店舗全車種取り扱いや2025年までに現状のおよそ半分といえる30車種にまで車種を削減する方針も打ち出している。
この流れは、東京地区のメーカー直系の新車ディーラーを統合した「モビリティ東京」の誕生や東京地区を除く、全国ディーラーでの全車種扱い、そしてマークXやエスティマなどのビッグネームの廃止などの具体的な動きを見せている。
新車ディーラーの統合によって、姉妹車が不要になることから、ラージミニバンのアルファードとヴェルファイアや小型ミニバンであるノア3兄弟の統合は必須。
もちろん、今後、廃止が決定する車種もあると見られ、まず旧型プリウスベースのワゴン「プリウスα」、個性派コンパクトトールワゴン「ポルテ/スペイド」はそう遠くないタイミングで生産を終えるだろう。
またビジネスカーとして延命されたカローラのセダン「アクシオ」とワゴン「フィールダー」も、販売状況を見て決断が下されるはずだ。ただビジネス向けセダンは、法人や官公庁向けのニーズも高いので、「アクシオ」「アリオン」「プレミオ」の一本化も考えられる。
それでも半減には、まだまだハードルがあるため、さらなる近いポジションの車種への統合、ビッグネームの消滅、章男社長肝いりの「GR」シリーズでもリストラがあり得るだろう。もちろん、GRは不人気車に限定されるだろうが……。
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