事故防止の極意はドリフトにあり!? 北米トヨタがプロドライバーのスキルを自動運転に転用

事故防止の極意はドリフトにあり!? 北米トヨタがプロドライバーのスキルを自動運転に転用

 北米トヨタが、トラブルに見舞われたすべてのドライバーが、プロのレーシングカードライバーの本能的な反射神経と、クラッシュを回避するためのスーパーコンピューターの計算された先見性を持っていたらどうか? という、緊急時の運転操作を自動運転でカバーする研究をしている。

北米トヨタが公開した自動運転でドリフトするスープラ

 スープラをドリフトさせるという、一見エンターテイメントなのか? と見間違う動画ではあるが、その目指すところはいたってまじめだという。

 この自動運転でのドリフトによる緊急回避行動の研究とはどのようなものなのか? また、このトヨタの研究が一体どのように活かされるのかお伝えしたい。

文/桃田健史
写真/TOYOTA

【画像ギャラリー】夢か現実か?GR スープラ自動運転車(しかもドリフト仕様)画像集


■最先端技術を投入! ど派手なスープラドリフトの背景

 白地に赤と黒のスープラが、華麗なドリフト走行を見せる。

 ボディサイドのチューニングメーカーのロゴ、さらにエンジン音から推測するとかなりパワーアップしたエンジンを搭載しているようだ。広く平坦な敷地で、一気にパワーオンスライドが始まり、一定のドリフトアングルを保ちながら定常旋回に入る。

 車内の様子が映し出されると、前後の縦方向に操作するシーケンシャルシフトレバーが、
 ドライバーが手を触れることなく動く。ドライバーがステアリングに手を添えることもない。左ハンドル車の、左ドアから窓を開けて、ドライバーはⅤサインをしている。

写真で見る限り、普通(?)にドリフト仕様の「GR スープラ」だが、実は自動運転車である。ぜひリンクの動画もご覧いただきたい。ところで、車内の搭乗者はどんな気持ちなんだろうか?
写真で見る限り、普通(?)にドリフト仕様の「GR スープラ」だが、実は自動運転車である。ぜひリンクの動画もご覧いただきたい。ところで、車内の搭乗者はどんな気持ちなんだろうか?

 このスープラのハイパフォーマンスカーは、TRIとスタンフォード大学が共同研究している、トヨタのオフィシャル自動運転車なのだ。

  なぜ、トヨタが、スープラで、ドリフトで、自動運転なのか? まずは、TRI(トヨタ・リサーチ・インスティチュート)について触れておく。

 トヨタは2016年1月、米CES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)でTRI設立を発表し、社長に就任したギル・プラット氏(現:トヨタ本社エグゼクティブフェロー)が「我々TRIはAI(人工知能)を中心とした革新的な研究を行うための組織」と説明した。

 そのため、初期の予算として2020年までに総額10億ドル(1ドル105円換算で1050億円)に及んだ。

 筆者はプラット氏が彼の前職であった、DARPA(米国防総省・先進計画局)職員として
 災害対応ロボット国際コンテスト「DARPAロボティクスチャレンジ」の取りまとめを勤めていた時から直接取材していた。そして、TRI誕生以降も、トヨタを通じてTRI関連の取材も定常的に続けてきた。

 その中で感じているのは、トヨタグループにおけるTRIの特殊性と、豊田章男社長のTRIに対する絶大な信頼度の高さだ。

 また、TRIは本部に近い西海岸シリコンバレーのスタンフォード大学や、プラット氏が長年研究者として従事した東海岸のMIT(マサチューセッツ工科大学)とも各種研究を通じて深いつながりがある。

 今回のスープラ・ドリフトのプロジェクトについても、スタンフォード大学の学内プロジェクト「ダイナミック・デザイン・ラボ」と共同研究となっている。

今回のプロジェクトはTRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)とスタンフォード大学の共同研究。自動運転車にドリフトさせる実験に一体どんな意味があるのか?
今回のプロジェクトはTRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)とスタンフォード大学の共同研究。自動運転車にドリフトさせる実験に一体どんな意味があるのか?

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