もう2021年に入って結構な日数が経ったが、約1ヶ月前の12月14日といえば赤穂浪士討ち入りの日。亡き殿、浅野内匠頭の無念を晴らすため、吉良上野介の屋敷を襲撃した赤穂四十七士。見事な「奇襲戦」だ。
歴代のクルマにも新機軸・新技術・新発想を引っさげ市場へ奇襲戦を仕掛け、強烈なインパクトを残したモデルがある。
今回はそんなクルマたちを、歴史上の人物になぞらえて語ってみたい。
【画像ギャラリー】ノートe-POWER、CR-V、フェアレディZ プリウス… 大仕事をやってのけたクルマたちをギャラリーでチェック!!!
※本稿は2020年12月のものです。各「奇襲成功度」は100点満点です
文/清水草一、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』 2021年1月10日号
■日本の武将編
12月14日、赤穂四十七士の墓がある東京の泉岳寺。本来なら義士祭がとり行われる日だが、今年は新型コロナウイルス感染防止のため中止に。赤穂浪士を尊敬してやまない編集部ババは、深夜の編集部でたったひとり、大石内蔵助に話しかけていた……。
ババ 大石殿、討ち入りの義挙、感服いたします。願わくばクルマ界でも、同じような壮挙が起こりますように……(独り言)。
──すると突如、馬場の目の前に大石内蔵助が現れたぁ! これは夢かマボロシか?
大石 ベストカー・馬場よ。あれは単なる義挙ではない。練りに練った奇襲戦だったのじゃ。
ババ き、奇襲戦ですか!?
大石 うむ。ほぼ無警戒な敵方を、完全装備の47名で不意打ちし、目的を遂げたのじゃ。そこを見逃さんでくれ。
ババ では、あの義挙をクルマ界に例えると、車種は何でしょう?
大石 うむ。日産Be-1というところか。
ババ ずいぶん控え目ですね。そのココロは?
大石 日産パイクカーシリーズは、誰も思いつかなかった限定的な奇襲。それで世の中が変わったわけではないが、皆の記憶には残り、日産901運動にも弾みがついた。それで、わしらは満足じゃ。
●初代オデッセイは「源義経公の鵯越の逆落とし」だ!
ババ お話をうかがっていると大石殿、ずいぶんクルマ界に詳しいですね。クルマ好きなんですか?
大石 うむ。まあな。
ババ ではうかがいます。クルマ業界で他に奇襲に成功したクルマというと何でしょう!?
大石 初代オデッセイじゃな。あれこそ奇襲。源義経公の鵯越(ひよどりごえ)の逆落としを思わせる……。
ババ そ、それは?
大石 小勢しか与えられなかった義経公は、仕方なく断崖絶壁を馬で駆け下り奇襲をかけ、大戦勲を挙げた。
オデッセイも、セダン用の生産ラインでミニバンを作らざるを得なかったことで、奇しくも背の低いスポーティなミニバンが誕生し、それが大ヒットしたということよ。
ババ なるほど! 災い転じて福となしたわけですね! ホンダのクリエイティブムーバーシリーズは、すべて奇襲戦でしょうか?
大石 そうとも言える。初代CR-V、あれはジンギス汗じゃ。
ババ えっ、今じゃぜんぜん売れてませんけど!?
大石 お主は何も知らぬのう。現行CR-Vは、日本以外の世界中でバカ売れしておる。つまりモンゴル世界帝国じゃ。ジンギス汗の戦法は、騎馬による超速移動戦。敵にすれば奇襲じゃな。そのジンギス汗は、実は生き延びて大陸に渡った義経公である、との説もあった……。
ババ 勉強になります。
●初代ワゴンRは無欲の勝利。信長公の桶狭間の戦いである!
大石 織田信長公の桶狭間の戦いは、初代ワゴンRじゃ。
ババ 名高い奇襲戦ですね!
大石 桶狭間は、実は奇襲ではなく正面攻撃であったとの説が有力になりつつあるが、無欲で、手薄な敵の本陣を押しに押し、結果的に大将の首を獲った。ワゴンRとて、手持ちの駒で無欲に広いクルマを作ったのみ。
ババ 無欲の勝利ですね!
大石 初代プリウスは、徳川家康公の三方ヶ原じゃな。負けを覚悟のうえで信玄に戦いを挑んだのは、バッテリー無償交換を覚悟のうえでプリウスを売り出したのに通じる。それが今日のハイブリッド太平の世を築いたのじゃ。
●上杉謙信公の第四次川中島合戦を思わせる新型Z
ババ それでは、新型フェアレディZ、あれは何でしょ?
大石 上杉謙信公の第四次川中島合戦じゃ。
ババ だ、第四次とは細かいですね!
大石 謙信公は、あえて敵陣側にある妻女山に陣取り、決戦の覚悟を示した。新型Zも同じ。「もう逃げぬ!」という姿勢を見せておる。勝負は時の運なれど、天晴れである。
ババ 大石殿は新型Zを評価されているんですね。よかったです。ホントに。
コメント
コメントの使い方