最新の人気車を見ると、トヨタ アルファードを筆頭に、大きなグリルで迫力を重視したクルマが多い。その一方で、親しみが湧く優しめのデザインは、ホンダ フィットを筆頭に、販売面で伸び悩んでいる印象がある。
実際には、フィットはそれほど苦戦しているわけではない。販売台数でヤリスに大きく水を開けられているように見えるのは、ヤリスの台数にヤリスクロスが含まれているからで、ハッチバックのヤリスとの対比なら僅差……と思っていたら、2021年に入ってフィットの販売台数が大きく落ち、差が広がっている。どうしたフィット!?
文/清水草一 写真/編集部、FORD、AUDI
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事前予想と真逆だったフィットとヤリスの売れ行き
私を含め周囲では、ヤリス対フィットに関しては、「走りや燃費ならヤリスだけど、内外装や居住性なら断然フィット」というのが結論だ。一般ユーザーにはフィットのほうがウケるはず! と思っていた。ところが現実は逆だった。
ヤリスのデザインには、強烈な個性と毒がある。これを私は「毒虫顔」と呼んでいるが、癒しの柴犬よりも毒虫が売れているのである。
私が最も衝撃を受けたのは、60代の姉夫婦が、昨年、「クラウンからヤリスに買い替えた」と聞いた時だった。
典型的なクルマ無関心派である姉夫婦が、まさかあの毒虫顔のヤリスを買うとは! 私は内心激しい衝撃を受けた。
姉「ディーラーの人に、2年後には(クラウンの)下取りがゼロになっちゃいますよって言われたから……」
それを聞いて、もはや「なぜヤリスにしたの?」と聞く元気も湧かなかった。たぶん、なんでもいいから小さいクルマにしたかったのだろう。
そして、トヨタの新しい小型車だからということで、自動的にヤリスに決めたのだろう。ヤリスを見て、「このクルマは顔がイヤ!」みたいな思いは一切抱かずに。
一般ユーザーは、もはや強烈な顔に慣れ切っていて、抵抗がないのである。
ではなぜ、強烈な顔に慣れたのか。
それはもう、街行くクルマの多くが、強烈な顔になったからである。日本のユーザーの大多数を占めるクルマ無関心派は、自分だけが目立つことは嫌うが、みんなが強烈なら赤信号も怖くない。
かつて三菱 iは、自動車メディア絶賛にもかかわらず、販売不振に喘いだ。あの当時は、「田舎じゃこんな目立つクルマに乗れないよ」と言われたものだが、その状況は変わった。なぜなら、みんな目立つクルマになったから!
ではなぜ、みんな目立つクルマになったのだろう。
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