売れているのは軽自動車ばかり? ホンダ国内販売偏重招いた要因は。
オデッセイ、ステップワゴン、シビック、アコードなど多彩なヒット車を持つホンダながら近年、国内販売では軽自動車への依存度が高まってきている。
なぜ、軽や一部の小型車に販売が集中しているのか? 背景には“あるヒット車”を境とした方針変更があるという。国沢光宏氏が解説する。
文:国沢光宏/写真:HONDA
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■ホンダの国内販売は10年間で様変わり
ホンダの国内販売が大きく様変わりしている。10年前の販売比率を見ると軽自動車から2Lクラスの乗用車、ミニバン、SUVなど様々なジャンルが適正なバランスで売れていた。
しかし! 今や販売台数の半分近くが軽自動車! 白いナンバーの「いわゆる登録車」も、フィットを始めヴェゼルやフリードといったコンパクトカーばかり。
一方、車種ラインナップはレジェンドを筆頭にアコード、クラリティ、オデッセイ、ステップワゴン、CR-Vと充実しています。コンパクトカー以外、開店休業状態といってよい。
結果、このところ国内販売は実際は赤字的なギリギリ黒字といった状況(新型コロナ禍の決算は赤字だと思う)。バランス良いトヨタと好対照。どうしちゃったんだろうか?
■CR-Vが象徴するホンダ車の「割高感」
結論から書くと「国内販売担当にまったく自動車ビジネスのセンスなし」ということになります。
まず、競合車と比べ信じられないほど高い! 好例が今や人気ジャンルとなっているCR-Vだ。
トヨタを見ると、アメリカでCR-Vと販売台数で競っているRAV4に加え、ハリアーもラインナップしているのに好調。マツダだってCX-5は貴重な稼ぎ手だ。日産 エクストレイルやスバル フォレスターだって好調な販売台数で推移してます。
CR-Vだけ鮮やかな一人負け! 同じジャンルでこれほど酷い状況、今まで見たことがない。いや、クルマそのものの完成度が低ければ当然だと思う。けれどCR-Vの場合、日本以外ではRAV4とガチで勝負できるほど良いクルマだ。ハードに責任無し!
売れない理由は日本の営業担当にあること明々白々。ということで売れない理由を挙げるなら前述の通り価格ということになる。
CR-Vのスターティングプライス、336万円もする! RAV4だと274万円から。CX-5だって265万円からとなります。もちろん装備差などあるため実質的にはもう少し縮まるとはいえ、ハードル高過ぎ。
加えてCR-Vは日本で作っているのに、アメリカで販売している価格より高い。驚くべきことに日本で生産してアメリカで販売しているクラリティも、日本の方が高いのだからワケ解らない状況。
CR-Vに限らず、シビックもアコードもインサイトも競合するライバルモデルと比べ、全て割高感あるのだった。売れなくて当然だと思う。
■ホンダ高価格路線の裏に合った大ヒット車の成功体験
なぜこんな高い価格を付けるようになったのだろうか? ここ何年か理解できなかったのだけれど、やっと判明しました。N-BOXの大ヒットで考え方を変えたという。
長い間、ホンダは「良いクルマを適切な価格で販売する」ということを社是にしてきた。だから歴代のヒット車を振り返ると、全て良品廉価路線である。
バブル景気終わった後、ホンダは経営的に厳しくなるが、そこからライバルと比べ圧倒的にお買い得感を持つオデッセイとステップワゴン、CR-V(全て初代)を発売しメガヒットを飛ばす。2000年のフィットも同じカテゴリーで最もリーズナブルだった。
風向き変わるのはN-BOXから。高くても売れたからホンダからすれば「なんで?」。
折しもの軽自動車ブームで、今まで登録車に乗っていた人が新規参入してきた。そういった人からすれば高品質で登録車と同レベルの安全性を確保していたのはN-BOXだけ。他は物足りなかった。
この成功体験でホンダの営業姿勢は変わってしまった。ユーザーは慧眼だ。実際、N-BOX以後に出したクルマはコンパクトカーしか売れなくなった。
このままだとホンダは軽自動車とコンパクトカーだけのメーカーになっていく。かつてダイハツやスズキも歩んできた道ですね。そうこうしているうち、日本市場のシェアもドンドン小さくなって行くだろう。スズキとダイハツ、手強いですから。
ホンダが選んだ道なので仕方ないけれど、ファンからすれば残念でならない。もはや打つ手はなしか?
2つ策がある。ひとつは現在販売している車種の価格見直しだ。少なくともアメリカでの価格と同等。攻めるならアメリカより安く設定すべき。CR-VがRAV4と同じ価格になったらずいぶんイメージ変わる。
もう1つはBR-Vに代表される新興国向けの魅力的なクルマをリーズナブルな価格で出すこと。思い切った手を打たないとジリ貧です。
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