毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回は日産 シルフィ(2000-2020)をご紹介します。
文/伊達軍曹、写真/NISSAN
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■パルサー プレセアの後継車種として登場した3ナンバーサイズセダン
2000年当時に50歳代だった、いわゆる団塊世代の男性に向けた小型セダンとして登場。
その3代目が登場した2012年には、そのままターゲットの年齢層を「60歳代のドライバー」までスライドさせて奮闘した。
しかしセダン人気の凋落と、ターゲットとする層のそもそもの購買力低下により、2020年中に生産終了を余儀なくされたモデル。
それが、日産 シルフィです。
日産 シルフィは、当初は「ブルーバード シルフィ」との車名で2000年8月に発売された小ぶりな4ドアセダン。
車名に「ブルーバード」と付いていましたが、車台は当時のサニーに使われていた「MSプラットフォーム」というもので、ホイールベースもサニーと同一です。
搭載エンジンは1.5Lおよび1.8L、2Lの直列4気筒で、組み合わされるトランスミッションは1.5Lが5MTと4速AT。1.8Lが4速ATで、2Lモデルは6段マニュアルモード付きの「ハイパーCVT-M6」でした。
当時は、その後顕著になる「セダン離れ」がまださほど起こっていなかったため、初代ブルーバード シルフィは堅調なセールスを重ね、2002年の時点でも月平均約2700台が登録されていました。
そして2005年12月のフルモデルチェンジで2代目となり、当時の日産 ティアナ、ティーダに続いて「モダンリビングコンセプト」を採用。
「50代の団塊世代をターゲットとする」という基本部分に変化はありませんでしたが、初代と比べると女性ウケを狙った路線にやや舵を切ったという印象がありました。
搭載エンジンは1.5Lおよび2Lの直4で、前者には4速ATが、後者には「エクストロニックCVT」が組み合わされました。駆動方式はFFがメインですが、1.5Lには電気式四輪駆動の「e・4WD」もランナップされています。
この2代目ブルーバード シルフィもまずまず売れたのですが、2012年12月に、ブルーバードの冠を取って「日産シルフィ」として発売された3代目は苦戦することになります。
ターゲットユーザーの年齢層は、初代では「50代」でしたが、それから12年が経過した3代目では、12年分の歳月がそのまま持ち上がって「セダンの車歴が長い60代のドライバー」ということになりました。
そして――これが日産の本心だったかどうかはわかりませんが――「本格セダンとしての機能性や品質感を重視した」というエクステリアは3ナンバーサイズに拡大。具体的には全長4615mm×全幅1760mm×全高1495mmとなっています。
エンジンは最高出力131psの新型1.8L直4に一本化され、トランスミッションは副変速機付きCVTに。
最小回転半径を従来型より10cm小さい5.2mに改善し、パワーステアリングも低速時の操作力を減らすなどして「60代ドライバー向けシフト」を敷いた3代目シルフィではありました。
しかしながら3代目のセールスは低迷。発売翌年の2013年後半には早くも月販500台レベルとなり、2019年には月販150台レベルにまで落ち込みました。
そのため日産は国内向けシルフィの製造を2020年9月に終了。
2021年2月27日現在、シルフィは日産公式サイトにいちおう掲載はされていますが、在庫を売りきった時点で、販売のほうも終了となります。
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