2019年の東京モーターショーにマツダ初の量産電気自動車として出展された「MX-30」はそのまま市販されるかと思いきや、日本向けは通常の2L直噴ガソリン+超小型モーターのマイルドハイブリッドから2020年秋発売される。
発売時のパワートレーンはともかくとして、MX-30はカップル世帯などもターゲットにしたスペシャリティなクロスオーバーというキャラクターを持つ。そのため2ドア車的なパーソナルな雰囲気と使い勝手を両立すべく、マツダではロータリーエンジン専用車のRX-8以来のフリースタイルドア(観音開きドア)を採用した点も大きな特徴となっている。
人が乗車するための観音開きドアはリアシートへの乗降性の向上や、4ドアでも2ドア車のようなデザインが可能となるなどのメリットがあるのは確かだ。しかし、センターピラーレスの観音開きドアだと、フロントドアを開けないとリアドアを開けられないなど「本当に使いやすいか?」と考えると、疑問があるのも事実だ。
※筆者はRX-8をマイカーにしている時期があり、運転席でシートベルトを着けたまま友人を待っている際に、リアシートに乗ろうとした友人に車外からフロントドアとリアドアを開けられ、リアドアに付くシートベルトを一気に引っ張られた経験がある。
使い勝手の懸念もあるのか、観音開きドアで成功したのは「ロータリーエンジンの存続という理由もあり、ユーザー層の広い4ドアでスポーツカーのように走るクルマを造るため」という強い必然性により観音開きドアとしたRX-8くらいだ。という背景もあり当記事では「インパクトはあったけど、大成しなかった観音開きドア車」を振り返っていく。
文/永田恵一
写真/MAZDA、TOYOTA、HONDA、SATURN、MINI
【画像ギャラリー】個性的は強かったけど 販売台数には結びつかなかった観音開きドアのモデルたち
■トヨタ bBオープンデッキ(2001年)
「bBオープンデッキ」は初代ヴィッツの基本コンポーネンツを使った、カスタマイズカーのベースとしての資質も持つボクシーなハイトワゴンだった初代bBのキャビン後方を短縮し、その分を荷台としたピックアップトラックである。
bBオープンデッキはキャビン後方を短縮したため普通のリアドアが付けられなくなったこともあり、右側はリアドア無し、左側はセンターピラーレスの観音開きドアを採用した。
イエローのボディカラーだと特に楽しげな雰囲気のあったbBオープンデッキだったが、キャビン後方を短縮した分リアシートが狭いのに加え、荷台も広くないと中途半端な印象が強く、生産期間も約1年半と短命に終わった。
■ホンダ エレメント(2003年)
エレメントはアメリカの若者を主なターゲットとした、2代目CR-Vベースとなるアメリカ生産のクロスオーバーだ。
エレメントはサーフィンなどに行くための遊びの足という使い方も想定していたこともあり、歴代の日産エクストレイルのように防水加工されたシートや掃除しやすいフロアなどを採用。ドアも車内で前後ドアを開けながらくつろぐ際に味わえる高い開放感や、サーフボードに代表される長尺ものを積む際の積みやすさもあり、両側センターピラーレスの観音開きドアだった。
しかし、日本向けのエレメントは約2年で絶版となった。エレメントが短命だった理由としては観音開きドアうんぬん以前にクルマのコンセプトがわかりにくかったことや、当時は初代エクストレイルの2Lガソリン+4WDが上級グレードで222万円だったのに対し、エレメントは観音開きドアや2.4Lエンジンといったアドバンテージはあったにせよ、価格が259万円と高かった点などが浮かぶ。
ただエレメントはアメリカでは9年間生産され、まずまず売れた成功作だったことは覚えておきたい。
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