■3ナンバー化が拍車をかけた? 国内向けシルフィの系譜が潰えた背景
1960年代から80年代頃までの日本人を魅了した名作セダン「ブルーバード」と直接の関係はないとはいえ、その名を受け継いたブルーバード シルフィおよびシルフィが、あえなく生産終了となった理由。
それは世界的なセダン人気の凋落と、「特に日本では、ごく一部の人しかセダンを買わなくなったから」ということに尽きます。
初代ブルーバード シルフィが登場した2000年頃は、まだまだ「車といえばセダン」という風潮も残ってはいました。それゆえ、初代はそれなりに売れたわけです。
しかし1990年代にはすでに「RVブーム」が巻き起こっていたため、2000年当時のセダンはかつてのような「絶対的存在」ではありませんでした。
そしてその後はご承知のとおり「ミニバンブーム」「SUVブーム」あるいは「軽トールワゴンブーム」などが起こり、自動車というものの主流はノッチバックセダンから「箱型的なるもの」へと確実に移行しました。
その結果、若い世代だけでなくミドル世代やハイミドル世代も、セダンというボディ形状をあまり選択しないようになりました。
しかしそんな世の中に変わっても、かたくなに「いや自分はセダンを買う! 車といえばセダンなのである!」と、購買行動を変えない人もいます。
それが、セダン文化真っ盛りの時期にちょうど青春時代を過ごした、あるいは自動車というものの薫陶を受けた、1945~1950年頃に生まれた世代。つまりは「団塊の世代」です。
そういった団塊世代(の全員ではなく一部)の受け皿としてブルーバード シルフィはそれなりに機能していたわけですが、団塊世代も――あたり前ですが――年を取ります。
そして年を取れば、あくまで一般論ですが、高額商品の購入意欲や購入力そのもの、あるいは購入の頻度はどうしたって低下します。
そしてブルーバードシルフィがターゲットとする世代の購買力が低下しはじめたまさにそのタイミングに、諸般の事情からシルフィは「3ナンバーサイズ」になりました。
とはいえ彼ら・彼女らもベテランドライバーですから、全幅が1760mmになった程度でいきなり運転が困難になるということはなかったでしょう。ベテランとして普通に、スイスイと運転できたはずです。
しかし物事のタイミングとして、「今度のシルフィは3ナンバーか……。じゃ、買うのはやめとこうかな」と思わせるに十分なインパクトはありました。
これにより、ただでさえ少なかった「SUVとかは好かん。自分はセダンを買いたいのだ」と考える人の数をさらに減らしてしまったのです。
中国では依然としてセダンの人気は高く、現在は4代目のけっこうカッコいい日産シルフィが売られていて、現地ではなかなかの人気を博していると聞きます。
しかしそれを日本に導入したところで売れないでしょうし、日産は導入しないでしょう。
なぜならば、そういうのを「日本でも売ればいいのに!」と言う人はたいていの場合「言うだけ」で、実際には買いませんし、もしかしたら買うかもしれない「相変わらずセダンが好き」な年齢層の人に対しては、あまりにも刺さらなそうなデザインだからです。
つまり、日本には4代目シルフィの買い手が(ほとんど)いないのです。
■日産 シルフィ 主要諸元
・全長×全幅×全高:4615mm×1760mm×1495mm
・ホイールベース:2700mm
・車重:1230kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1798cc
・最高出力:131ps/6000rpm
・最大トルク:17.7kgm/3600rpm
・燃費:15.6km/L(JC08モード)
・価格:209万4750円(2012年式 X)
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