2020年になり、続々と国内、輸入車メーカーからEV(電気自動車)が発表されている。これだけモデルが揃って、航続距離も長くなれば、そろそろ日本でも普及が加速するか……と思いきや、その壁となるのがインフラだ。
クルマで遠出をしようと思ったら、必然的に高速道路を使うことになるが、SA・PAに設置されている急速充電器は多くても3基。大部分が1基のみだ。スマホアプリなどで急速充電器の利用状況は事前に把握できるものの、どこも利用中なら待つしかないし、2台待ち3台待ちともなれば心底ウンザリする。
今後EVの販売台数が増加していったら、現状の急速充電器の数ではとても間に合わない。なぜ高速道路では急速充電器のインフラ整備が遅いのだろうか?
文/清水草一
写真/Adobe Stock(artem_goncharov@Adobe Stock)
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■現状最も多くても3基 普及が進んでいない現状
まずは現状を把握してみよう。
現在、SA・PAへの急速充電器への設置は、全国あまねく広がっている。高速道路のSAは、約50キロ間隔に設置することが目安となっているが、全国の高速道路の大部分のSAに充電器が設置済みで、SAの間隔が長くなったり消滅したりする地方部では、PAに設置して空隙を埋めている。
需要の多い大都市部では、50キロ間隔にこだわらず、PAにも設置されている。たとえば東名高速だと、海老名、足柄の両SAのみならず、途中の港北、中井、鮎沢(上りのみ)の各PAにも充電器がある。これだけ充電器があれば、充電切れはまず気にせず走れるはずだ。
しかし現在の問題は、週末や年末年始などの交通集中期における充電器の渋滞である。
なにせ充電器の数が少ない。東名を例に取ると、海老名SAには上下線それぞれ3基ずつ(40kw×2基に加え、2020年6月に90kwを1基増設)、足柄SAには2基ずつあるが、そのほかはすべて1基ずつしかない。
新東名では、岡崎SAに2基ずつあるが、そのほかはすべて1基ずつ。中央道では談合坂に2基ずつ。九州道の古賀SAに2基ずつとなっている。
全国の高速道路のSA・PAで、複数台の充電器があるのはこれだけで、あとはすべて1基ずつだ。なかには上下線共通でハイウェイオアシスに1基のみ設置というところもある。
これらの充電器は、平日にはほぼ渋滞は発生しておらず、利用状況を見ると、ガラガラと言っていい。利用率は平日昼間で1~2割程度(目分量)。つまり、利用中の充電器があっても、その次のスポットまで行ければ、大抵は充電待ちせずに利用できる。
問題は、前述のように週末や交通集中期である。
たとえば、2019年から2020年にかけての年末年始のSA・PA充電器の渋滞状況を見ると、全国ほぼすべてのスポットで多かれ少なかれ充電待ちが発生しているが、なかでも深刻だったのは東名、新東名、名神、新名神、東名神といった東西を結ぶ基幹路線。特にひどかったのは新東名の静岡SAと浜松SAで、深夜を含めほぼ一日中充電待ちが発生した。
しかし、2基ずつ設置されている岡崎SAを見ると、下り線では充電待ちゼロ。上り線でも、それほど深刻な充電待ちは起きていない。
東名の複数台設置SAを見ても、海老名・足柄ともに下り線は待ちゼロ。どちらも上りでは発生しているが、複数台設置の効果は絶大であることがわかる。なにせ1基から2基にするだけで、数が2倍になるのだから当然だが。
総合的には、SA・PAの充電器は、普段はガラガラ状態ながら、週末、特に交通集中期のみドッと混んでしまうという状況だ。現状、EVはほぼマイカーに限られるし、マイカーで遠出するのは休日に限られて当然だから、当然といえば当然すぎる帰結である。
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