近年、側面が薄っぺらい扁平タイヤを採用するクルマが増加。扁平タイヤは性能面で有利と言われるが、今やスポーティなモデルだけではなく、実用的なクルマやSUVなどでも扁平タイヤを採用する例が増えてきた。
しかし、見栄えも引き締まって見える扁平タイヤながらメリットばかりではない。普及が進む扁平タイヤにはどのようなデメリットがあるのか。そして、そのデメリットにも関わらずなぜ各社は扁平タイヤを採用するのか。自動車評論家の国沢光宏氏が解説する。
文:国沢光宏/写真:奥隅圭之、Porsche、ぱくたそ
【画像ギャラリー】メリットよりもデメリットが多い!? 扁平タイヤ急増の理由を写真で考察する
■扁平タイヤのデメリットは?
ここにきてタイヤの扁平化が一段と進んでいるように思う。一昔前まで45扁平といえば「凄いね!」だったものの、今や40扁平など当たり前。シビックタイプRなど30扁平という極めて「薄っぺらい」タイヤを履かせている。
ちなみに扁平率とは「タイヤの横幅に対する高さの比率」を示す。タイヤサイズ表示だと2つめの数字だ。
困ったことに扁平化のデメリットは少なくない! ユーザーにとって最大の「う~ん!」が価格だ。現在、45扁平タイヤくらいが最もコストパフォーマンス高い。
前述のシビックタイプRの場合、標準サイズは「245/30R20」となっている。ミシュランやコンチネンタルの同等性能品で1本4万円。同じ外形の「245/45R17」だったら1本2万円。半額です。
最近人気のSUVも55扁平の19インチサイズも普通になってきているけれど、互換性のある65扁平の17インチなら半額。
輸入SUVに多い20インチや21インチタイヤとかになってくると、スタッドレスタイヤをホイールとセットで買えば50万円以上することだって普通。タイヤ+ホイール代で程度の良い中古車が買えちゃう。
■超扁平タイヤではパンクにも注意
2つ目はパンク! 45タイヤくらいまでなら路面に埋め込んであるキャッツアイを踏んだってどうってことない。「ガガガガ!」と不快な音と振動を受けるのみ。
けれど35タイヤあたりになってくると無事じゃ済まない。普通に通過しただけでバーストする可能性出てきます。30扁平以下になると”確実に”バーストするから恐ろしい。
バーストすれば修理不可能。高価なタイヤを外出先で定価に近い価格(特殊なサイズだと在庫もないケース多い)で交換することになってしまい大出費! 加えて1本ならいいけれど、ある程度摩耗が進んだタイヤになれば左右2本交換を強いられる。
キャッツアイ踏んだだけで走行不能になったうえで20万円の出費です。
■デメリットも多い扁平タイヤをなぜ採用?
といった決定的な弱点を持つ超扁平タイヤ、なぜ採用するのだろう。こちらの理由は多い。
1)まず高性能車なら大きなブレーキを採用したいところ。ブレーキディスクのサイズ、大きければ大きいほど熱に強くなる。タイヤを薄くすれば大きなサイズのホイールを使えるようになる。シビックタイプRのブレーキ、大きいです。
そして2)タイヤに高い性能を持たせる時も扁平率は低い方がよい。なかでも重量のあるSUVなど、扁平率70くらいだと「グニャグニャ感」を感じるようになってきてしまう。
60扁平あたりになればイッキにシャッキリしてくるから興味深い。そんなことから65扁平が標準的になり、上級グレードになると55扁平を使う。
また3)デザイン的な理由もある。デザインを考えたらタイヤは薄い方がカッコよい。だからこそドレスアップの基本になっているのだった。
ただ、ドレスアップ好きだと超扁平タイヤ優先なのだろう、ブレーキまで予算が回らず、スカスカの大径ホイールの向こう側にちっちゃいブレーキディスクが見えることも。クルマ通からすればカッコ悪いです。
ちなみに、自動車メーカーでも超扁平タイヤ+大径ホイールにちっさいブレーキを組み合わせているケースがあり(アメ車やSUVに多い)、あまりカッコ良くない。
理由を聞くと「日本のユーザーが大径ホイールを好むので」。性能も見栄えも適正なホイールサイズ&タイヤサイズがあるということを知っておくとよい。
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