徳大寺有恒氏の美しい試乗記を再録する本コーナー。’89年8月ついにスカイラインGT-Rが復活した。
徳さんに「GT-Rのようなクルマは未来永劫生まれてこないだろうと思っていた」といわしめた、スカイラインGT-Rと同じ4WDで当時世界最高のスポーツカーの1台だったポルシェ911 カレラ4と比較テストした’89年10月26日号の試乗記を振り返ろう。
※本稿は1989年10月に執筆されたものです
文:徳大寺有恒
ベストカー2016年3月26日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『ベストカー』にて毎号連載中です
■速さはGT-Rの圧勝
なんともすごい時代である。ポルシェ911カレラ4といえば世界を代表するスポーツカーであることは疑いようがない。そのカレラ4すら問題としないのがスカイラインGT-Rである。
GT-Rは速いのである。そして安定しているのである。GT-Rに初めて乗った時、このクルマにある種の余裕を感じた。最高出力280馬力、最大トルク36.0kgmにも、シャシーのポテンシャルにも、そこはかとない余裕が感じられたのだ。
エンジンでいえば400馬力、500馬力、そしてシャシーもそのパワーを安定して受けとめるための、より次元の高いものを実験し、経験したもののみが持つ余裕であろうと思う。
しかし、そのGT-Rをもってしてもアウトバーンではカレラ4の敵たり得ない。燃費が違う。おそらく、GT-Rはカレラ4よりも3倍近くガソリンを消費するだろう。
アウトバーンを走るとすれば200km未満でガソリンスタンドを探さねばなるまい。片やカレラ4は200km/hオーバーで走っても450kmは走れるだろう。この差は大きい。そして国産GTの泣き所はここにあるのだ。
たしかにGT-Rは楽しい。すばらしいクルマだ。しかし、かさむガソリン代はオーナーにとっては痛かろう。そして重要なことはこれは純粋に技術の問題であることだ。燃費の問題を解決しないかぎりGT-Rの世界的レベルでの評価は難しい。
カレラ4は3.6L、自然吸気で250馬力を出している。ポルシェのことだ、もう少しは出るだろうと思う。このエンジンは基本的には8000回転近くは回るのだから。しかし、それをしなかったのは、耐久性と燃費の問題だろう。いってみればカレラ4は実用的であり、かつ理性的だが、GT-Rはホビーであり粗野でもある。
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