降雪量の多い、いわゆる雪国に住んでいる人たちは4WDを選ぶ人が多い。しかし最近では、4WDを選ぶ人が多いだろうと思われるSUVだが、コンパクトSUVの4WD比率を見ると、ライズが25%、ヴェゼルが20%と圧倒的にFFのほうが多い車種もあり、日産キックスはFF車しか用意されていない。
コンパクトカーやミニバンをはじめとするファミリーカーでは、そのほとんどがFF(4WDグレードも用意されているが)となっている。
雪道を走る機会の多い季節になった今、気になるのは、雪道を走るには4WDじゃなければダメなのだろうかということ。そしてFFならではの雪道の走らせ方はあるのだろうか? モータージャーナリストの斉藤聡氏が解説する。
文/斎藤聡
写真/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部
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雪道を走るには絶対4WDじゃなくてはダメなのか?
雪道でのドライブには、スタッドレスタイヤの装着かタイヤチェーンの携行、またはオールシーズンタイヤの装着が必須です。でもそうした装備さえ備えていれば、雪道はそれほど不安を感じることなく走れてしまいます。
クルマの駆動方式の主流がFRからFFに変わった頃(だいぶ昔ですが)、FF車はFR車に比べ雪道での走破性が高いというのが定説でした。4WDと比べるとだいぶ落ちますが、それでも十分に優れた走破性を持っているのがFF車なのです。まずはこれが前提になります。
日本の道路は「道路構造令」によって道路の勾配は全国一律最大12%と規定されているんです(例外あり)。12%というのは、100m進んで12m登る道路になります。ちなみに勾配12%は角度にすると約6.8度です。12度ではありませんので念のため。
勾配最大12%という道路構造令があるため、タイヤメーカーのテストコースには登坂路が作られていて、登坂性能がテストできるようになっています。
スタッドレスタイヤのテストコースでは、特に12%の勾配が登坂可能か否かはとても重要な性能になってくるので、国産タイヤメーカーを例に挙げればまず間違いなく登坂試験路が作られています。
つまり極端に路面状況や降雪状況が悪くなければ、日本のほとんどの道路はスタッドレスタイヤを履いていれば走行できるということです。
タイヤチェーンは種類にもよりますが、簡易型でもスタッドレスタイヤ並み、チェーンタイプであればそれ以上の登坂性能が期待できます。駆動輪である前輪に装着します。ただ装着には多少の慣れが必要なので、あらかじめ練習しておくことをお薦めします。
注意点としては、カーブでスピードが出すぎていると、リアタイヤに滑り止めがないので、わりと簡単に横方向に滑ってしまいます。チェーン装着の際は十分気を付けてください。スタッドレスタイヤ+チェーンとか、オールシーズンタイヤ+チェーンの組み合わせにすると、さらに安心して走ることができます。
スタッドレスタイヤはいま日本では最もポピュラーな冬用タイヤです。氷雪上でのグリップ性能を高めるためそれに特化したコンパウンドやトレッドデザインを持っています。夏にはゴムが柔らかすぎて使えないので履き替える必要があります。
オールシーズンタイヤは、夏から冬まで1年中履きっぱなしにできるタイヤです。雪道での性能をある程度考慮して作っているので多少の雪でも不安なく走ることができます。性能的には、タイヤによってある程度差があると思いますが、12%+αくらいの圧雪路の登坂が限界と考えておいたほうがいいと思います。
もちろん路面の状況によって登坂可能な角度(%)は大きく変わります。ピカピカに磨かれた圧接路だと一定の車速で通過はできても、一旦停止して再スタートできないことがあります。特にオールシーズンタイヤは、路面が磨かれているとトラクション性能が著しく低下するので注意が必要です。
スタッドレスタイヤは、タイヤの摩耗状態とも少なからず性能に関わってきます。スタッドレスタイヤをサマータイヤと同じ感覚で走らせてしまうと、どうしてもブロックのエッジが削れたり、サイプが開いたり、摩耗したりと、氷雪性能を低下させることになります。
駆動輪が前輪だけのFF車の場合、タイヤの性能低下は雪道での走行性能に大きく影響しますから、スタッドレスタイヤを履いたら普段よりちょっとだけタイヤに負担をかけないように気を使って走ってやると、タイヤの性能低下を抑えることができると思います。
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